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初恋  作者: 雪見だいふく


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3/3

焦がれていた

一晩寝込んだ後、次の日には熱が下がっていた。

今日も休みだったのでゆっくりすることにした。


ベッドを整えて顔を洗い、温かい紅茶を入れてソファで飲んでいるとインターホンが鳴る。


「誰かしら?」


サナは玄関へ行こうとするが‥


(サイラスかしら‥)


昨日のことを思い出し思わず立ち止まる。

ドキドキしながらインターホン越しにカメラを見ると、イリスが立っていた。


サナはすぐに玄関を開ける。


「サナ!大丈夫か?」

「え?」

「昨日スーパーでお義兄さんと会ってサナが熱が出ている、様子見をしてやってほしいと言われたんだ」

「サイラスが?」


イリスの手にはたくさんの袋があり、全部サイラスから渡されたという。

胃に優しいご飯やゼリー、プリンなどが入っている。

追い出すように別れたのに‥

サナの目には涙がたまる。

そんなサナを見たイリスは優しいお義兄さんだなと感心している。










夕方にはすっかり体調がよくなり、明日は仕事が行けそうだと思って早めに休もうとすると、再びインターホンが鳴った。


(またイリスかしら)


今度はインターホンを確認せずに玄関のドアを開けると、サイラスが立っていた。

驚きを隠さずに見上げると、サイラスの眉間が寄せられた。


「いきなり確認もしないで開けるな。不用心だ」

「あ‥ごめんなさい」


心配で注意しているのが伝わり、素直に謝ると眉間のしわがなくなる。


「体調はどうだ?あいつは来たか?」

「もう大丈夫よ。イリスのこと?来てくれたわ。色々買ってくれたのね、ありがとう」


ほほ笑むとサイラスはじっとサナを見つめ目尻を下げる。


「よかった。もう大丈夫そうだな。‥今夜向こうに帰ろうと思っている」

「え、そうなの?」

「ああ。短かったが会いに来れてよかった。元気でな」


サイラスはほほ笑んでいるがサナは寂しさに黙り込む。


「‥」

「サナ?」

「あ‥そうよね、仕事もあるもんね」

「ああ。君もあいつと上手くやっているみたいだし、もう心残りはない」

「え?」


サナが首を傾げるとサイラスは目を細める。


「あいつと付き合っているんだろう」


昨日あんな言い方をしたから、サイラスは2人が恋人だと勘違いしていた。

誤解だと言おうとすると、低い声がさえぎった。


「俺もそろそろ考えなくてはな」


心臓がいやな音を立てる。

何も言えずにいると大きな手がサナの頭をぽんっとなでる。


「昨日みたいなことはもうしないから、たまには帰ってきてくれ。みんなも待っている」


大きな手が離れていき思わず呼び止める。


「っ待って!」


サイラスは背中を向けていたがピタッと止まった。

サナは涙声になりながら小さく言う。


「イリスとはただの友達よ。恋人じゃないわ。私が好きなのは‥」


目から涙がこぼれしゃくりが出てきたため、その先が言えなかった。

顔を真っ赤にしながら涙をぬぐっていると、サイラスが近づいてくる。

うつむいているとのぞき込まれた。


「中に入ってもいいか?」


深い碧の瞳が優しくこちらを見つめている。

無言で頷くと、背中を支えられて部屋に入る。


サナを落ち着かせるためにソファに座らせ、サイラスも隣に腰を下ろす。

しゃくりが徐々に収まってきた時、慎重な低い声が響く。


「あいつとは恋人じゃなかったんだな。じゃあ今は付き合っている奴はいないのか?」


サナは無言でうなずく。

隣から緊張している様子が伝わってくる。


「‥好きなやつは?誰なんだ?」


サイラスを見ると真っ直ぐに見つめてきた。

心臓が強い音を立てている。

視線をそらしそうになるが一回ぎゅっと目をつむり、彼に向き合う。


「‥あなたよ。ずっと好きだったの」


涙声で震えていてしっかり言えたが、徐々に鼻の奥がつんとして涙がこぼれてきた。


「‥ずっと?」


戸惑う声が聞こえてきた。


「そうよ‥ひく‥家を‥出る前から」


恥ずかしさにもう視線を合わせられず逃げたくなってくる。

すると肩を寄せられ広い胸に抱きしめられる。


「‥俺もだ。ずっとずっと好きだった。君が家を出て行っても毎日想っていた」


強い抱擁と熱い告白にサナは信じられない思いで聞いていた。


「何度焦がれたか。毎日会いに行きたいと思っていた。でも嫌われていると思って会いに行けなかった。今回決心したのは君を諦めるためだった」

「‥私があの家にいてはあなたが妻を迎えれないかと思って」

「‥それで出て行ったのか」


サナの頭を大きな手がなでる。

心地よさと安心さでまた涙があふれてきた。

サイラスの服の裾をつかんで大きな胸に顔を埋めていると、身体を抱きしめる力が強くなる。


「サナ、戻ってきてくれ。君がいない生活はもう耐えられない。俺の妻になってほしい」


サナは驚くが同時に嬉しさでいっぱいだった。


「っ嬉しい」


抱きしめる力が弱まり身体を起こされると、涙でいっぱいの目尻にキスを落とされた。

それから額やこめかみ、頬にも慈しみのキスをされていく。


最後に口の横にも落とし、慎重に唇を啄む。

サナが嫌がればやめるつもりだったが、そんなそぶりはなく目を閉じていた。

サイラスの理性は限界だった。

サナの唇を甘噛みしていき、徐々に侵入していく。

サナがサイラスの服の裾を掴みながら、必死に受け止めているのを見つめ段々と激しくなっていく。


やがてサナが胸板を叩き唇をはなす。

真っ赤な顔に涙でいっぱいの目からは今にもこぼれそうだった。

小さな唇も真っ赤で果実みたいだ。

親指で唇をぬぐうと、サナの身体が震える。


「っ」


恥ずかしそうにうつむく姿に、サイラスは限界だった。

その先はまだ早い。

己の荒ぶる精神を必死におさえ、サナを優しく抱きしめる。


「少し性急過ぎた。すまない」


サナは返事の代わりに大きな背中に手を回す。


「‥非常に名残惜しいが今夜は帰ることにする。また手紙を書くから待っていてくれ」

「ええ」

「戻ってこれるのはいつ頃になりそうか。仕事の関係もあるし、早めの方がいいがゆっくりでいいから進めておいてくれ」

「わかったわ」

「‥本当にいいんだな?戻ってきたらすぐに結婚になる。もう離してやれない」


引き返すなら今のうちだと口では言っているが、反論は許さないとばかりに身体を強く抱き込まれる。


「大丈夫よ。すぐに行くわ」


安心させるように背中をなでるとようやく離してくれる。

深い碧の瞳が真っ直ぐに見つめてくる。

もうそらさず受け止めた。


もう一度キスをしてから玄関まで見送る。

最後に抱きしめられ別れた。

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