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8:成長した赤ちゃんはイケメンだった


今回短いです。




聞き覚えのある声が聞こえてきて、ゆっくりと暗闇だった意識が浮上してくる。

目をゆっくりと開けていくと、見覚えのある顔が目の前に居る。

その目が不安げに揺れている。私は彼女の名前を呼んだ。



「……魅華……?」


「響ちゃんっ!」



魅華が涙目で勢いよく私の上に圧し掛かってきた。ついでに、首を絞められる勢いで抱きしめられる。

その反応に驚きながら上半身を起こす。嗚咽を漏らしながら、ぎゅっと力強く抱きしめてくる魅華の頭を撫でる。



「どうしたの?魅華」


「どうしたの、じゃないよ!心配、したんだから、ね。本当に、心配したん、だからぁ」



そういえば、私はあの時何も言わず姿をくらませてたんだっけ……

私は今更後悔しながら、魅華に「ごめん」とだけ呟いた。

でも、優しい魅華は首を横に振りながら「響ちゃんが無事だったから、いいよ」と涙を流しながら微笑んだ。

その優しさが嬉しくもあり、辛い時があるのを、彼女は知らないだろう。


私はもう一度「ごめん」と呟くと、自分が生徒会室に居る事に気が付いた。

寝かされていたソファから立ち上がると、魅華が何度も心配そうに私の顔を覗き込んできた。

その行動に苦笑しながら周りの様子を見ると、部屋の奥のほうで他のメンバーが椅子に座っているのに気が付く。

その中には見知らぬ男も居た。


金髪の長い髪に翡翠の目、その顔は今まで見た男性よりも整っている。

体も服の上からでも分かるほど綺麗なフォルム。男とは思えないほどスタイルが良い。もしかしたら咲華先輩よりも綺麗かもしれない。

全身から溢れ出るその色気も、咲華先輩と比べると彼女の方が劣っている様に感じてしまう。

花で例えるなら、咲華先輩は真っ赤な薔薇。男性は大輪の金色の薔薇の様だ。





思わず男性の顔を凝視していたら、視線に気付いたのか、目が合った。





「響っ!」





「へ?」



いきなり私の名前を呼んだ男性は、嬉しそうに顔を綻ばせながら椅子から立ち上がり、一瞬で距離を詰めてきて



「よかったぁ…無理をさせてたから、目を覚まさないかと心配してたんだ。本当に良かった……」



そう言って私の体を抱きしめた。

私は今の状況が全く分からず、何故抱きしめられているのかも分からないまま、ポカンと口を開けて男性の顔を見上げていた。

そんな私に抱きしめている彼は何故か微笑んで、さらにギュッと抱きしめてきた。

もちろんこんな状況を許さない人は確実にいる。



「いきなり何をしてるのよ、この変態イケメン!響ちゃんを放しなさい!」


(変態イケメンってどういう意味?!)


「早く彼女を放さないと、完膚なきまで叩き潰して犬の餌にするぞ、てめぇ」


(会長が普段より怖いっ?!言葉遣いまで荒いよ)


「体は大丈夫?どこか変なところとか、違和感は無い?気分は平気?」


(で、この人は完全無視!?えぇぇぇぇぇ、何この状況)



状況についていけず内心慌てていると、助け舟のように他のメンバーが止めにかかる。

今だ男性に怒り続ける魅華と会長の声が聞こえてくるが、私はこちらをどうにかした方がいいだろうと、男性と目を合わせる。



「あの……私は貴方とどこかで会いましたか?」



私の言葉に頭を撫でる手がピタリと止まった。顔も笑みからどんどん表情が無くなっていく。

その反応に首を傾げながら「あの…」と問いかけようとした時、目の前の男性の目から涙が零れ始めた。



「え、え!?私、失礼な事言いましたか?ご、ごめんなさいっ」


「いや、違うんだっ。そうだよね、この姿だと全然分からないよね。俺の方こそごめんねっ」



彼はそう言って私を抱きしめていた腕を外し、さらに泣き始めた。

さらに訳が分からず、私はおろおろしながら彼の顔を覗き込んだ。

そして自然と彼の頭を撫でていた。


すると、彼が涙目のまま目を見開いて私を見て、もう一度強く抱きしめられた。



「響……僕だよ。思い出して」


「思い出せと言われても…難しいんですが」


「あの卵の中に居た子供、だと言えば分かる?」


「卵?……あっ」



そういえば、彼とあの卵の中に居た子供はよく顔が似ている。

髪や目の色も同じだし、目の前の彼を幼くすればあの子供と重なって見える。

驚いて何度も彼の顔を見ると、彼は涙を止めて頬を赤く染めながら首筋に頭を乗せてきた。



「大人に、なれたの?」


「そうだよ。響の傍にずっと居たいから、急いで大きくなったんだよ」



彼と目を合わせながらそっと腕を伸ばして背中を抱きしめる。

少し甘い匂いと優しい肌のぬくもりがとても心地よかった。

彼の大きくなった背中を撫でながら



「…嬉しい。貴方にずっと触れたいと思っていたから、とても嬉しいよ」



と言うと、彼は顔を上げて私の頭を撫でた。その顔がとても可愛くて、思わず頬が緩む。



「響っ。俺も嬉しい。響を抱きしめられて、響に触れられてとても嬉しい」


「はいはい。その気持ちは十分わかったから、一旦放してくれる?」


「響、冷たいっ!もう少しこのままで居させてよ」



私だって、ずっと君の触り心地の良い髪を撫でていたいよ。抱きしめてたいよ。

だけどね……―――



「…………」



後ろから来る冷たい視線が痛い。今さっきから痛い。誰からか分からないけど、視線が背中に突き刺さってる。

こんな状況、私には耐えられません。

仕方ないので目の前の彼の手を剥がしながら、有無を言わさずソファに座らせる。

彼は不満そうだったが、大人しく座ってくれた。

ほっと息を付いて後ろを振り向くと、そこには無表情の彌悠先輩。


(あれ…?もしかして今さっきの視線は彌悠先輩…?)


そう思って首を傾げると、先輩も首を傾げた。意味が分からない。



「はいはい、話が進まないから席に戻って頂戴な。響ちゃんはソファの上で寝ておきなさい」


「もう大丈夫ですよ、咲華先輩」


「駄目です。肋骨が4本折れてるのに、今は安静にしてなさい」



……私は予想以上に重症だったらしい。

一応確認のためにボタンを何個か外して胸元を見てみる。確かに固定するための包帯が巻かれている。

元に戻しながらゆっくりとソファに寝ると、平常心を取り戻した会長がいつもとは違い、真剣な表情で私を見てため息をついた。



「はぁ…話が逸れたましたが、元に戻す事にしましょう」



原因は私では無いですよ、会長。

話を逸らしたほとんどの原因はあの、元赤ん坊の男性です。



……あれ、そういえば彼って名前は無いのだろうか…?


後で聞いてみよう。







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