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生きるために強くなる ~だってゴブリンに転生しちゃったし~  作者: ミジンコ
第2章 ゴブリンと冒険者ギルドと死者の王
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48話 ギルド前の戦いのようです

メンテナンス終わってからの最初の投稿になります。

ジャンルはハイファンタジーになっております。これからもよろしくお願いします。

 街中の屋根の上を母親とその娘、そして名も知らぬ女性を【物理魔法】で持ち上げたまま冒険者ギルドを目指して駆け抜ける。

 遠くにギルドの屋根が見え始めてくると、そこから一筋の光が天に向かって飛んでいった。その光は雲に届きそうになると炸裂し、無数の光の筋となって地上へ向かって落ちてくる。

 【気配察知】で周囲を探っていくと、光の筋が落ちた所にいる屍鬼(グール)の反応が次々と消滅していることがわかった。


 あれはアイナの弓か。おそらく【分裂】と【追尾】を付加した矢でも作ってるんだろうな。それにしてもアイナが殺してるそばからどんどん増えていくな……。急いだほうが良さそうだ……ん?


 【気配察知Lv.6】がレベルアップしました。


 レベルアップによってより鮮明に、そして範囲が更に広がった。今まで捉えられていなかったシリルも範囲に捉え、その行動を見ているとそばにいる屍鬼(グール)の反応がこれまた次々と消滅していた。

 周りにも他の冒険者がいたが反応がさっきから動いていない。死んではいないので恐らくシリルを見て呆然としているか、巻き込まれて気絶でもしているのだろう。

 そして冒険者ギルドに到着するとそこには大量の屍鬼(グール)と戦っている冒険者の中に2人の怪物が混じっていた。


「ぶぅるぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


「ふんぬぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」


 2人の怪物もとい2人のオカマ、ギルドの受付ゴンザレス(プリティー)さんと宿屋の店主キューティーさんだった。

 武器も持たずに戦場に立ち、近くの屍鬼(グール)にその拳を叩き込んでいた。

 拳の一撃を顔面に受けた屍鬼(グール)はそのまま頭が吹き飛び即死し、腹に受けた屍鬼(グール)は上半身と下半身に分かれて吹き飛んでいた。

 途中何度か屍鬼(グール)に噛み付かれているようにも見受けられたが、全身を覆う筋肉の鎧に阻まれ逆に無防備になりその体を破壊されていった。

 時折強烈なハグをされ鯖折からの上半身と下半身が切断された屍鬼(グール)は、頭が無事なのでまだ動けるはずなのだが一向に動く様子は無かった。その屍鬼(グール)の顔が泣いているように見えたのは気のせいだと思いたい。


「【グラビトン】!」


 【気配察知】で確認できる冒険者ギルドの周辺にいる屍鬼(グール)を全て強烈な重力で潰す。

 冒険者達が突然の出来事に驚愕しているのを無視し、ギルドの入口に降り立った。


「ただいま、ゴンザレス(プリティー)さん」


「あらシーツァちゃんおかえりなさい。生存者を運んできてくれたのねん。早くギルドの中で休ませてあげるといいわん」


 ギルドの中に入るとそこは野戦病院のようだった。床を埋め尽くさんばかりに怪我人が寝ており、その隙間を縫うようにしてギルドの職員や治療系の魔法の使い手が治療のために奔走していた。


「ソーラは何処にいる?」


 周囲を見回してみるがソーラが見当たらないことに疑問を抱き、近くを通りかかった職員に尋ねた。


「ソーラさんでしたら今2階で他の避難してきた住人の方々と休んでいますよ。だいぶ魔力を使ってしまって倒れる寸前だったのでマスターが休むように厳命したんです」


「そうか。ありがとう。俺もこの3人を2階に預けてきたら治療に参加するよ」


 それだけ言うと怪我人を踏まないように慎重に歩きながら奥にある階段を目指す。

 少し神経をすり減らしながらも階段に到達し、2階に辿り着くと格部屋の中には大勢の住人が避難しており、一番奥の扉が頑丈そうな部屋の中にソーラが1人ソファーに座って休んでいた。


「ただいまソーラ。大丈夫か?」


「大丈夫ですよ。少しMPを使いすぎましたが、【MP自動大回復Lv.1】のおかげでほとんど回復しましたし、スキルレベルも上がりました。それで、そちらの方々はどうしたんですか?」


