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明宵  作者: 水嶋
薄暮

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38/92

鑑賞会

「遂に待ちに待ったこの時が来たな!」


「遂にあわよくば誰か不祥事でも起こしてお流れにでもならないかと期待していたがこの時が来てしまったな」


年が明けて最初の始業式の後大地に話しかけられていた


あの夏から色々衝撃と言うか激動と言うか、とにかく他の事を考える余裕も無く過ごしていたらあっという間に年が明けてしまった


照陽の元へは脅されている事も有り真面目に月一回、最初の金曜日に通っていた


そして俺の中ではもうすっかり忘れ去られ無かった事になっていたあの撮影した映画が公開となって世間を賑わせていた


シソ・ゴジラや劇場版迷探偵オジナン、はたまた踊れ大捜査線を越えるか等の下馬評がネット記事で繰り広げられていた


「何か…CMで見たけど…あれ、ある意味煽ってないか?」


「そうなんだよな…一応希望としてはCMとか予告に俺の顔は出さないでくれって頼んでたんだけど…」


確かに顔は写っていなかった


いなかったのだが…


顔の部分が見切れていて『星川のこの先の運命を左右する少年との出会い!?』などとふざけたテロップがデカデカと流れていた


これ全力で検索されるパターンじゃねえか…


やりやがったな布袋…いや、これは広報の策略か?どの道俺は意図せずちょっとした話題になってしまっていた


しかもご丁寧にホームページなどでも人物紹介の俺の所は黒塗りで?マークがつけられていた


流石話題作りと情報操作のプロ集団だなとある意味感心していた


「俺も思わず検索しちゃったもん」


「お前は1番中身の正体を知ってる人間だろうが…」


「皆の予想が見当違いで面白いんだあ」


そう言って予想される子役などの画像一覧を見せて来た


「そりゃ俺は一般市民だからな。簡単に分かられてたまるかってんだよ。変装もしたししてるしな」


今もあのメガネをかけていた


「まあ、後はこの撮影の頃より身長も少し伸びたよな?」


「まあ、お前程じゃ無いがな」


俺も身長は少し伸びたが大地はもっと伸びてイケメン街道まっしぐらと言った所だった


見せられた子役より大地の方が遥かにイケメンだと思うが…


この先大地は数々の女と浮名を流す事になるのだろうか…


そんな事をぼんやり考えながら大地を眺めていた


「だからさ!今度の連休に観に行こうよ!皆で」


「そうだな…って何!?観に行く!?皆で!?」


ぼんやり考え事をしていたので適当に相槌を打っているとシレッととんでもない事を言っていた


「よし!決まりな!じゃあいつもの…テルヒとシズカの4人でな!」


「おいおい…何バーの常連客みたいな事言ってんだよ…」


「そうだなって言ったよな?」


「まあ…言ったかも…?」


大地が女を数人侍らせてベッドで乱痴気騒ぎをしている姿を想像してしまいぼんやりしててついうっかり…などとは流石に言えなかった


「テルヒとシズカ…驚くだろうなあ!まだ出た事言って無いんだろ?」


「この先も言う気もないし自分で見る事も無いし、ましてや一緒に見るとも思って無かったぞ?」


「でも変装して偽名使ってセリフも無いんだよな?気が付かないんじゃないか?」


「まあシズカなら…でもテルヒはなあ…昔から俺の顔見てるからなあ…」


「じゃあ賭けようぜ!バレるかバレないか!」


「その賭け誰得?…」


「俺が面白い!」


「じゃあ俺はテルヒにはバレるに1万ペソ」


「じゃあ俺は2人にバレ無いに一万ガロン!」


「それ通貨じゃなくて単位だから…37,854リットルって何よ」


「あはは、流石計算早いな!」


「因みに1万ペソは大体2万ちょい位だな」


「なんだなんだ?安いと見せかけて倍以上ボッタくるのか?中々の悪徳業者だな…」


「情報を制する者は世界を制するってな」


「何か分からないけど…世界と戦ってるんだな…」


「じゃあお前シズカと同じクラスだからシズカに伝えといて!俺はテルヒに伝えとくから」


「はいはい…」


結局俺は相変わらず押しに弱く頼まれてしまった


しかし照陽はまあ暇だろうが静風は何か外せない用事が有るかも…


「うんうん!行く行く!あの映画観たかったから!楽しみー!」


と一抹の望みもあっさり二つ返事で打ち砕かれた






○○○○○○○○○○





「はぁー!泣いたあ!」


約束通り4人で映画鑑賞し、映画館を出た後も静風はハンドタオルを目に当てていた


