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十二章 彩音・六

庭園から出るともうそこには全員いた。

「あら遅かったわね。何してたの?」

私を見つけたお母さんに訊かれた。

「あ、えっと、ちょっとトイレに……」

「そう。これで皆揃ったし、帰りましょうか」

「そうね、今日は楽しかったわ。ありがとうございました、お義兄さん、お姉ちゃん、彩音ちゃん」

「こちらこそ。また来月、楽しみにしてるよ」

「はい、よろしくお願いします」

頼子さんとお父さん、お母さんが挨拶をして少し雑談してから私達は別れた。

「彩音ちゃん、またね」

皓緋さんが私に声をかけてくれた。さっきの事なんて無かったように、自然に。

私はお母さんの方に寄りながら「はい。ありがとうございました」と言って頭を下げ、直ぐに後を向いて先に歩き出したお父さんの後を追った。心の中は罪悪感やら何やらでぐちゃぐちゃだから、そう言うだけでもういっぱいいっぱいだった。


家に着き、休んで雑用したりしたら夕飯の時間になって、お風呂に入って、ベッドで横になって、今日の事でうだうだぐちゃぐちゃな気持ちを紛らわす事も兼ねながらスマホを弄っていたら。


「んんっ!?」 


メッセージの通知が来てスマホを顔面に落としそうになった。

そのメッセージは……皓緋さん、だった。

私は起き上がり、スマホを握ったままドキドキした。嬉しくてドキドキではなく、嫌な緊張でドキドキだ。

……本当なら私から不愉快にさせてしまった皓緋さんにメッセージを送るべきなんだけど。

まず私から皓緋さんにメッセージなんてハードルが高すぎる。だって、あんなイケメンにたいした用もなくメッセージを送るなんて私には無理。今回は謝罪っていう正当な理由があるけど、それでもすぐに送れる程の度胸はない。だから、悶々としてたんだけど。

私はスマホを握ったまましばらく悩んだけど、メッセージを見る事にした。結局今か後かなだけで見なきゃいけない。私は意を決してメッセージを見た。


『今日は怖がらせてごめん。本当は電話で言いたかったけど、それだと彩音ちゃんをまた怖がらせるかもと思ってメッセージにした。本当にごめん。じゃあまた』


皓緋さんのメッセージを見て、私はすごく恥ずかしくなった。確かに皓緋さんも悪い。だってイケメンすぎるのに、たいした容姿でもない私に構ってきて。こっちは女子校育ちなんだから、もっと距離を取って接して欲しい。むしろ構わないで欲しい。

けど、私も悪い。

構って欲しくないならちゃんと言わないといけない。して欲しくない事をちゃんと言ってない。ただ、本人を目の前にしては言えないけど。イケメンすぎて。

だから……。


『こっちこそごめんなさい。怖かったわけではないです。正直に言います。私に構わないで下さい。皓緋さんのことは嫌いじゃないです。顔を見て話せないのは、皓緋さんがカッコ良すぎるからです。見てるこっちが恥ずかしくなるので無理なんです。だから、そういう理由なんです。それでは失礼します』


トン、とスマホを軽くタッチして私の正直な気持ちを送った。

ちょっと失礼な文面かもしれないけど仕方ない。もう勢い、勢いで書いて送った。

とりあえずやる事はやった。

少し軽くなった胸のモヤモヤにほっと一息ついてまた横になろうとしたら、皓緋さんからのメッセージの通知が。早っ。トン、とスマホをタッチする。


『返事ありがとう。嫌われていない事がわかって、とりあえず安心した。

けど、俺の容姿が良いのは慣れて欲しい。いや、慣れろ。これからも会うんだからな。それじゃ、また』


は?

何だろう、この上から目線は。

こっちは構うなって言ったのに、この文面だと構う気満々もしくは俺は気にしないからお前も気にするな、て所かな……?

そう解釈した私はメッセージを打ち始めた。


『ご連絡ありがとうございます。

私は構わないで下さいとお願いしました。だから別に皓緋さんに慣れる必要はどこにもありません。もう一度言いますが、構わないで下さい。では』


メッセージを送って、はっと一息吐く。

ここまで言えばもう大丈夫だよね? 理解してくれるよね? そもそもこんな小娘に、あんなイケメンが構う方がおかしいんだからね。もっと自分と釣り合う人を構ってあげて欲しい。喜ぶ人は絶対にいるから。

ただ、こうなると、もう気軽に頼子さんの所には行けないなー。勿論新婚さんなんだからそう頻繁に行くつもりはないけど。半年に一回、行くか行かないかかな。あの人だっていつも家にいる訳じゃないだろうし。でも変に構われている今を考えるとちょっと……。ま、いいや。とりあえず今はもう寝よう。ちょっと早いけど寝て落ち着こう。

私は電気を消すために、枕元のリモコンを取ろうとしたとき。スマホから通知音が。

まさか。

いや、でも……でもこの通知音はあの人しか設定していないので……。

うーーーーん。

目を瞑り、眉間に皺を寄せながら、メッセージを見るための気力をチャージする。

よし。

私は目を開け、スマホをタッチする。


『却下だ。

俺はお前を構いたい。慣れろ。おやすみ』


は?

何それ。

さっきのメッセージも思ったけど、何でこんな高圧的なの!?

私、なんかした? してないよね? だって会ったの二回だけだし、しかもそんなにたいした会話なんてしてないよ?

変。

変だ、あの人。

全く話が通じない。

ううん、通じてるけどそれを拒否してる。

私の気持ちはどうでもいいと。

なんなの、一体なんなのよあの人!

イケメンなら何でも思う通りになるとでも思ってんの!?

ムカつく、信じられない!!


「ねえ、何なのあれっ! しんっじられないっ! 聞いてるの『  !』」


私は言った言葉にはっとした。

え?

私、誰に言ってるつもりだったの?

ここには私だけなのに。

誰かがいるつもりだった?

誰、が? 誰……?

……最近こんなことばっかり。

私一人なのに何故か『誰か』がいて、その『誰か』がいるのが当たり前のような……。

いつから?

そう、皓緋さん達と会ってから、こんな事が起き始めた。

今までこんな事全然無かったのに。

…………。

もう寝よう。

寝て色々忘れよう。忘れられるものは。

はぁ。

私は電気を消して、布団をかけて眠りについた。

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