「ああ、ちょっと用事で動いてる時に見つけた生存者だよ。他の部屋が一杯だったからこの部屋に連れてきたんだ」


「いえ、なんでその3人は気絶しているのかなと思いまして」


「ああ、ちょっと【物理魔法】で持ち上げて、そのまま街中の屋根の上を走っていたら最初は悲鳴を上げてたんだが、途中で気絶したんだよ」


 俺の答えに深い溜息を吐くソーラ。すぐに【物理魔法】で母娘をソファーに横たえさせると、もう1人の女性も革張りの豪華なイスに座らせた。


「これでよし。シーツァ、緊急時とはいえ女性はもうちょっと大事に扱ったほうがいいと思いますよ。特にこんな幼い女の子のトラウマになったらどうするんですか」


「すみません……」


 少しソーラにお説教された後、ソーラと共に1階へ降りる。怪我人の数がさっきよりも若干増えているようだった。


「とりあえず一気に回復させるか。【範囲回帰(エリアリグレッション)】」


 ギルドの1階が淡い緑の輝きで覆われると、床に寝ている怪我人が次々と起き上がり恐る恐る自分の体を触っていく。

 すぐに怪我が完全に治っている事が分かると皆大きな声を上げ、怪我の回復を喜んだ。ただ、治療に当たっていたギルド職員や治療系魔法が使える冒険者は皆揃って眼をむき、口をあんぐりとあけて驚愕の表情を浮かべていた。


「す……すごいですシーツァさん!! これだけの人数を一瞬で完全回復させるなんて! しかも無詠唱ですか! 普通人間には無詠唱なんて出来ないはずなんですが……とにかくすごいです!」


 やばっ、まさか人間は無詠唱で魔法を使うことが出来ないのか。今まで誰も指摘しなかったから気にしなかったがちょっとやばい?


「い……いや、階段を下りている最中に小さく詠唱していたんですよ! 無詠唱なんて出来るわけないじゃないですかいやだなーもー」


 眼をキラキラさせながら捲くし立てるギルドの職員さんに内心冷や汗をダラダラ流しながら何とか言い訳をする。

 他の職員さんや魔法使いの人も興味深そうにこちらを見つめており、ボロが出る前にいそいそとギルドを出て再び屍鬼(グール)退治に向かった。

 1時間ほど屍鬼(グール)を駆逐しているとぐったりとしたサリアを左肩に担いだカリムとアリアがギルドに戻ってきた。

 サリアはかなりの量の血を流しカリムの肩を赤く染めている。

 カリムとアリアも全身に細かくない傷を負っており、相当苦戦していたことが(うかが)えた。


「頼む! 誰かサリアを手当てしてください! このままじゃ死んでしまう!」


「大丈夫ですか! あなた達も酷い怪我……。急いで治療しないと!」


「俺は後でいい! それよりも早くサリアを……!」


 出てきたギルド職員にサリアを預けるとカリムは限界だったようでそのまま気絶してしまう。

 倒れたカリムからは夥しい量の血が流れ出しており、既に致命傷を受けているのは明らかだった。


「誰か……! カリムを助けて! 私達を庇って大怪我を負わされたんです!」


「カリム! ソーラはサリアとアリアを治療してやってくれ。俺はカリムを治療する」


「分かりました。職員さん、サリアさんを地面に寝かせてください!」


「いえ、流石にこんな所には――」


「早くっ!」


 ソーラの剣幕に押された職員は慎重にサリアの体を地面に横たえる。

 サリアの体右腹部から血を垂れ流しており、全身は青白く相当な量の出血をしていることがわかった。


「急がないと! もういつ屍鬼(グール)になってもおかしくない! 【回帰(リグレッション)】!」


 淡い緑色の光がサリアとアリアをやさしく包み込むとサリアの腹部の傷も徐々に塞がっていき、すぐに後も残らず完治した。アリアも全身の細かな傷が消え、サリアの呼吸が安定し、もう命に別状はないことが分かると笑みを浮かべ、緊張の糸が切れたのかそのまま倒れて眠ってしまった。


「ソーラ、そっちは大丈夫か?」


「はい、もう大丈夫ですよ。サリアさんはだいぶ危なかったですが、もう命の危険もないでしょう」


 気を失ったままではあるが、傷も完治し呼吸も安定しているカリムを職員に引き渡すとソーラと共に再び戦闘を再開しようとする。職員が3人を抱えてギルドに入ろうとした瞬間ギルドの周りの屍鬼(グール)が一気に増え、カリム達を抱えている職員達へ殺到した。


「させるか! 【グラビトン】!!」


 職員に屍鬼(グール)の手が届く寸前全ての屍鬼(グール)はいきなりの重力に耐え切れず地面に押し付けられ、一部は既に耐え切れず肉の塊に姿を変えていた。

 ギリギリの所で職員がギルドに入ると付近の冒険者達は入り口を護るように展開し、俺とソーラもそれに倣った。

 するとギルドの前の建物の屋根の上から今1番聞きたくない声が聞えてきた。

正直今日調べるまでハイファンタジーとローファンタジーの違いが一切分からなかったミジンコです。

今回はまさかの2人の怪物が戦っているシーンを入れてみました。

ゴンザレス(プリティー)さんもキューティーさんも元Sランクの冒険者だったりします。強いわけですね。

2人とも特定の武器を使わず、己の肉体のみで戦うのがモットーですが使おうと思えば何でも使える、いろんな意味で主人公以上のチートな存在ではないでしょうか。


ブックマークや評価ありがとうございます。増えていくブックマークを見ると大変励みになります。

誤字脱字、表現がおかしいなどのご指摘がありましたら遠慮なくお願いします。

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