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純情白雪姫  作者: 祭歌
第一部 あなたと私、はじまりの祝宴
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婚礼、そして婚礼前のひと苦労 2

『それでは失礼して』




 そう言うが早いが、するりと手首を取られた。

 優しく一撫でされ、手の甲に口づけを落とされる。びくっ、とアルマリアは震えた。やはり、少し怖い。けれど。

 硬い手は次に頭の後ろへまわり、首筋を触るようにして固定される。一気に距離が縮まり、おとがいを掴まれた。くい、とそのまま上げられる。


 目の前に、端正な顔があった。


 ヴィルヘルムは奇行で忘れられがちだが、とても整った容姿を持っている。思わずくらりとくるほど。

 身体が熱い。いつの間にか彼女は抱きしめられていた。


『で、でん、か……』


 か細い声で王子を呼ぶ。何ですか、と優しい声が返ってきた。どくんっ、と心臓が跳ね上がる。これはなに。

 おとがいを掴んでいた手が、頬を撫でる。慈しむように。

 ふ、と唇が触れた。その瞬間身体中を甘い電撃が奔った。沸騰する。

 ちゅ、と深く唇が合わさる。息が出来ない。どこかぎこちない動きで、口づけは交わされる。

 食むようにヴィルヘルムの唇が動いた。ちぅ、と吸われる。心臓が破裂しそう。これが、口づけ?

 不意に熱いものが唇をこじ開けた。その、ヴィルヘルムの舌に歯列を蹂躙される。口内を舐め回される。


『っあ、んむ……っ』


 堪えきれずアルマリアは喘いだ。だが、唇は、舌は、離れない。

 深く貪られ、息は浅くなる。ちゅ、ちゅぱ、と舌先が触れ合い、音が鳴る。


『んぅっ……あ、ん』


 もぞりと唇が動いた。ふっと、漸くそれは離れる。はっ、はぁっ、とアルマリアは荒く息をついた。だらしなく唾液が漏れそうになる。が、目を瞑った瞬間、口を食まれた。文字通り、唇、を。

 震えるアルマリアの唇をヴィルヘルムの舌先がゆっくりと、丁寧に舐めていき、唾液を食べた。


『でん、か……っ』


 アルマリアは潤んだ瞳を王子に向けた。するとどこか熱を帯びた眼差しが返ってくる。


『姫……』


 囁くように名を呼ばれる。

 彼は再び、アルマリアに深く口づけた。ただし、今度は舌先は入ってこなかったが。

 けれども、また甘い痺れに襲われ、アルマリアはふらりとへたりこんだ。


 ああ。

 これは何。

 この心臓を壊そうとする、衝動は。



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ひっそりこっそり実のない小話。(お返事は更新報告にて)
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