5:文化祭準備期間その1
下書きがないと更新が遅い。何日も悩んでいると、前回から10日以上経ってました。
もうしわけありません。
今回から学園らしい話に入っていきます。
あの赤ん坊と出会ってから、一週間が過ぎ、さらに2週間が経った。
その間にテストがあったり、朝まで妖獣を倒すためになったりと、忙しい日々だった。
だが、私達生徒会執行部は今、ある行事の準備で忙しかった。
生徒会室では、行事の計画を決める会議が開かれている。
代表は、生徒会長。
「さて、皆さん。集まってもらった理由は、わかりますよね?」
「今年も、やるんですね」
ため息を付きながら言うと、隣に座っていた咲華先輩がこそりと耳打ちをしてくる。
「あら、響ちゃんはイヤなのかしら」
「嫌です」
「即答だこと。まぁ、しょうがないじゃない。伝統なんですもの。諦めましょうよ」
「無理です」
「そこの二人、私語禁止」
会長の隣に座っているこの学園の校長に、満面の笑みで言われた。
ちなみに、名前は白夜 涙 (びゃくや るい)。生徒会長達の伯父で、保護者でもある。
実は、ものすごく苦手である。
「さて、今年もアレを開催しようと思います。名前も少し変えて――」
「名づけて、『かぐや姫争奪戦~お目当ての姫を捕まえるのは誰だ!?~』。企画は私が全て考えたよ~」
季節間違ってる。完全に季節違う。
かぐや姫に関係する季節は秋。今は夏に入る手前。全然違う。
「不満、意見などは全部拒否します」
理不尽だ。
「前半は文化祭が主。ですが、後半はかぐや姫争奪戦を学園全ての敷地を使って、行います」
「ルールは昨年と同じく、極秘で決められた、どこかに隠れている数十名の姫を男子生徒は見つけ、彼女達の願いを多く叶えた人に賞金が出ます」
「もちろん、生徒会の皆さんも例外ではないですよ~。参加してもらいます」
「まぁ、準備などは白夜の家、総出で行うので、皆さんは気長に過ごしてください」
「ちなみに、今年の姫はこのリストの生徒達です」
そう言って、配られたリストに軽く目を通す。
顔の写真付きのリストをめくるたび、美女。その中には、咲華先輩とかなが入っていた。
毎年、彼女達は選ばれている。この前のラブレターの総数を考えると、当然だと思う。
だけど、何故その下の紙に私の名前がある。
「あら。今年は響ちゃんも出る事になったのねぇ」
「……」
「あら、反応無し。でも良かったじゃない。これで男子達にモテてるって証拠になったじゃない」
「……そうかもしれないですが、正直言うと…」
面倒。やりたくない。そんな感情のほうが上回っていた。
一度、中等部3年の時、姫に選ばれた事があった。だけど、周りの女子は美女で綺麗に着飾っているのに、自分は女性らしい服装が似合わなくて、スーツのような質素な服を着ていた。
そうしたら、男子ではなく女子に追い掛け回された。
デジカメや携帯のカメラを向けながら走ってくる女子生徒から、逃げるのに必死だった記憶しかない。
まぁ、それ以降選ばれる事が無く、平和に文化祭を過ごす事が出来たのだが……。
「……はぁ」
「大丈夫ですよ!今年は精一杯、先輩を綺麗なお姫様にしてみせますから!」
「あっ、ありがとう。かな」
かなの優しさが何故か心にグサリと刺さった気がした。
どうせ、胸も小さいし身長高いし髪短いから、男子にしか見えないよ……。
「響ちゃん。そんなに、落ち込ま、なくても……」
「落ち込んでてもしょうがないけど、衣装の事を思うと……」
「それなら大丈夫ですよ。生徒会メンバーの衣装は全て制作済みです」
「もちろん、サイズはピッタリのやつをね♪スリーサイズ、靴のサイズまできっちり作っておいたから」
どうやってスリーサイズを知った!?
「見ればわかるからね~。学園長に掛かればこんな事、朝飯前だよ」
さすが変態。見るだけでわかるとは……。変態の粋を超えているか?
