十二章 皓緋・四
俺は目が覚めると赤ん坊になっていた。
父親と母親らしき人物が、破顔して俺を見ていた。
「本当に可愛いなあ、皓緋は。顔立ちは莉里夏に似てるかな?」
「どうかしら? 見る人によって違うと思うけど。でも、はっきりした顔立ちかしらね?」
等と話している。
ここは、おそらく俺達の家なんだろう。
そんな雰囲気を感じる。
どうやら俺は無事、彩音のいる世界に転生した様だ。
彩音はまだ、この世界にはいない。
俺は彩音と出会うまで、この世界を知り、彩音を守れるだけの力をつけなければいけない。
ただ、赤ん坊なのに精神は成人というのは中々大変かもな。
だが同時に今まで感じたことのない、高揚感も感じている。
未知の体験に心が震える、というやつかも知れない。向こうにいた時はそうそう感じられなかった気持ちだ。
ああ、それにしても彩音だ。
彩音、彩音。
俺の可愛い彩音。
早く彩音に逢いたいなあ——。
っくくっ。
お前、本当にあの嬢ちゃんにイカれてんのな。
…………。
この聞き覚えのある口調と声は……。
ひでーなー。
俺を忘れるとかはナシだぜ、皓緋。
「爛熯か」
ご名答。
俺は辺りを見回すが、爛熯の姿はない。
まああったら両親が驚くだろうな。
ああ、俺の姿はそこには無いぜ。
直接お前に話しているからな。
「そうか。わざわざ俺の様子を確認するとは暇なのだな」
ははっ! そんな訳あるか! 俺はとても忙しいから無駄な事に時間を割く様な事はしない。今回は愚弟共の仕事の確認だ。それと、友達に会う時間を惜しむ様な男じゃないんでね、俺は。
「そうか」
どうやらまだ俺は爛熯の友達であるらしい。
そうだぜ。
ま、そうちょくちょくは来れないがな。もし何か助けて欲しい事とかあれば強く俺の名を呼べ。ちゃんと来てやるよ。
「それはないな。俺には払える対価など無い」
ああ、そんなの気にすんな。友達から対価を取ろうとは思わねえよ。内容にもよるがな。それにお前には払える奴がいるだろう。ソイツにツケときゃいいんだよ。
「払える奴? ……ああ」
春詠。いや、今はハルか。
そう。だから気にすんな。使えるモンは使っとけ。じゃあな。
一方的に言って、爛熯の声はぷっつりと消えた。
「皓緋、随分お話してくれたけど、何か珍しいものでもあったのかな?」
「さあね? でもこの子にとっては全てが初めてだものね。ふふ」
両親が、慈しみの表情で俺を眺めている。
話すと言っても、勿論あーとか言う発声だけだ。ただそれでも両親は嬉しく感じるものなのだな。
ん、ん……。駄目だ、眠い……。
俺は唐突に眠くなり、睡魔に逆らう事などできず、意識を落とした。




