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とある国のとある姫  作者: 空星月花
塔の賢者姫
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塔の賢者姫(1)

同時進行で進めていきますが、基本的に『心を無くした海の姫』シリーズが先です。


もう一度ですが、カップリングは作者の好みが大きく影響しているし偏りがあるので、いいよって人はどうぞ。



前作『心を無くした海の姫』と同じ世界の、同じとき、別のところのお話。

ゼルラン聖公国。


長い歴史と、大国としての誇りを持ち合わせ、〝聖公国の民〟であることほど信用のおかれるものはないと言う。


そんな国の、一番賢き者は誰?

そう問われれば、皆答える。


〝賢者の塔のレイラ様〟と。


   ☆☆☆



「………左遷?」

「だから、左遷なぞではないと言っただろう!そもそも、そんなことを言ったら、レイラ嬢に失礼だ。」

「ですけど、賢者の塔って、……あの、天領いなかじゃないですか。」

「確かに、遠いが!賢者の塔の護衛は大事なんだぞ!つべこべ言わず、準備して向かえ!」


ついに、上司はキレた。


(そんなに、凄い人なんすかね…)


たかが17の令嬢だ。

そんな令嬢が、国一番に賢いからと、こんな厚待遇をされるものか。


(だけど、賢者の塔の護衛なんて、左遷とたいして変わらないだろーが…)


昨日までの日常を、賢者が返せるなら返してみろと怒鳴りたくなった。




カイン・レヴス。

ごくごく一般的な、近衛兵である。

(まあ、近衛兵という花形役職に就いている時点で、一般的とは言えないかもしれないが)

特に目立つでもなく(良い意味でも悪い意味でも)、国から支給される高給と、僅かな有給と、近衛兵という肩書きで食ってきた。


それが、突然何を思ったか、上司…近衛隊長…に呼び出され、「明日から賢者の塔の護衛」とだけ言われたのだ。


特になにもない平和な日常は何処へやら。


ところで、「賢者の塔」とは、この国の天領いなかにある塔である。

〝国一番賢い〟と言われる、ユレーア侯爵令嬢・レイラが住んでいる。


たった十七歳の娘だが、わさわざ国から、近衛兵が賢者の塔に派遣されてきたことから、国にとってなくてはならないものだと分かる。


「分かったか!」

「わかったっす。」

「レイラ嬢にはこの話は伝わっている。心配するな。」


(誰が心配するんだよ?)


俺か?上司おまえか?


「………不満そうだな。これは公主様直々の命令だからな!」

「はあ。(しつけえな)」



ガミガミ言われてから、上司の部屋を出る。

王宮にあるその部屋を出ると、静まり返った広い廊下。


(準備しねえとな…)


嫌々ながらも何気に仕事をこなそうとするカインであった。



   ☆☆☆



「レイラ様、おはようございます。」

「おはよう、エリー。」


今日もレイラは早起きだ。

既にベッドに起き上がって、分厚い資料を読んでいる。


「エリー、後で、護衛の人たちを集めてくれる?」

「分かりました、レイラ様。」

「今日新しく一人、護衛に入ってくれる人が来るからね。」


エリーはにっこりして、頷いた。


「お出迎えになりますか。」

「うん。」

「では、服装は…」

「いつも通りで良いよ。」

「………そうですか。」

「たって、出迎えるのにかかる時間なんて僅かだもの。それまでに調べものもあるし…。」


レイラは普段から、軽装を好む。

階段の多い賢者の塔では、スカートやドレスの類いは向かない。

さらに、レイラは一日を、調べものや書き物で終えてしまうために、袖は豪華なものは向かない。インクが袖についたら大変だ。


結果として、色合いは女の子向けの、上着とズボンという服を着ているのだが…


「少しくらい、お洒落をしても良いのではありませんか。」

「えー…どんな?」

「実際に持ってきましょう。その方が分かりやすいですからね。」


とたんにレイラははっとした。

うまく乗せられてしまったのだ。

実際に持ってきましょうと言って、実際に着せてしまうのだ。


「エリー…」

「今日くらいは良いでしょう。」



反抗も空しく、着せられたレイラだった。



   ☆☆☆


(くっそ……疲れた…)



