表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヘタレ女の料理帖  作者: 津崎鈴子
48/71

眠り姫が目覚めたあとに2

エミさんが退院してきて数日後のある日、おばあちゃんを連れてお父さんとお母さんそれにユウキがやってきた。エミさんのベッドを男手で設置してくれるのだそうだ。

さすがに布団では起きるのがキツイといったら通販サイトで割と安くて電動リクライニング付きベッドが売られていたのでそれを買うことになった。設置するのに力がいるんだけど、部屋に設置してしまえばあとはエミさんの力でも簡単にたためる優れものなんだそうだ。


 荷物が届いたら、お父さんとユウキがあっという間に設置してくれてさすがだな、と思った。


あれから、あいちゃんの両親とその弁護士との交渉はお父さんとお母さんで一手に引き受けてくれて、治療費と慰謝料、後遺症が出た場合はその時に診断書提出し、精査の上全額支払いという取り決めで落ち着いた。


 あいちゃんは、病院内で多数の人に死ね、という言葉を聞かれていたこと、殺意があったことが周囲の証言から明らかになり、身勝手極まりない事情での犯行で情状すべき事由がないという判断で殺人未遂で起訴され、あいちゃん側は控訴することなく結審したのだそうだ。


懲役3年、執行猶予なし。


娘が前科者になってしまったあいちゃんの母親は倒れてしまったとのことで、補償などの交渉は父親と弁護士で淡々と進められた。聞くところによると、あいちゃんの家は代々女系家族で父親は婿養子だった為今まで発言権がほぼなかったのだという。結構な資産家だったけど、経営していた会社はとある財閥系の大手企業に吸収合併されほぼ権力をなくしてしまったのだそうだ。今回のエミさんへの補償で残った土地もわずかになりこれからは細々と生きていかなければならない。


その割には、あいちゃんの父親が妙にすっきりした顔をしていたのが腑に落ちなくてお父さんが何気なく聞き出したところによると、あいちゃんもあの母親も、一人娘でそれはそれは我儘に育てられたのだそうで、いろんな人を見下していたとけど、諫める声も心に響かず過ごしてきたんだそうで、これで先祖からの財産を失い、これからが家族の再生です、と語っていたという。


誰も知らない土地に引っ越すそうだ。今回の事件でいろんな人に注目され、親戚からは縁を切られ、孤立している状態で生活できないほどの誹謗中傷を匿名の正義の味方から浴びせられ続けているのだそうだ。

あいちゃんのお腹の子供は流れてしまったという。

あいちゃんはそのことに悲しむわけでもなく、邪魔者が居なくなったと無表情に吐き捨てたそうだ。



 お父さんが淡々と語る顛末に、エミさんは泣いていた。

まだ若いんだから、いくらでもやり直しは利くわ、とポツリとつぶやいた。



☆.。.:*・゜☆.。.:*・゜☆.。.:*・゜☆.。.:*・


エミさんも、杖で支えながら歩けるまでに回復したある日、タカシさんとマサキさんのコンビから声がかかった。なんでも夏祭りのイベントにいい企画が無いかアイデアがほしいとのことだった。


ゴールデンウィークのちびっこ商店街が当たったのでぜひ企画にもう一度参加してほしいって。

すぐにはいいアイデアでないんだけどなぁというが、まぁ、考えといてよ、と流されてしまう。


そんな時、アヤからメールが来た。


落ち着いたらご飯に行かない?と。

色々あったけど、ようやく何かが一区切りしたし、いいよ、と返事をして約束をした。


今回の件ではアヤやクミちゃんには本当にお世話になったし、ごちそうするくらいでもいいんだけどなぁと考えていた。ただ、エミさんをどうしようかなと思っていると、お出かけする日にヨーコさんが泊まりに来るって話になっているらしくお世話を引き受けてくれるのだそうだ。


 ヨーコさんは、本当にエミさんを実の母親のように慕っているらしい。

若い時に辛かったヨーコさんを励まし支えて今独り立ちできる環境を整えてくれたのだそうだ。


エミさんっていろんな人の人生に影響を与えている。すごいなぁと思う。


せっかくのヨーコさんのご厚意に甘えさせていただくことにした。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