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*完結* 大海の冒険者~空島の伝説~  作者: terra.
第二話 唸声
20/133

(15) 




「話は後だ!あんたのせいで騒動だ!

正気ならそこ掴んでろ!」




男性はジェドに言われるがまま、弱々しくだがハンドルの中央付近を持ち、しがみ付く体勢を取った。

ジェドは彼に構わず、懸念していた速度を一気に上げる。

真横と後方で(サメ)が暴れる音と飛沫が立つところを通過した。

ビクターにすぐ追いつくが、追手からの距離は一向に離れない。




「ぜってぇそいつが餌だ!」




ビクターがジェドの足元に納まる彼を見ながら、海上を切り続ける。

鮫は疲れ知らずで、ジェドの方にも群れを成し始めた。

困ったものだが、止まる訳にはいかない。

それに、島に引き連れてしまえば後でどうなるだろう。




「島に突っ込んじまう!回る!」




ジェドがビクターからうんと離れ、広々と弧を描き始めた。

ビクターはそのまま島の海岸まで飛ばし、救援を求めに突き進む。

小鮫の群は、美しく流れるようにジェドを追い、ビクターから離れた。






 先に島に到着したフィオとシェナは、波打ち際にジェットスキーを放り投げ、長老の元へ走る。

急にずぶ濡れで飛び込んできた2人に、アリーと長老が飛び上がった。

フィオは肩で息をしながら、海底で男性を助けたと伝える。

長老は一時、目を痙攣させて驚きを滲み出していたが、ここへ連れてくるよう指示し、アリーはその支度を始めた。






 フィオとシェナが浜まで戻ると、他の大人達も寄って集る。




「あれ!」




シェナは、双方に別れるジェットスキーを指した。




「だから言ったんだ!何してやがる!」




マージェスが、横に逸れるジェドを見て呆れた。

一方、こちらに直進してくるビクターが声を張る。




(シャーク)の群だ!」




シェナが堪らず声を張り上げる。






 今朝、漁に出ていた仲間達がそれを聞いて引き返すと、銃と槍を握って現れた。

4人に対し、呆れる声がついつい漏れてしまう。

岸で武器を構えた漁師達が並ぶと、その光景を見たジェドは方向を切り替えた。

斜めに大きく飛沫を上げ、更に海面を飛ばしていく。




「死ぬなよおっさん!俺もだけど」




バシャバシャと波を搔き立てる鮫の群は、ジェドと男性の足元まで迫っていた。

燃料が減り、速度が落ちている。

舌打ちしたジェドは、座席後部の燃料タンク付近を乱暴に蹴った。




「動けこの野郎!」




四方八方にいよいよ数匹が飛び交う。

頭を下げ、やっと交わせる状況を見たフィオは、彼の名を叫び、冷や汗を流し震えていた。




「任せろジェド!突っ込め!」




カイルとレックスが叫び、ライフルの照準器を覗く。









大海の冒険者~空島の伝説~


後に続く

大海の冒険者~人魚の伝説~

大海の冒険者~不死の伝説~ をもって完全閉幕します




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