97話
十五の時だった。その日は、王の視察に合わせて国の外れ、南の烈仙地方首長の元へ来ていた。タルカンとの国境が近い。警戒心をギンギンと漲らせていると、右腕がズクズク、と疼く感覚がした。
(……また)
それは初めてのことではなかった。最近、強い魔力を発する瞬間によく、腕は疼き、熱く灯っていた。しかし、今のように待機状態から疼いたことはなかった。
違和感を抱きながらも、警戒心は怠らない。首長と会談する王を視界に入れつつ、建物の外に目を光らせる。リュウの視力は、生まれ持って人一倍良かった。国境付近に人影を発見した。
「南方に敵兵! 数、百超! 導士もいる!」
リュウの伝達に、首護隊はすぐ応えた。
「陛下、後ろへ!」
「警戒態勢!」
「タルカン兵だな!」
首護隊の陰に入った王、慧燿は、烈仙の長を見て呟く。
「視察が漏れてるようだな」
「……一体、どこから」
「私が今日の視察を伝えたのは護衛以外には、お前にだけだ」
「……私には、何のことか」
「まあ、今は良い。お前の処遇は後だ」
慧燿は、首長の関与を疑って確信しているようだ。しかし、今はここを切り抜けるのが先決だった。
王が護衛の後ろについたことを見て、リュウは外へ出た。隊列を組んだ敵兵が、一斉に弓を構える。敵将の口が「撃て」と動くのが、はっきり見えた。リュウは自身の魔力を最大限放出し、竜巻を起こした。
飛んできた矢は、向こうの導士の力だろう、風に乗せて稲妻のような速さで飛んできた。しかし、こちらの魔術の威力さの方が、遥かに強大だった。リュウの竜巻に飲み込まれ、矢は全て、こちらに届かずに地に落ちた。
向こうが第二撃を発するより、リュウの次の方が速かった。地面の土がぼこぼこと盛り上がり、上へ積み重なりそびえ立っていく。
「まだまだァ!」
高く盛り上がった土の塊を、敵兵たちの方へなぎ倒す。土に足を取られ、身動きの取れない兵たちの情けない声が、耳元まで届いた。
「おでましか」
軒並み兵が倒れるのを見て、導士が前線へ出てきた。空気がビリビリと肌に刺さる。相当な実力者とみえる。それに呼応するように、リュウの腕の疼きは激しさを増す。
「やり甲斐ありそうじゃねぇか」
導士が魔術陣を展開した。その者が繰り出す攻撃は、強烈だった。今までこんな使い手と遭ったことはない。何とか食らいついている内に、リュウの腕の痣が、強く発光した。
そこから先は、あまり覚えていない。




