第九話 アンジュ
僕ねぇ異世界から来たの!
こんな事を現代日本で急に言われたら、大抵の人は引くであろうと思う。しっ! 見ちゃいけません!と言われるかも知れない。
「なるほど。ユートはニホンという異世界からやって来たのか。うむ!異世界人をこの目で見る日が来るとは思わなかったぞ!」
だが、レオナは信じてくれた。
ニャジルさんに信じてもらえた時の様に何だか心が楽になったような気がする。
「しかし姫様、この男が嘘を言っていないという確証はありませんぞ」
「いや、ユートは嘘をついていない。私には分かる。それにユートは私を含めたこの場にいる全員を殺す力を秘めている。この状況でわざわざ嘘をつく利点が思いつかない」
俺が全員を殺す力持っているレオナ姫が言ったとき、マールトンさん以外の同席していた兵士達が青ざめたのが見えた。
「……分かりました。この男の言葉、マールトンめも信じましょう」
「うむ! それでは疑惑も晴れたことだし、ユート結婚しよう!」
「姫様……それは先程申し上げたでしょう。その様な重大な事をそんな簡単には決めれないと……」
マールトンさんは疲れた声を出した。
そりゃそうだよな、一国のお姫様の婚約なんて一大事なのに、こんな結婚結婚言うお姫様がいるなんてな……いや、嬉しくない訳じゃ無いけどね。むしろ最高ですが。
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「そういえばユートは現在、魔法やスキルを使えるのか? 」
レオナがマールトンさんに苦言を言われた後ケロリとした感じで聞いてきた。
「いや使えないよ。そもそも俺のいた世界では魔力や魔法なんかは物語の中でぐらいしか聞いたこと無いんだ。だからスキルがどういった物かも分からないし、どうやったら使えるかも分からないんだ」
「そうか。ではアンジュにこの世界の魔法やスキルについて説明させよう」
「アンジュ?」
「アンジュとは我がガレウス王国一の治療者でな。スキルや魔法にも詳しい。私も先程、魔法やスキルの影響が与えられていないか視てもらったよ」
「そうか。じゃあお願いできるかな?」
そう言われるとさっきもアンジュって名前出てきたな何て思っていると、すぐにコンコンと扉が鳴り、一人の少女が入ってきた。
その少女を一言で表すならば可憐。
きらめく銀髪からちょこんと飛び出てる猫耳。中学生ほどの未完成な印象を受ける小柄な体躯。邪気を全く感じない整った顔。そしていつまでも見つめていたくなる美しい黒目。
文句のつけようの無い美少女だった。
俺は息を飲んだ。本日二度目である。
「初めましてユート様」
聴くだけで人に癒しを与える様な声だ。
「私はアンジュ・ブランシュと申します」
アンジュさんは頬を染めながらニコリと笑いかけてきてくれた。……ん? 頬を染めながら?
「ほう。アンジュもユートに惹かれたか」
「ひ、姫様っからかわないで……」
真っ赤になりながらアンジュさんが慌てる
えっ!!! 何だって???
マールトンさんや兵士達も困惑している。
勿論俺もだ。
「失礼しました……」
「い、いえ」
恥ずかったのか真っ赤な顔でもじもじしながらうつむくアンジュさん。
「でっでは、せちゅめいいたちまちゅね!」
かみかみであった。