(15)
「話は後だ!あんたのせいで騒動だ!
正気ならそこ掴んでろ!」
男性はジェドに言われるがまま、弱々しくだがハンドルの中央付近を持ち、しがみ付く体勢を取った。
ジェドは彼に構わず、懸念していた速度を一気に上げる。
真横と後方で鮫が暴れる音と飛沫が立つところを通過した。
ビクターにすぐ追いつくが、追手からの距離は一向に離れない。
「ぜってぇそいつが餌だ!」
ビクターがジェドの足元に納まる彼を見ながら、海上を切り続ける。
鮫は疲れ知らずで、ジェドの方にも群れを成し始めた。
困ったものだが、止まる訳にはいかない。
それに、島に引き連れてしまえば後でどうなるだろう。
「島に突っ込んじまう!回る!」
ジェドがビクターからうんと離れ、広々と弧を描き始めた。
ビクターはそのまま島の海岸まで飛ばし、救援を求めに突き進む。
小鮫の群は、美しく流れるようにジェドを追い、ビクターから離れた。
先に島に到着したフィオとシェナは、波打ち際にジェットスキーを放り投げ、長老の元へ走る。
急にずぶ濡れで飛び込んできた2人に、アリーと長老が飛び上がった。
フィオは肩で息をしながら、海底で男性を助けたと伝える。
長老は一時、目を痙攣させて驚きを滲み出していたが、ここへ連れてくるよう指示し、アリーはその支度を始めた。
フィオとシェナが浜まで戻ると、他の大人達も寄って集る。
「あれ!」
シェナは、双方に別れるジェットスキーを指した。
「だから言ったんだ!何してやがる!」
マージェスが、横に逸れるジェドを見て呆れた。
一方、こちらに直進してくるビクターが声を張る。
「鮫の群だ!」
シェナが堪らず声を張り上げる。
今朝、漁に出ていた仲間達がそれを聞いて引き返すと、銃と槍を握って現れた。
4人に対し、呆れる声がついつい漏れてしまう。
岸で武器を構えた漁師達が並ぶと、その光景を見たジェドは方向を切り替えた。
斜めに大きく飛沫を上げ、更に海面を飛ばしていく。
「死ぬなよおっさん!俺もだけど」
バシャバシャと波を搔き立てる鮫の群は、ジェドと男性の足元まで迫っていた。
燃料が減り、速度が落ちている。
舌打ちしたジェドは、座席後部の燃料タンク付近を乱暴に蹴った。
「動けこの野郎!」
四方八方にいよいよ数匹が飛び交う。
頭を下げ、やっと交わせる状況を見たフィオは、彼の名を叫び、冷や汗を流し震えていた。
「任せろジェド!突っ込め!」
カイルとレックスが叫び、ライフルの照準器を覗く。
大海の冒険者~空島の伝説~
後に続く
大海の冒険者~人魚の伝説~
大海の冒険者~不死の伝説~ をもって完全閉幕します




