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炎上した高校生探索者だけど、親友ともう一度ダンジョンに潜ろうと思う  作者: 茶枝


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8/8

8話 合流

「遅れて悪い」


 そう言いながら弘人は状況を確認した。

オーガは壁に埋まっており、すぐに行動を起こすことはできない。

だが、意識外からの不意打ちであり致命傷に至っていないことはすぐに理解した。

そして、氷蒼のメンバーが3人しかいないことが気にかかった。


(デカい…いや、それだけじゃねえな…何だこの硬さ)

「今ので仕留められたらよかったんだが」


(斬ったってより叩き飛ばした感じだな…)


 オーガに深い切り傷を付けることはできたが、断ち切ることができなかった。

『うおおおおおぉぉぉぉ!!!間に合った!!』


『いやマジでよく耐えたよ』


『両方とも称賛だな。ナイスプレーすぎる』


『今ので死んでねえのかよ』


『それが実感できるのもわかんないけど、安心感やべえよ』


『さっきまでめっちゃ不安だったのになんだお前最高じゃねえか』


 間に合ったという事実が、コメント欄を加速させる

通常では1000人ほどしか視聴者がいないこのチャンネルだが、緊急事態・そして人気パーティのピンチという事情があり、ライブの視聴者数は4000人を超えていた。


「あっいえ、助かりました」


「気にするな。ハルアさんはどうした?」


「は、ハルアはその…私を庇って、あそこに」


 桜が指をさした先にいたのは、クレーターの真ん中で横たわるハルアの姿だった。


(———っ!腕が反対に!)

「詩織!治療を頼む!!」


「っ、わかりました!」


「時間は稼ぐ!せめて動けるくらいまで頼む」


「わかってます!」


『え、腕いってるくないか』


『やばい吐き気してきた』


『生きてるよな?大丈夫よな?』


 詩織はハルアに駆け寄り、治療を開始しようとする。

既にハルアの治療に当たっている玲と視線が交わる。


(これは…少なくとも右腕は折れてますね)


 すぐに戦える状況じゃないことを悟り


「お手伝いしますね玲ちゃん」


「は、はい。す、すいませんありがとうございます…」


「焦らずゆっくりと…私たちが来ましたから一先ずは安心してください」


「わ、私治療そこまで得意じゃないんですけど…加勢に行った方がいいですか?」


「いえ、一緒に頑張りましょう。その方が治りも早いですし」


「わかりました」


「下半身をお願いします。腕は私が」


 手をかざす、淡い光が傷口を覆い、血の流れがゆっくりと止まっていく。


「すみませんハルアさん、痛いと思いますが我慢してくださいね」


 そう言葉を残し、詩織はハルアの腕を取り、布で縛り氷の棒で腕を固定させた。

しかしハルアは、腕を触ってもそれといった反応を示さなかった。


「反応がない…意識がないんですね。玲さん、どんな状況だったのか教えていただきたいです。皆さんがここまで追い込まれているのは何かあったとしか思えません」


「は、はい。えっと、まずあのオーガは他のモンスターを捕食します。私たちがここに来た時には他のモンスターを捕食している途中でした」


「モンスターを捕食ですか!?聞いたことがありませんね」


「はい、おそらくそれでパワーアップしてます。ハルアがパワー負けするほどです」


「ふむハルアさんが…警戒しておいた方がよさそうですね」


「そ、それと!桜がとどめを刺そうとしたときに、突然咆哮を上げてきて…おそらく知性とまではいきませんが、他のモンスターよりかは長けているかと」


「なるほど…その咆哮は私たちも聞こえてきました。情報ありがとうございます」


「いえ、あの咆哮を聞いたとき体が動かなくなったので状態異常もあるかもしれません」


『詩織ちゃんがついてれば安心か』


『状況的には楽観視できんやろ』


『何か話してるけどここだと聞こえん』


『まあ状況とか聞いてるんでしょ』


『ドローンもっと近寄ってくれ』


 ドローンが現在浮遊しているのは、コウたちの近く。

それ故、少し離れたところにいる詩織たちの声を拾うことができずにいた。


 ハルアの身体強化は氷蒼の中で出力が一番高い。そのため前衛を担っているが、ハルアが負けたということでオーガの膂力はそれ以上ということになる。

何度か探索を共にした詩織はそのことを把握していた。

詩織の中でオーガに対する認識が変わっていく。


「灯里さんと桜さんはまだ戦えそうか?」


「大丈夫です」


「もちろんです」


「前衛は俺が引き受けよう。治療が終わるまでは時間を稼いでほしい」


 息を合わせたようなタイミングで頷く


「デカいわね…普通のサイズの何倍かしら」


「2倍くらいじゃないですか?」


「呑気だなお前ら…コウお前、絶対前に出てくるんじゃねえぞ?」


「わかってますよ」


「こうでもしないとやってられないわ。早く片付けましょ」


「そうだな…そうしたいのはやまやまだが、俺の全力でも致命傷になってない。なにより不意打ちだったってのに」


「そりゃ頑丈ね」


 3人ともいつものように振舞っているが、それぞれ内心が穏やかではなかった。

慣れないイレギュラーへの対応による緊張か、それとも怒りか


 ミシッ


 壁に埋まっていたオーガの周りの壁に亀裂が走る


(あの野郎いつの間にか腕が再生してやがる…)


「来るわよ」


 その瞬間、岩を砕きながら巨体が姿を現した。

その目は、次の標的である弘人へと向く。


次の瞬間———


 ドンッ!!