「やっぱりあの少年だよね、キーマンは」


「…」


俺は無言を貫いた


まさかあんな重要な役どころとは思わなかった

言われるままここに立ってとかこっち見てとかしてただけなんだが…

BGMの音楽や編集ってある意味恐ろしいなと思った


「あの金髪凄いよね!?地毛かなあ?髪傷みそう…多分ウチらと同じ位の歳の子だよね?学校とか大丈夫なのかなあ?」


そんな訳あるか。カツラだカツラ


「でもさあ、あの子が死んで…星川がキスする所…泣けたなあ」


「あれな、大切なのは自分の理想の形に準備して整えられて作られた過去の思い出じゃ無くて常に今でしょ?って奴な」


「…」


何だか照陽がじっとこっちを見ている…


「その後星川が吹っ切れて…制裁してくんだよなあ」


「そして回を重ねて技術の向上って…星川カッコよかったなあ!」


「…」


照陽の視線が痛い…


「でも…結月(ユヅキ)って誰だろう?知ってる?ダイチ」


「さあ…俺は知らないなあ…」


大地はとぼけてくれていた


「あれってさ…」


「ん?」


「セイヤでしょ」


「えっ!?」


「…」


「あはは、バレちゃったな」


大地は大笑いし、俺は無言で固まって照陽は少し怖い顔をしていて…


静風だけが普通に驚いていた





○○○○○○○○○○





その後夕方に近かったので解散となり、俺と照陽は方向が同じだったので並んで歩いて帰っていた


「去年言ってた職業体験ってコレ?」


そう言って照陽は購入していたパンフレットを見せていた


「まあ…そうだな、何か成り行きで?」


「ふうん」


「去年の夏にな、マユと行ったAラッシュのライブで声かけられてな…で、何か知らんがマユとそのプロデューサーと密約が交わされた様でな。俺は言わば売られた身と言う訳だ」


「へえ…」


大体嘘は言って無い

大地の親に招待された…は口が裂けても言わない


「でも…マユさんもセイヤもAラッシュなんて殆ど知らなかったんだよね?そもそも何でライブに行く事になったの?」


「まあ、あれだな。マユの知り合いから当日行けなくなった人から譲り受けて行く事になってな…」


「そうなんだ」


まだ照陽は麻由の元に通ってるから聞かれても矛盾がない様にこの後口裏を合わせとかないと…


「でも…どの辺でバレた?声出してないし顔もそれ程映って無かったと思うけど…」


「ピアノ」


「ん?」


「弾き方がセイヤのピアノだった!」


「へえ…何か癖とか有るのかな?」


ピアニストになる気もないのにその辺は麻由からみっちり熱血指導で矯正されていたが…


「ずっと隣で弾いてたから!音で分かるの!」


「多分調律はしっかりしてたから家のピアノと変わらないと思うが…」


「まあ後はやっぱりセリフだよね。まんま言ってたし星川!」


「だから俺のセリフじゃ無いって言っただろ?」


あの時はまさか照陽と見る羽目になるとは思いもよらなかったから油断していたが、今後は気をつけよう…


てか、今後!?この先は無いぞ…

俺も何だか少し気が動転してるんだな


「セイヤは…この先どうするの?」


「この先?」


「役者とか…芸能人になるの?」


「やるか、なるか、なってたまるか。俺の平穏無事の生活の夢の対極の世界だろうが」


「そうなんだ…でも」


「でも何だよ」


「何か…向いてそう…面の皮が厚いし…しれっとした顔して平気で嘘つけるし」


「ああ、黙ってて申し訳有りません、すみません、ゴメンなさいね、騙すつもりは無かったんだが騒がれたく無かったし半無理矢理やらされた事だったからな!」


少々やけっぱちにそう答えた


「何か怒ってる?褒めたつもりなんだけど」


「誰が聞いても100%悪口だろ、それ」


「でもなあ…セイヤには何か大きな夢や目標持って頑張って欲しいなあ」


「穏やかに平穏無事な生活も大きな夢だろうが。簡単に見えてそれを叶えるのがどれだけ大変か…うちの家庭を見たら分かるだろ?」


「あはは、まあそうなんだけどさ…セイヤには…キラキラ輝く世界を目指して欲しいかな…」


「キラキラねえ…」


「その力に引っ張って貰って…私も前に進んで行きたいなあ」


「まあ…結局は他力本願かよ…お前は昔から俺の真似して後くっついて来て…変わらんなあ」


「あはは、そうだね」





そう笑っていた照陽の笑顔はどこか寂しそうだった


賭けには勝った様ですが嬉しく無い星夜ですかね


大地は1万ペソ払うんでしょうか?

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