「響…声駄々漏れだぞ」
涼にそう言われて、思っていた事が口に出ていた事に今更気づく。
だが、学園長はニコニコと人の良さそうな笑顔を浮かべながら、リストを見ている。
この学園長にしてこの会長ありだな、と会う度に思う。
笑顔の性質が全く正反対の二人だが、さすが血が繋がっていると誰もが確信するほど、同じような行動をとる。似たもの同士だが、どこか違っている様に感じる。
刹那先輩は「本当に会長の兄?」と疑われるほど、冷静沈着で鬼畜でもある。
でも、独占欲が強いのは彼らと同じなのかもしれない。
さすが白夜家。
「衣装は男性女性、それぞれ3種類ずつ用意してある。当日まで隣の部屋で管理しておく。後で確認して、当日どれを着るか2日後までに決めておけ」
「あれ、今年は男子も着るんですか?去年は制服じゃなかったですか?」
「男子生徒は男子生徒でイベントがあるんだ。そのための衣装だ」
「初の試みですか。いいですね♪かな、楽しみです!気合入っちゃいました!」
喜んでいるかなだったが、私の心は不安で一杯だった。
学園長が考える物はろくでもない事ばかりだ。まともだった物が無い。
ある年は生徒全員でコスプレ。またある年は料理大会と変な事ばかりだった。
ちなみに料理大会では、刹那先輩が優勝した。1時間でフルコースを作り上げ、その料理を食べた審査員の有名な美食家や一流ホテルの料理人は、いきなり号泣するほど、美味しいと叫んでいた。
ため息を付いて、リストを置いたのと同時に会議は終わった。
終わると同時に、咲華先輩とかなといっしょに自分の衣装を確かめる事になった。
魅華は「今日は少し用事があるんだ」と言って、寮へ帰った。
他のメンバーは明日確認するらしく、それぞれのすべき事を優先させていた。
隣の部屋に入ると、ビジネススーツを着た男性が2人。メイド服を着た女性が3人ほど立っていた。
「咲華様と高宮様と師那様ですね。どうぞ、こちらへ」
彼女達の後ろに付いて行き、それぞれの衣装の前で止まった。
「左から咲華様のドレス、高宮様のドレス、師那様のドレスとなっております」
「他の二着もすぐにご用意させていただきます」
「何かお申し付けがございましたら、すぐに私達をお呼び下さい」
そう言うと、彼女達は奥にある「準備室」と書かれた部屋の中に消えていった。
私は隣にいる二人のドレスと自分のドレスを見比べて、頭を抱えたくなった。
咲華先輩のドレスは、ワインレッドのシンプルなドレス。だけど、胸元と背中は大きく開いている。
彼女に似合いそうなドレスだ。
かなのドレスは、オレンジ色のフリルやリボンが沢山付いた可愛いドレスだ。
彼女に似合いそうな可愛いドレスだ。
自分のドレスは、というと。
黒で統一された綺麗なドレス。
胸元には控えめに白いユリの花が飾られている。
だが、横にはスリットが深めに施されている。
似合うわけが無い。
「先輩、この行事って辞退する事は出来るでしょうか」
「無理に決まってるじゃない。もし断ったら、学園長が何するかわからないわよ?」
そういう彼女は自分のドレスを掴んで、試着室のほうへ移動していた。
かなも同じようにして、隣の試着室へ移動していった。
私はじっと自分のドレスを見て、諦めて一度試着してみる事にした。
ドレスを掴み、別の試着室に入って制服を全て脱ぐ。そして、ドレスを着てみる。
「ピッタリ……」
改めて驚きながら、鏡で自分の姿を見てみる。が、似合っていない。
やっぱり胸が無いと、体のラインが出るドレスは映えない。
自分の数年前から成長していない小さな胸を見て、ため息を付く。
すると、いきなり試着室のカーテンが開いた。
「!?」
「……すまない。着替え中だったか」
カーテンを開いたのは、彌悠先輩だった。
一瞬、突然現れた先輩に驚いたが、すぐに自分の制服を掴んで外に出た。
彌悠先輩はカーテンを掴んだまま、顔だけを私に向けて首を傾げた。
「もういいのか」
「はい。別の場所で着替えますので、先輩が使ってください」
「あぁ、そうさせてもらう」
先輩はそのまま試着室に入り、カーテンで姿は見えなくなった。
私は鼓動が早くなっていたのを抑えながら、携帯を開く。
携帯を開くと同時に、メールの着信音が周りに広がる。
メールの送り主の名前を見て、内容を見る。
『先輩、今、時間大丈夫ですか?時間があるなら、一緒にお昼食べませんか?』
「………」
彼――――望月翔太からのメールを見て、私はすぐに返事のメールを返す。
『いいよ。今日も天田と天巳も一緒だが、いいか?』
メールを送信すると、返事はすぐに返って来た。
『いいですよ。むしろ大歓迎です!それじゃあ、お昼の時間になったら要達を連れて先輩達の教室に行きますね』
私はそのメールを見て、初めて会った時の彼の緊張した姿を思い出しながら、魅華と涼にメールを送る。