次の日から左遷しごとと言われ、早朝から今、夕方まで馬を走らせ続ければ疲れないわけがない。

相当な速さで馬を駆っているが、よく馬は疲れないなと思う。


(こんなんなら、上司を怒らせるんじゃなかった…明日から仕事だとは言われなかったかもしれないのに。)


頭が働かなくなって、ぼーっとしていると、


(…あれか。)


森が開けて、町が見えたその先に、レンガ造りの塔。

城と同じくらいの高さだろう。結構ある。

馬の背を撫でた。



   ☆☆☆


「ようこそ、賢者の塔へ。私がこの主、レイラです。貴方は、カイン・レヴス様で間違いありませんね?」


賢者の塔の前まで来ると、ある人が迎えに出ていた。

フードを深くかぶり、紅い凝った刺繍の施された上着と薄いピンクのズボン、革のブーツ……いかにも冒険者といった風体の謎人物だ。

そしてそれが賢者、レイラ嬢だとか。


(…顔が分からねえ。賢者はフードを被るもんなのか?)


口許くらいしか、よくわからないので不安になる。

これ、本当に賢者か?と。


「確かに、カイン・レヴスだが。」

「それはよかった……皆さん、此方が新たに近衛隊から派遣されたカイン・レヴスさんです。勿論、彼を御存知の方もいらっしゃるかも知れませんが……、明日から皆さん仕事をしていただきますから、よく覚えてください。」

「分かりました、レイラ様。」


いつのまにか、賢者の後ろに控えていた近衛兵に紹介される。


…………いくつか、見覚えのある顔も無いわけではない。

目が合うと、突然ニヤニヤしだしたりして、はっきりいって気持ち悪い。

「それではカインさん、エリーに案内させますから、今日は休んでください。」

「仕事は?」

「その体では無理でしょう。その代わり明日から仕事をしてもらいますし、仕事内容も教えますから。」


なかなか分かってるな、賢者。

頭が良いだけではなくて、思いやりもあるらしい。こっちが疲れていることは、流石賢者様様かお見通しなのだ。



   ☆☆☆


「レイラ様。」

「なに?」

「御質問、よろしいでしょうか。」

「良いよ。」


レイラは読んでいた本を伏せ、机においた。

椅子から、目の前に立って真剣な顔をしている侍女エリーを見る。


「今日いらした護衛の近衛兵カイン・レヴスですが…」

「ああ。それね。閣下はいったい何をなさりたいんだろうね。」

「そうです。失礼かもしれませんが、護衛の近衛兵は十分足りています。寧ろ一人、何処かにあげても良いくらいです。」

「エリー。」

「分かっています。でも、このタイミングで、おかしいです。こっちの事情は、公主様だってわかっているはずなんです。」


エリーは興奮して、口調が少し乱れている。


「私にも分からないよ、エリー。」

「レイラ様でも、ですか?」

「そうだね。一昨日、突然連絡があって、閣下直々に近衛兵を一人派遣すると言われたとき、聞いておけばよかったなぁ。」


のんびりとレイラが言った。



   ☆☆☆


(…意外と良い部屋だな。)


与えられたのは3階の部屋だ。

窓もあるし、塔特有の湿っぽさ(イメージ)は無い。

きちんと換気して、掃除されている風だ。調度品も壊れたりしていないようだし。


(『お風呂場は一階です』とあの侍女エリーも言っていたことだし、入るか。長旅だったしな。)