 床が砕けた。

そこにいたのはオーガと弘人だったが、2人とも姿がない。

双方の中心にて火花が舞う。


 ギィン!!!!


 全力で振るった剣に、衝撃が叩き込まれる。


(流石に重いな…)


 受け止めた剣を伝って骨に響く。

今まで受けたことのないような威力。


(ハルアさんが負けるわけだ!こりゃぁ骨が折れるな、だが!)

「ふっ!!」


 拳を押し返し、オーガの巨体がわずかに後退する。


「舐めんなよ!暴れん坊」


『は?きも』


『変異種オーガにパワー勝ちってマジ?』


『押し返すなんて流石ッスリーダー』


『いやこれは純粋にきもすぎる…』


『遂に人間卒業ですか』


『これがAランクの人間か』


『そうであってたまるか』


 だが次の瞬間———


 ブンッ!!


 横薙ぎに手が振るわれる


「っぶね!」


 ガァン!!


 剣で受け、空気が爆ぜる。


 弾かれたことで体制が崩れ、体がよろける。

今度はこっち側が後退させられ、間髪入れずに突っ込んでくる。


(パワーだけじゃねえ…速さも段違いだ)


 体勢を立て直す間もなく——


 ドンッ!!


 距離が一瞬で潰される


(マジで速いな……!)


 振り下ろされる拳が目の前に迫る。


———逃げきれない


 その瞬間オーガの巨体が爆発に飲み込まれる。


「私もいるんだけど。無視しないでくれない?」


『よく反応で来たな』


『普通なら反応できんだろ今の』


 炎と爆発に飲まれるオーガを見て、弘人は誰の魔法か理解した。


(今のは澪の魔法か)

「悪い、助かった」


「感謝なさい」


 その二人を見て桜が灯里に声をかける。


「灯里ちゃんあの事をお伝えしたほうがいいかと」


「そうだね、伝えよっか」




「弘人さん!!」


 後方から桜の声が飛ぶ。


「そいつ、他のモンスターを捕食して強くなります!それと——」


 一瞬、言葉が詰まる。


「咆哮に気をつけてください……!体が少し硬直します」


「は?」

(何言ってやがる…魔物が魔物を捕食なんて聞いたことがねえ。でも嘘をついてる感じはない、というかつくメリットがない。だが、もし本当なら面倒どころじゃねえぞ…)


「どういうこと?詳しく教えてほしいわ」


『何を言っておられる?』


『初耳案件』


『そんな弱肉強食みたいなシステムあるんすか』


『あるわけねえだろ』


 澪が当然の疑問を挟む。コメント欄も聞いたことのない事例に似たような反応が多くなる。

がしかし、質問に答えるよりも前にオーガが立ち上がる。


「マジでどういう耐久力してんだ?丈夫すぎやしねえか」


「へぇ…もう回復してる。結構威力上げたんだけど…治るのも他のより早いわね」


「やっぱそうだよな…2人もそんな余力n——弘人さん!治療終わりました!」


 ハルアの怪我が重傷だと判断し、残った戦力で討伐する必要があると弘人は踏んでいたが、詩織たち2人での治癒が治癒速度を上げ、早々に戦場に戻ることができた。


「間に合ったか!よかった」


「玲ちゃんのおかげです。私よりも早く、そして一緒に治療してくれたことが何より重要だったかと」


「いえ、それほどでは…」


「謙遜する必要はないさ。とりあえず奴の情報は共有されてるか詩織」


「はい、ここで起きたことは一通り把握してます」


「ならいい。全員でやつを討伐する。この感じなら俺たちだけでも討伐できるが早めに終わらせたい。事が事だ、4人を勝手に帰すわけにもいかん」


「了解です」


 ハルアの怪我はすでに完治していたが、まだ目を覚ましていなかった。

そのため、異常が起きてるダンジョンで人を背負いながら地上を目指すことになる。

1人は戦えない状態で戻るのは危険だと判断した。


『流石詩織ちゃん!なんでもできますやん』


『玲さんにも感謝だな』


『犠牲出なくてマジでよかった』


『え、勝てるんすか?3人すよ』


『俺たちのリーダーが負けるわけない』


『ダンジョンで異常が発生した以上ってな』


『おもんな』


『死んで来いじじい』


『残るのが最善だと思うよ』


『上層も異常起きてんならそれがいいと思われ』


















 この判断は通常なら安全面を考慮しても最善となる。

今の状況でも、反対するのはアンチくらいのものだろう。

コメント欄ですら反対の声が出ないくらい皆が納得していた。

しかし、彼らは忘れていた。


変異種であるオーガに、魔法を中断させられたことを


彼は自分の身が危険に晒されていたことを理解して行動していた。

通常個体よりも知性を持つオーガの視線は、弘人を射抜いていた。

そのまま突撃するかと思われたが、危険だと判断し狙いを変更した。

次の瞬間、その瞳はゆっくりと別の方向へ滑る。

狙いは、より弱い方へ向く。


そこには寝ているハルアと

今回の戦いに一切介在していないコウがいた




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