彼と初めて会ったのは、最初のメールを送った次の日だった。
久しぶりに自分で弁当を作るのを忘れ、食堂でパンを買おうとしていた時だ。
食堂に行く途中、彼に後ろから名前を呼ばれた。まだ新品に近い制服を着て、彼は緊張した顔で私に声を掛けて来た。
「高宮先輩、少し待ってください!」
私は振り返りながら、こっちに突進してきそうな彼を見て、驚いて棒立ちになっていた。
そこに、彼が勢いを消せず突進してくる。
「と、止まらない!?うわっ!」
「っと」
私は咄嗟に私にぶつかって来た彼を受け止めた。
少し後ろに倒れそうだったが、普段から妖獣を狩る事で鍛えているため、倒れる事はなかった。
自分より頭一つ分くらい小さい彼を抱きとめ、動かない彼の肩を掴んで自分の体から離した。
「大丈夫?怪我は無いか?」
「……だ、大丈夫です!」
「そう、なら良かった。で、私に何か用?」
彼はしどろもどろしながら、自分の携帯を開いて私が送ったメールの画面を見せた。
「……君が、望月翔太君か。初めまして」
「初めまして。先輩、メールありがとうございました。嬉しくて、返信できなくてごめんなさい」
「全然いいよ。……もしかして、それを言う為だけで呼び止めたの?」
「違います!その、あの……」
彼は少し周りを気にしながらも決心したのか、私の手を握って下から見上げてきた。
「僕の友人の偏食を治すのを、手伝ってくれませんか!?」
真剣な表情で見つめてくる彼だったが、私は思わず
「……私に頼まなくてもいい事じゃない?」
と彼に言っていた。だが、彼は「先輩じゃないと無理なんです!」と言って、瞳に涙を溜めて言ってくるものだから、頷くしかなかった。
周りから見ると「何、あの人達」という感じだが、実際彼の友人に会ってみると、彼が私に助けを求めてくる理由がなんとなくわかった気がした。
だって、彼の友人というのは私の従弟で、私の言うことは聞くがそれ以外の人間の言う事は聞かないという、親戚の中でも特に変わっている奴だったんだから。
「……人様に迷惑はかけるな、と何度言ったら分かるんだ」
「あ、響姉さん。姉さんもいる?」
「………」
そう言って、笑顔で板チョコを差し出してくる従弟の机の上には、ダンボールから溢れるほど板チョコが置かれていた。
私は無言でダンボールを掴んで窓を開いて
「それ、俺のなんだけど、何する気!?」
「要、これから一ヶ月チョコレートは禁止」
私は従弟の折野 要 (おりや かなめ)の大好物、チョコレートを下の芝生で昼ご飯を食べている同じクラスの女子生徒たちに渡すために、窓から飛び降りた。
ちなみに、一年生のクラスは全て3階にある。
いきなり上から飛び降りてきた私を見て、クラスの女子達は驚いて悲鳴を上げたが、私は気にせず彼女達に頼んで、チョコレートを処分してもらう。
快く引き受けてくれた彼女達に礼を言いながら、私は要の偏食もとい食生活を正す為、次の日から一週間に4回ほど、要の弁当を作る事になった。
要は、私の料理なら美味しそうに食べる。他の人が作って食べさせようとすると、一口食べてやめるか、最初から食べない。
お菓子になると別だが。
それだと体調を崩しやすいし、糖尿病になる恐れがある。それを翔太は心配して、私に相談してきたのだ。
要に弁当を届ける役目を、彼は自分から言ったのだ。先輩は毎日忙しそうだから、と。
迷惑を掛けているのはこちらなのに、そこまでしなくてもいいと言ったのだが、彼は自分がやると何度も言った。
それじゃあ、何か欲しい物ややって欲しい事はあるか?と聞くと、彼は少し悩んでこう言った。
「お昼の時間……一緒にご飯を食べてもらえませんか?もちろん毎日とは言いません!時間に余裕がある時で良いんです!」
そんな事でいいのかと思いながら、私は快く承知した。
それからだ。時間に余裕があると、彼と一緒に食事をするようになったのは。最近では、魅華や涼も混じって、楽しい食事になっている。
「着替えて教室に戻るか」
私は携帯を閉じ、ドレスから制服に着替えて、自分の教室に戻る。
この2週間は文化祭の準備期間のため、授業は無い。その代わりに、クラス展示やステージ発表はある。
私のクラスはステージ発表でダンスを踊る。その練習を今も教室で行っているため、私は制服のスカートを脱いでジャージのズボンを履いて練習に入った。
50分間の練習に疲れ、休憩を取ろうとした時、丁度授業の終わりを告げるチャイムが鳴った。
クラスメート達がぞろぞろと食堂のほうへ行くのを横目で見ながら、魅華と一緒に人数分の椅子と机を4つほど並べ、彼らが来るのを待った。
従弟登場。
彼は基本、涼と同じ扱いで行こうと思ってます。
いわゆるギャグ要員。
翔太君の方は重要キャラの方にしていこうかなと思ってます。