本来は4日かかるのを一日で行ったんだから大したものだ。

だから体を綺麗にしたい。


纏めて持ってきた着替えを片手に部屋のドアを開けた。


「……………。」

「や、やあ!カイン君!お久し振りだね!」

「……………。」

「む、無視、かな?お兄さん、悲しいなぁ~…。」

「………。」

「此処に来たばっかりで色々わからないかもしれないと思って、来ちゃったよ!」

「……本当にそうか?」

「う、うん、そうだね~………うん。」

「(絶対嘘だな…)取り合えず中に入れ」

「!!!!」




立ち話も難なので、中に入れる。


「で、何だ?」

「いやぁ、こんな時期に、いったいどうしたんだろうっていうか、なんつーか。」

「…さあ、分からん。」

「え、分かんないの?!」

「知るわけがないだろうが。俺は今まで、普通・・に過ごしてきたんだ。左遷される心当たりは全くない。」

「左遷って、酷いなぁ…」


こいつは、近衛隊のかつての同期だ。

何年か前に、此処に左遷になっていたので、それきり会っていなかった。


「此処は良いところだよ。あんまり働かなくて良いし。」

「それが本音か!」

「本当だよ。レイラ様もお美しいし。」

「そりゃあ侯爵令嬢だから当たり前………お前、顔見たことあんのか?」

「ない。」

「は?」

「だってあんなにふかーくフードを被ってたらわからないじゃんか。少しでも良く考えたいもん。」

「もん。じゃなくてな、一体お前は何をやってんだ…」

「一日の仕事ってこと?」

「ああ。」

「大抵、レイラ様の講義。週一で、護衛。ちなみに一日三食昼寝つき。」

「は?」


なんてホワイトな職場なんだ……じゃなくて、

これじゃあ仕事をしていないも同然では!?


「大体講義ってなんだ講義って…」

「僕たちがなんで此処に派遣されたか知ってる?あんまりにも筆記試験が酷かったからだよ。」

「ああ…」


そういえばコイツはそうだったな。

近衛隊の入隊には試験があって、強さ(物理)も頭も良くないとならないのだが…

同期で、従卒の頃から、コイツは勉強はからきしだった。寧ろどうして近衛隊に入隊出来たか謎だった位だ。


「それで、今は取り合えず入隊させてやる、近衛隊も人員不足だから、だけど、賢者の塔でしっかり学べ、って早々に派遣されたワケ。」

「でも、それはおまえだけの話だろう?」

「そうでもないよ?先輩の中にも僕みたいなのは居たみたいでさ、それでついでにって。」

「そうなのか…」


やんぬるかな近衛隊。

人員不足な時点で色々アウトな気がするよな…


「明日からの護衛君も週一で良いはずだから。」

「それに俺に講義は不要だろうな。つまり暇ってことだ。」

「え?!講義受けないの?」

「 俺が受ける必要があるか?おまえじゃあるまいし。義務じゃないだろ。」


これが普通で、コイツがちょっといかれてるだけだ。


「えー…………」

「俺は風呂に入ってくる。お前は?」

「別に。良いや。」

「そうか。」


出直すとしよう。

同期を置いて、一人階下へ向かった。


   ☆☆☆



「おはよう。」

「あ、ああ…」

「ここは図書室だよ。食堂は二階だけれど。一階は水場で二階が居間と皆さんの住まい、三階がエリーと貴方の住まい、四階は図書室、五階は私の部屋になっているよ。ちなみに屋上もないわけではないよ。」

「そうか。」


これぞ心臓に悪いと言うやつだろう。

朝起きて、さて朝ごはんと思ったものの、何処の階で食べるのか分からず迷ったのだ。

何となく上の階に上がったら、例の賢者姫レイラさまがいた。

しかもフードなしで。

ただし此方に背を向けて。

長い、縮れたプラチナブロンドをまとめもせず、背中に流している。

相変わらず冒険者じみた服装だ。

そうして、図書室の椅子に座っていた。


で、挨拶してきたと言うわけだ。

静かな図書室に突然声がしたからビックリした。

それに早々にして、自分の主人と二人ぼっちとは思わなかったし。


「仕事のことは、後で説明されるよ。ところで、貴方は何の講義を受けるの?」

「…受けないが。」

「…そう。」

「そこまでバカではないから。」

「それは、良かったね……そっか。てっきりそっちの目的で閣下は送ってきたと思ったのにな。」


最後の方はかなりボソッと呟いていたが、部屋が静かなので聞こえた。

閣下?誰だ?


