表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
120/148

十二章 皓緋・九

家に入り土産のアイスを皆で食べ一息つくと、五時近くになり、今日はお開きとなった。

彩音との別れ際、俺は電話番号の交換をした。

彩音はそんな事を言われると思わなかった様で驚いていたが、今後の付き合いもあるから必要だと思うと説明すると、納得した様で交換してくれた。

車は俺と父親との二台で来た。

父親とその婚約者と一緒に乗るのはちょっとな、と思うので別々で来た。

父親達もその方がいいだろうし。

俺は二人と別れて車に乗ると、彩音にメッセージを送った。


『今日は楽しかった。ありがとう。これからもよろしく』


さっきはろくに話せなかった分、メッセージを少しでも早く送っておきたかった。

とは言え、内容は当たり障りのないもの。

俺に慣れてないなら、慣れてもらうだけ。

それならばこういう小さな事から始めればいい。

スマホが振動し、彩音からの返事が来た。


『こちらこそありがとうございました。これからよろしくお願いします』


当たり障りのない言葉だけど、彩音からメッセージが返って来た事が凄く嬉しい。


『嬉しい。ありがとうな』


俺はすぐにまた返事を返した。

偽りない、俺の正直な気持ちだ。

俺はスマホを握ったまま、彩音からのメッセージをずっと眺め、心の中で文字を読んで繰り返す。

何度も何度も読んで、繰り返す。

繰り返す度に、心がじんわりと熱を持ち、高揚する。

今、俺は彩音と逢えた。

同じ時間軸にいて、話し、触れ合えたのだと。

この世界に産まれて、二十二年の時を過ごしてやっとモニター越しじゃない、生身の彩音に出逢う事ができたんだ。

嬉しい。本当に、本当に嬉しい。

今はその感情しか湧き上がってこない。

親に愛情を注がれていても俺の心は常に飢えていた。

親からもらった幾千もの愛情の籠った言葉よりも、たった一言俺に向けて言う彩音の言葉が、あの砂の世界——静欒さいらんの地よりもカラカラに渇き飢えていた俺の心を満たし潤した。

俺は今日交わした彩音の言葉や表情をもう一度、もう一度と思い出しては飢えた心を満たす。

まだまだ彩音を思い出していたいが、いつまでもここにいるわけにもいかないので俺はシートベルトをつけ、エンジンをかけ、コインパーキングを出発した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