506 もしかして聖騎士団が一番安全だった?
「それで、リトがいると雑魚妖怪が寄ってこれないという事実はあるのかなぁ?」
私は床に伏してガタガタと震えている少年を見る。いや、黒い闇がにじみ出た床に身体の半分が埋もれている少年をだ。
その姿は崩れていき人の姿を保っておられず、ツチノコもどきの姿になっている。
なんだかいじめているみたいだけど、悪いのはツチノコの出来損ないのほうだ。
「『何を喚び出しているのよ!それって八岐の大蛇じゃない!』」
私がツチノコもどきに話しかけているのに、横から日本語が聞こえてきた。
こういうところが、彼女の悪いところなんだよね。
そしてシェーンの通訳の麒麟は、私が床に押し付けたままなので、うめき声を上げている。だから、シェーンの言葉を理解できるのは私だけだろう。
あ、あと酒吞と茨木か。
そのシェーンに視線を向けると、ソファーを盾にするように、身を隠している。
あれ?ということは敵側ってことになるの?
おかしいなぁ。これの元は王城の中に保管されていた精霊石だ。
玉藻側に行く要因はないはず。
そもそも復活するのは難しいのではないのかな。
「どうして?何か駄目なの?」
「『そいつを喚び出しても簡単に裏切って、玉藻側につくの。手が出せないほど強いの!』」
ああ、ペット枠にはいっているのか。
信用してはいけないのは初めからわかっていたけどね。だからルディには釘を差していた。
そしてやはりゲームでは強いのか。ツチノコもどきだけど。そして、復活をさせるイベントもあると。
ルディが王城から持ち出したのは、必然だったらしい。
「その辺りは大丈夫だよ。逆らったら黄泉に叩き落とすことになっているから」
「ぴぎゃ!」
あ、うん。草薙の剣を隠し持っていると思われるヘビ。反応しすぎだよ。
こんな感じだから神話で剣を取られたんじゃないの?
「へー。本当に言葉がわかるんだね」
王様が感心しているけど、どうしてと問われても答えられないよ。
「シェーン。取り敢えず、座ってよ。それでどうなの?寄ってくるのか、来ないのかどっち?」
「シャーシャーシャ」
「蛇語を話されてもわかんないのだけど?」
「主様。『我は孤独なモノである』と言っております」
ちっ!また呼び出していないのに、人型のヘビどもが現れた。蛇語の通訳はいいよ。ただでさえ人口密度が高いのだから、出てこないでよね。
「わかったから引っ込んでおいて」
「我々が主様の愁いを排除いたします」
もしかして、ツチノコもどきに対抗心を燃やしているとかないよね。
「適材適所。ヘビどもは引っ込むよ。ツチノコもどきはそのまま床に埋もれているといい」
私がヘビ共を睨みつけると、指輪の中に戻っていった。
しかし、なんだか部屋が異様な感じになっているけど、気にしないでおこう。
ツチノコもどきが外にでているのなら、雑魚は寄ってこないと解釈していい。
「話し合いを続けていいよ。たぶん覗き見られることは、今のところないと思うから」
シェーンは大人しく席に戻ってくれたけど、居心地が悪いのかそわそわしている。
少しつずだけど、言葉が混じっていることに意識しだしたのかもしれない。
通訳の麒麟に助けを求めるような視線を送っている。が、麒麟は抵抗するのを諦めて、床と同化しそうなほど生気がない。
お仕置きはこれぐらいでいいか。
侍従が報告に上げていたように、麒麟は役目を全うしていたのだろう。
私はパチンと指を鳴らして、麒麟を床から解放した。
って、なんで誰も話し合いの続きを切り出さないの?
「神帝様。我がいても小物は寄って来ぬであります」
どうやら聞き耳だけは立てていた麒麟がムクリと起き上がって、私の側まで来て膝を折ってきた。
ん?ちょっと待って、酒吞も茨木も近寄ってこないと言っていた。麒麟もそれなりに強いアピールをしてきたということは、聖騎士団本部の敷地の中が、一番安全だったのでは?
「神父様!赤い鳥は今どこにいるの!」
ということは、赤い鳥も神父様の指輪の中にいるとなれば、聖騎士団本部に異形が侵入してきてもおかしくはない。
「イグネアですか?それであれば、シスターマリアに伝言をお願いしましたね」
いつの間にそんなことを!
でも、確かに神父様はシスターマリアと何か話したいと言っていたから、赤い鳥にお願いしたのかもしれない。
「そのまま聖騎士団にいるようにしておいてほしい。今まで聖騎士団の中で問題がなかったのは、侵入できなかったからかも?」
「問題とは?」
神父様が聞き返してきたけど、わかっているはずだよね。
王様もわかっているはずだけどね。偽者の王様が側にいるのだから。
ということは団長に認識させるためか。
「ヘビども出てきていいよ」
「主様。御前に」
「主様。御前に」
二人の中華風の武人が姿を現した。
なんだか、待ちに待っていましたという期待感に満ち溢れた目を向けられているのだけど、大したお願いはしないよ。
しかし、武人二人と麒麟に跪かれている私の絵面って、偉そうな小娘みたいになっていないかなぁ。