『そう言えば、この塔では何人かが、アウエル語を学んでいるんだ。それで、アウエル語しか話させてないけど、大丈夫だよね?』

『ああ。』

『本当に?ちょっと話してみてよ。』

『バカにしないでくれ。で、アウエル語しか話せないやつらは何人だ?』

『主に全員よ。日常会話程度なら大丈夫そうね。』



くふふ、と笑う声がした。


『それが、近衛隊の〝普通〟な訳ね。』

『………。』

『可笑しいなぁ、確か、近衛隊ではアウエル語は試験に出ないから学ぶ必要もないはずなんだよね。』

『…客人の護衛でアウエル語が必要だっただけだ。』


楽しそうな声に思わずむっとして返すと、さらに笑われた…し、レイラは読んでいた本を脇において、突っ伏した。


『そんな笑うことか?』

『ああ、ごめんごめん。いやー、見事に…騙されたなって。』

「は?」

『ああ、何でもないよ。で、朝ごはん食べたら?もう一度言うけど、食堂は二階ね。』


どうにも口がうまい気がする。

舌先三寸で戦えるような相手じゃない…まぁ、相手は国一番の賢い人なんだから仕方ないのだが。


   ☆☆☆

カチャッ。


扉の閉まる音がした。


「ふー…」


なかなか面白かった、とレイラは笑みを浮かべる。


「レイラ様、なかなか悪趣味ですね。」

「でも、わかったことだってあるじゃない。」

「それが悪趣味だって言うんです。」


エリーに諭される。


「…まあ、でも、分かったこともあるよね。あのカイン・レヴス、実は出来るやつだったこととか、恐らくアウエル人との混血だろうこととか。」

「…残念ながらレイラ様、私、アウエル国のことはよくわかりません…」

「遥か昔の古王国の名残だ。さて、もうご飯だよね?流石に此処では食べられないから、上に上がろう。」


   ☆☆☆


昼過ぎ。


『…で、多くの現在の国は、古代に移民としてやって来た俗に〝東の海の民〟と呼ばれるハイレウヴァという民たちが建国したのだ。ハイレウヴァは、今聞いてわかったかもしれないが、アウエル語で〝やって来た人〟という意味だ。』

『何故アウエル語で?』

『アウエル語は、古代王国の言葉だ。まあ、正確には古アウエル語が、と言うべきか。アウエル人は此処に昔から住む民、先住民で、彼らが私達をそう呼んだから今、伝わっているのだよ。』

『古アウエル語とアウエル語の違いは?』

『たいした違いはないが、アウエル語は今のアウエル国で使われる。古アウエル語は文献のみに残る。アウエル国は古代王国の後を継ぐ者となっている。』


暇になって二階に来てみたら、レイラ様は講義をしていた。

オールアウエル語

古代の国の起こりについての話だろう。これも実は、近衛の試験では教科書レベルの話だ。


『さて、私達は東からこの大陸に移住した。では、何故か?』

『東の大戦』

『その通り。我が国の歴史で学んだ筈だ。…と、言われているが実はそうではない。』

『えっ?!』


これは初耳だ。

賢者なら考えるところも違うのかも知れない。もしかしたら初めから、東の大戦なんて疑ってかかっていた、なんてことも…。


『東の大戦、たしかにそう呼ぶ呼び名は間違っていない。大昔の戦争を避けて、私達がここに逃れたのが移民となった原因とされてきた。だが、実は戦争なんかなかった。どう思う?』

『…………。』


どう思うと言われても…


今までの常識を崩されては…


講義をしている部屋にも沈黙が落ちている。


『…………これで、講義は終わりだ。少し用事が出来た。エリー。』

『はい。』

『客人を迎える準備を。……閣下あのひとと、父だ。』

『わかりました。』


ガタッと椅子を引いて、立つ音がした。

すぐに部屋の戸が開き、自分は戸に耳をつけて聴いていたので慌てて退く。


「ああ、貴方か。すまないが、これからはエリーの指示に従ってくれ。」

「はあ。」


今日もふかーくフードを被ったまんま、こくんと彼女は頷いた。

そのあとから、侍女も出てくる。


「…とりあえず部屋の中に。」

「はあ。」


なんか、同じ返事しかしてないけど。

相手は至って真剣だ。


「さて、侍女ごときが差し出がましくも、命令とは失礼かと存じますが…」

「別にそんなことはないですよ!」

「そうですか、ありがとうございます。そして、これから客人を迎えるにあたって、いくつか注意があります。」


ここでいったん、エリーは話を切った。

ここで溜めて、期待させるつもりか。


「まず、これから訪れられるお二人は、夫婦ではありません。」

は?

夫婦に見えるような男女だけど夫婦ではありません?

愛人?


「貴方が思っているような愛人でもありません。友人です。そして次に、一人はレイラ様の父上様で、もう一人はやんごとない御方です。」


……………………。

やんごとないって、もうどっかの王族とかしか考えられないだろ。

で、友人?

