表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/11

7:響の捜索




―――響ちゃんが突然居なくなった。

その噂はすぐ次の日に学園中に広がった。毎日、女子生徒も男子生徒も話題は響ちゃんの事ばかりだった。

学園祭で盛り上がっている場合ではないと、皆言っていた。

女子生徒にも男子生徒にも密かに人気な響ちゃん。学園中の生徒が毎日、生徒会室に押しかけてくる。


皆、言ってくる事は決まっていた。

「彼女を捜させて欲しい」「自分達で彼女を捜したい」「捜索の許可を下さい」

だけど、会長はそれを認めなかった。



「彼女が居なくなったのは、私達生徒会の責任です。彼女を捜すのは私達の役目だ」



そう言って毎日生徒達を追い払っては、苛立つ感情を押さえ込もうと、爪を噛む。

会長も必死で響ちゃんを捜している。私達以上に、会長は力を入れて毎日明け方まで捜し続けている。


でも、響ちゃんは見つからない。


私達も必死に捜している。響ちゃんの実家の方へも連絡を取り、帰ってきたら連絡を下さいと伝えてある。

家の力を使って、学園中、国中、世界中を捜させた。でも、手がかりは全く無かった。

部屋は綺麗に整理され、響ちゃんの薙刀も無くなっていた。でも、響ちゃんの使った跡は全く無かった。


生徒会室や教室、学園中は次第に暗い雰囲気になってきた。

響ちゃんを知らない人でさえ、歩くたびため息を付いていた。


響ちゃんが居なくなるだけで、こんなになるとは思わなかった。誰も思うはずはないだろう。


今日も暗い雰囲気の中、学園祭の準備をし終え、また響ちゃんの居ない日が終わろうとしていた。








「……はぁ……」



寮に行く道をゆっくり帰っていると、ふと広場に誰かが立っているのが見えた。

女子生徒じゃないとすぐに分かった。制服が男子生徒の物だったから。

彼は私が近づいているのに気付いたのか、こっちに走ってきた。

そして、肩を強く掴まれる。



「天田先輩!高宮先輩からメールが来たんです!」


「えっ!?」



驚いて、一瞬彼が何を言ったのか理解ができなかった。

でも響ちゃんの名前を聞いて、反対にこちらが彼――望月君の肩を掴んだ。



「なんてっなんてきたの!?響ちゃんは、なんて送ってきたの?!」


「先輩落ち着いてください。すみませんが、会長や他の生徒会メンバーを集めていただけませんか?僕はこの広場で待ってるんで」


「分かった!すぐ戻る、から待っててっ」



持っていた鞄を投げる様に彼に渡すと、私は学園へと走って戻った。

土足だったがそんなのかまわず、校舎を駆け上がり、生徒会室の扉を開いた。



「どっ、どうしたの?天田さん。そんなに慌てて…」


「それもローファーを履いたままなのかよ。魅華」



呑気にお茶をしている咲華先輩と涼を見て、部屋の隅に座っている彌悠先輩や刹那先輩を見つける。

会長は奥の豪華な机でたそがれている。傍には心配そうにかなちゃんが寄り添っていた。

走って息苦しいが、それよりも早くこの事を伝えないと。



「響、ちゃんから、メール、あったって!」



その言葉に全員が目を見開く。あまり感情を見せない刹那先輩でさえ、驚いて口が開いたままになっている。



「望月君が、メールを……響ちゃんからメールがあったから、皆を、待ってる!私、先に行くからっ」



そう言って、私は来た道を戻った。階段は手すりを滑り、ある程度大丈夫な高さの階になって、窓から飛び降りた。

普段からこんな高い所には慣れている。すぐに走り出して、目の前に人が飛んでくる。

会長だという事は、その後姿で分かった。



「待ち合わせ場所は」


「女子寮前の、広場」



そう言うと、彼は普段は出さないスピードで走っていった。

珍しいな、と思いながら当然だ、とも思った。

後ろから涼や先輩達の声が聞こえ、私達はゆっくりと走る速度を落としながら、広場に到着した。


すでに先に到着していた会長は、望月君の携帯らしき物を開いていた。

その目は何か異常なものを見たかのように、忙しなく動き続けている。



「紗那、内容」


「皆と話がしたい。この場所まで呼んで、迎えが来るはずだから。下にその場所の写真があります」



会長は皆に見えるように携帯の画面を見せる。

その写真を見て、前一度だけ響ちゃんに教えてもらった、あの道に似ている事に気付く。



「この場所…わかる。こっち」



私が皆を先導して歩く。広場から少し外れた小道を歩いて、寮の方へと向かう。

辺りはすでに日が沈んで暗くなってきた。私はかすかに見える道を歩きながら、記憶を頼りに先に進む。


そして、写真と同じ場所へたどり着くと、小さなウサギが座っていた。

ウサギは私達を見ると耳をピクピクさせながら、私達に近寄ってきた。



「もしかして…このウサギが?」


「…まさか、そんなのありえねぇだろ」



涼がそう言ったのが気に食わなかったのか、ウサギは勢いよく跳んで足で涼の顔を踏んだ。

突然の事で反応できなかった涼は、顔を押さえながら「絶対に食ってやる」とウサギを睨んだ。

そんな事は無視するかの様に、ウサギは歩き始め、数m進んで止まって振り向いた。

その顔は、まるでついて来いと言っている様に見えた。



「どうやらそうらしいですね。僕は先に行きますよ」


