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聖痕の聖騎士〜溺愛?狂愛?私に結婚以外の選択肢はありますか?〜  作者: 白雲八鈴


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507 他人を信用していないよね?

 シェーンが言っていた。一番厄介なのは団長(コマンドール)の裏切りだと。

 今回、それが起きなかったのは神父様の存在が大きいけれど、人の心を誘惑する異形が入り込めなかったとも考えられる。


 ここに監視の目があって、聖騎士団に異形が侵入してこないことのはないはず。

 一番恐ろしいのは、聖騎士団の中で疑心暗鬼が広まっていくことだ。


 誰が味方で誰が敵かわからないと。


 それだけは避けないといけない。


「酒吞と茨木と同じように姿を変えれる?」

「御意」

「御意」


 人の姿で聖騎士団の隊服を着た姿になる青嵐と月影。

 そして、先ほどまであった頭の角はなくなり、人と同じ姿になった。


「こうやって異形が聖騎士団の中に入りこまないようにだね」

「うわぁ〜。アンジュが堂々と言っている」

「ロゼ!」


 壁際にいるロゼとリザ姉がコソコソと話している。既に異形が聖騎士団の中に入り込んでいると言いたいのだろう。


 だけど、それは取引をした結果。人に紛れて暮らすことを鬼の二人は選択したのだ。

 緑龍はどう思っているのかは知らないけどね。


 それに、鬼に二人が問題を起こせば、私は責任を取ると心に決めている。それは彼らを返せなかったからだ。

 まぁ、結局帰る前に世界に呑まれたのだろうというのが今の見解だけどね。


「あ。もう指輪の中に戻っていいよ」

「「我らもお役に立ちたく存じます」」


 え?何の役に立つつもりなの?ヘビのくせに。


 そう言って人の姿になったヘビどもは壁際に向かって、酒吞と茨木と同じように立っている。


 いや、それただ単に突っ立っているだけだからね。


「はぁ。アレらは精霊石から出てきたヘビどもだけど、ああやって人ではないモノが直ぐ側にいると、他人を信用できなくなってしまうからね」

「潜入調査とかいいよ」


 王様がクスクスと笑いながら勧めてくれたけれど、私が言いたいことはそういうことじゃない。


 あと、ヘビどもは直ぐにボロが出るから無理だよ。

 まだ酒吞と茨木の方が慣れていると思う。


 堂々と聖騎士団本部の中で団長(コマンドール)侍従(シャンベラン)の姿でうろついていたのだから。


 でも、王様。その意見は異形を使おうとする者の考え方で、異形がどういうモノか理解できている者の言葉ではない。


「王様は、他人を信用していないから、精霊というモノを簡単に扱えると思っているようだけど、そうも簡単にはいかないものだよ」

「おや?信用していないことと、精霊を扱うことは繋がらないと思うよ」

「王様はいざとなれば簡単に切り捨てることができるよね。でも、そう簡単にいかないのが、彼らだ。落神と戦った神父様ならわかるよね。神は殺せなかったと」


 王様の言いたいことは、敵陣にヘビどもを送り込めばいいと言っている。

 だけど、相手は歴史に名を残す九尾の狐だ。


 人を騙し、虜にする妖狐。恐らくヘビどもの擬態など簡単に見破る。そしてヘビどもは玉藻には敵わないだろう。


 もし、ヘビどもが落神となれば、簡単には倒せないと思われる。青龍と黒龍。その力は一瞬であったけれど、王都中に行き渡った。


 それ以来、私はヘビどもの力を抑えるようにしてきた。勝手な行動をすれば、容赦なく制裁を加えてだ。


 これが、落神となれば本当に王都が水の下に沈むことになるかもしれない。


 不安要素はなるべく排除すべきだ。


 玉藻の情報は第十一部隊長さんに任せたのだ。それを待つでいいじゃない。


 ん?あれ?神父様はそのことを、王様にまだ報告していなかったと言っていなかった?

 まぁいいか。

 それは後で神父様が説明するだろうから。


「オチガミがわからないのですねぇ?」

「はっ!天神や龍神の女将さんのこと」

「「龗神(おかみのかみ)ですよ」


 茨木に訂正されてしまった。

 なんだか、毎回訂正されているような気がする。


「殺す殺さない以前に、弱らせるだけで精一杯でしたね。数人がかりでも、こちらの分が悪いことが多かったというのもあります」

「なんと!リュミエール様でも倒せぬモノがいるのですか!」


 そこに団長の声が降ってきた。声が大きいよ。

 いや、それほど驚いているのだろう。


「我々が相手にしてきたのは、異界の神と呼ばれるものが多かったですからね。神に死があるのかと問われれば、無いと言うべきなのでしょう」


 聖女至上主義のこの国で神を語りだす神父様に、神の概念があったのか問いたいね。


 まぁ、創造神なるものはいるから、その神を当てはめているのだろうけど。

 神に死はないか。


 死んだ伊耶那美命は黄泉の国で住んでいるという感じだったので、死というものは無いのかもしれない。


 死がない……それはこの世界の状況と同じといえる。

 だが、それを意味するところが未だにわからないでいた。


 聖王はあのとき何を言おうとしていたのだろうか。




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