なんて恐ろしい侯爵なんだ。蛙の子は蛙、親がそんなすごけりゃ娘も賢者になると言うものだ。


「最後に、御二人は、貴方達が護衛などロクになさってないことはご存知ですから、お気になさらず。」


確かに護衛はしてないが、ズバリそれは、ちょっと酷いのでは…



「以上のことを、他の近衛の方にもお伝えください。」


まあ、この部屋にいるのはせいぜい全体の半分といったところか。

他は護衛業を営んでるか、グウタラしてるにちがいない。

なんせ、三食昼寝付きなホワイトな職場なんだから。



   ☆☆☆


「……閣下…意地が悪いですね。」


講義中に、伝書鳩が持ってきた手紙に、ため息が出た。『我が愛する娘、レイラへ

今日の午後、そちらに着く。非公式だから出迎えは無用だ。リリアも着く。正体はばらさぬように。

       父、ルドルフ・ユーレア』



短い。

走り書きすぎる。

素っ気ない。


父に期待してはいけなかったようだ。だいたい今日つく、と言うことはつまり、ついさっきこれは書かれたもので、しかも今昼過ぎだから、危機的だ。

なんでこう、ギリギリまで連絡をしないものか。

あのしっかり者の父に限って、そんなことをするわけがない。


とすれば…


(閣下の差し金…)


イタズラ好きな彼女の顔が浮かんだ。

いらっとした。





「レーイラ嬢~!」


馬の蹄の音がして、扉が空いたと思った瞬間の声。

あっという間に、圧迫感に襲われる。

この、馬車から飛び降りて、自分に飛びかかってきた、最高級のドレスをめした、黒髪グラマーな美女。


閣下…………である。


「あの、閣下」

「会うのをすごく楽しみにしていたのよ!ユーレアの侯爵おっさんは、嫌がってたけれどね!」

「あの、」

「リリア、娘から離れろ。」


おお、さすが我が父!

びしっと注意した。


「そうですよ、かっ…リリア様。抱きつかれると圧迫感(主に胸)があって…苦しい(精神的にも)です。お父様も中へ。エリーが案内します。」

「そうね!中にはいるわね!」


何だろう、物凄い上機嫌かつテンションはアゲアゲ…

どうかしたのでは…


馬がヒヒーンと鳴いた。馬車馬にも、リリア閣下に思うところはあったのかもしれない。



   ☆☆☆


「それで、お父様、そちらはリリア様…閣下、でございますよね。」

「そうだ。私が半年に一回の帰郷ついでに、お前の報告も聞こうと思ったら…このざまだ。」


リリア様、閣下、やんごとなき方…尊称は数多あれど、正式な名は、ソレルティス・リリアンヌ・ゼルラン公主。

ゼルラン聖公国公主が、彼女のお仕事。

彼女だ。

決して………閣下と呼んでいたからといって、また、美女が実は男なんて言う妄想兼夢物語が流行っているからといって……、男ではない。

生物的にも女、と分類できる(失礼だけども)。


「へぇ~、これが、レイラ嬢。」


珍しげに、公主はわたしを眺める。

そのわたし、今は、フードをとっていた。


フードは、私の正体を隠すための、一種の防衛機能だ。

「星神…星の神、か…。」


私の額には、紫紺の輝石が埋め込まれている。さらに、全身には星神にもある、同じアザがある。

輝石もアザも生まれつきだ。 それもこれも、私が星神の実の娘だからだ。


そしてこの、はっきりと目に見える形で現れる〈神の娘〉の証拠は、私が実の母に捨てられた原因であり、此処に幽閉され、屋内でもフードを被っている理由でもある。



「見るな。減る。」

「はあ?偉そうだねえ、ルドルフ。お前が会わせてくれないからいけないんだ。」


しばらく物思いに耽っていたら、さっそく父と閣下はやりあっている。

でも、二人とも本気でないのは確かだ。


「お前が勝手について来たんだろう!今日はお前に娘を見せるつもりで来たわけではない!」

「ほら、そう怒んないの。」

「お父様、リリア様。良いでしょうか?」

「ああ、ごめんね~レイラちゃん。私のことはお姉さまと」

「馬鹿なことを。良い、レイラ、話せ。」

「はい。では報告します。」




キリが良いのでここで切ります。


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