「あっ貴方に先を越させるわけには行きません!私が行きます」


「それなら早く進んでください。遅いです」


「言われなくても、分かってますっ」



少し早歩きで歩き出すと、ウサギはそれを見てまた歩き始めた。

草を掻き分けて進みながら、寮へ向かう道を外れ、見知らぬ森の中へと入っていく。

不安を押し殺しながらウサギの後を必死に追っていくと、洞窟の入り口のような物が見え始めた。

ウサギは当たり前のように、どんどん洞窟の奥へと入っていく。


私達は少し戸惑いながらも、自分達の携帯の光を明かり代わりにしてその後を追う。



「ふみゅぅ、いつまで歩けばいいんですかぁ」


「疲れてきたの?それなら私がおぶってあげましょうか」


「お姉様は刹那先輩の方をお願いします♪かな以上に疲れているみたいですから」


「あらあら、刹那様。お顔が青いですわよ?おぶって差し上げましょうか?」


「…いい。自分の彼女におぶってもらうなど、男として駄目だろうが」


「まぁっ…私は別にかまいませんわよ?」


「俺が気にするんだよ」


「……後ろのイチャイチャしてるカップル。帰れ、マジで帰れ。時と場所を考えろよ」



……涼がまともな事を言った。明日は雨が降るかな。

まぁ、こっちとしてはその意見に賛成だから何も口出しはしない。

ちなみに刹那先輩と咲華先輩は、学園公認カップルである。


後ろの会話を無視しながらウサギの後を追っていくと、行き止まりにたどり着いた。

だがウサギはそのまま進み続け、突然壁に向かって突進した。



「あぶなっ」



そう言うのと同時に、ウサギの姿は壁の向こうへと消えた。

驚いてウサギの消えた壁に触れる。だが壁に触れずに腕は通り過ぎた。

そのままゆっくりと入って、私達はさらに驚いた。



「……卵?」



部屋の中心に巣のような台座があり、その中に巨大な卵に似た形の何かがあった。

そして、卵の中に何かいる。目を凝らしながら近づくと、すぐにその正体が分かった。

金色に輝く私達と同じぐらいの、髪の長い男性が浮かんでいた。その腕の中には、見覚えのある姿。



「響ちゃん!!」



私は叫びながら近寄ろうとするけど、その手前で何かに遮られた。

透明な壁の様なものがあって、響ちゃんまで後3mぐらいの所で進めなくなった。

必死にその壁を叩いて響ちゃんの名前を叫ぶけど、全然気付いてくれない。

まるで眠っているかのように響ちゃんは男性の腕に抱かれている。


会長が刹那先輩の銃を借りて、卵を打ち抜こうとしたけど、弾が卵に届く前に別のものに当たって遮られた。

この場に出てくるとは思っても居なかった存在。―――妖獣だった。


まるで卵を護るために現れた妖獣。さらに数を増して卵の周りを囲っていた。



「何…こいつら。何でこんな早い時間に出てくるんですか?!」


「知るかよっでも、これじゃあ響を助けられない」


『必要無い』


「っ!?」



突然頭に響いて聞こえた声に、驚いて頭を抱える。

それは他の人も同じだったようで、信じられない顔で辺りを見回していた。



『彼女はすぐに返す。だから武器を収めてくれ』


「くそっ何なんだよ、この声!頭に直接響いてくる…」


「どこにいるんだ!姿を見せろ」


『目の前に居るじゃないか』



その言葉に、全員は信じられない顔で目の前にある卵を見た。

卵の中で響を腕に抱いている男性が、その瞳を開いていた。

その瞳は翡翠の様な緑色なのに、どこか狂気じみて見える。


彼はまるで天使の様な笑みを浮かべると、卵からゆっくりと出てきた。

腕の中にいる響ちゃんは、全く動かず、なすがままの状態になっている。



「響ちゃん!響ちゃんっ!!」


「大丈夫、ちゃんと息はしている。ただ、今は眠っているだけだ」



男性とは思えないぐらい綺麗な声で、彼は響ちゃんを壊れ物のように優しく抱きなおした。

無事な事にホッとしながら、私は目の前の男を睨んだ。



「貴方は何者、ですか。響ちゃんに、何をしたん、ですか」


「……俺は、お前達が妖獣と呼ぶ者達の主。かぐやの息子」


「はぁ?じゃあ、お前がこいつらを操ってたのか?」


「操ってはいない。彼らは自分達の意思で行動する。俺は、ただ願うだけ」


「かぐやの息子とは何だ」


「そのままの意味で考えてくれれば結構。それより……」



彼は足音を立てず、ゆっくりとこちらに近づいてくる。

思わず武器を構えると、彼は苦笑しながら透明な壁に触れ



「すまないが、ここから出してくれ。彼女を渡そうにも、話をしようにも、この壁が邪魔で仕方ない」



そう言って腕の中の響ちゃんの頭を撫でた。

響ちゃんは彼の腕の中で、すやすやと眠り続けている。その無垢な笑顔に戦おうという感情が、徐々に無くなっていく。



「彼女は本当に呑気ですね」


「だが、彼女の笑顔は久しぶりだろう?白夜紗那」


「……何故僕の名前を知っている」


「それは…今は秘密にしておこう。ここから場所を変えた後で、ゆっくり話そう」



輝く金髪の、妖獣の主と言った彼は、そう言いながら楽しそうに首を傾げた。

その顔が、まるで新しい友達と遊ぶ小さな子供のように見えたのは、私だけだろうか。













評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