十二章 彩音・一
テーブルも綺麗にしたし、お茶の準備もバッチリ。
コーヒー、紅茶、緑茶と全部揃えてあるし、お茶菓子も洋菓子和菓子とどちらもある。
お昼のピザも注文したし、あとは叔母さん達が来るのを待つだけなんだけど……。
「あんた何そんなに落ち着かないのよ。て、まあ気になるのは皓緋君よね。あの子、カッコいいもんね〜」
「ちょっ、何言ってるのよ! はっ、初めて会う人達なんだから緊張ぐらいするわよっ!!」
「はいはい、そういうことにしとくわ〜」
あははーと笑いながら、お母さんは居間から出て行った。
「もうっ、何、最悪なんだけどっ!」
イラっとくる笑いながらも図星を指されて、私の顔に熱が集まる。
時計を見るともうすぐで十一時になる。
「昼頃には着くって言ってたから、もうそろそろかなぁ」
私はとりあえずキッチンに行き、椅子に座った。
「……そりゃあ気になるわよ、色々……」
私はテーブルに置いてあるスマホの中の画像を見た。
そこにはちょっとぎこちない表情で写っている三人がいた。
一人は叔母さん——、お母さんの妹の頼子さんと頼子さんの旦那さん(予定)と旦那さんの子供が写っている。
頼子さんが再婚するので、頼子さんの旦那さん(予定)とその子供がうちに挨拶に来るのだ。
子供といっても二十一歳なので、子供だけど子供ではないかな。
お互いバツイチで、頼子さんの方は子供はいない。
頼子さんには私もお世話になっているので、今度は良い旦那さんだといいなあと願ってる。
話で聞く限りでは優しくて良い人っぽいけど結婚したら豹変してモラハラに、とかいうのがあるからね。頼子さんの所はモラハラじゃないけど元旦那さんの不倫が原因。押しに弱い人だったらしく流されて……だったらしい。
それにしても連れ子の皓緋さん、かっこいい、よね……。
頼子さんも『こんなイケメンが息子になるなんてどうしよう!?』とか言ってたし。
明るい茶色……うーん、金茶色ていうのかな? の髪の毛に、それよりやや深めの茶色の目。
顔は優しい系ではなく、キリッとした精悍な感じのイケメンだ。
「ゔっ……あらためて見てもイケメンだ……てか、この人が義理の従兄弟になるとか信じられない……」
親しくなるかどうかはわからないけど、それでもこの先親戚付き合いで何回か会うことにはなるはず。
もうこんなイケメンが従兄弟として『いる』というだけで、私にとっては大事件だ。
しかもたった一人の、だ。
お父さんは一人っ子なので、父方のいとこなんていない。
お母さんは頼子さんしかいなくて、子供はいないから母方のいとこもいない。まあもしかしたらこの先できるかもしれないけど。
「でも、んん〜、静賀さん、んんー、どっかで見たような……でもこんなイケメン一度見たら忘れないし……気のせい、かなあ……?」
そう。
初めて静賀さんの画像見たとき、イケメンだ! と、なんかどっか見たような? というわけわからない感想を持ってしまった。
でも静賀さん程のイケメンなんてそこらにいるレベルじゃないから、見たなら絶対覚えてると思うんだよね。何だろう、このもやっとしてすっきりしない感は……。
スマホの画像を拡大したり縮小したりしながらもやもやしていると、背後からインターホンのチャイムが鳴った。
「うわっ! は、はいっ!」
音にびっくりしながらも、すぐにモニターで確認する。頼子さん達だ。
「こんにちはー」
ちょっと緊張した声の頼子さんがモニターに映る。
「こんにちは。入って入って! お母さーん、頼子さん達来たよー!」
二階に声をかけてすぐに玄関のドアを開ける。
頼子さん達は門を開けて入った所だった。
「彩ちゃん元気だった? あ、これお土産」
頼子さんが笑顔で有名洋菓子店の名前の入った紙バックをくれた。
「わあ、ありがとうございます! うちは皆元気だよ」
私は紙バックを受け取り答えた。
そこで頼子さんの背後にいる二人の存在にはっとして、ちょっと恥ずかしくなった。
「こんにちは、初めまして。彩音ちゃん、でいいかな?」
頼子さんの旦那さん(予定)の静賀さんに挨拶された。
「あ、は、はいっ!」
「ふふっ、やだ彩ちゃん。緊張してるの?」
「あ、当たり前じゃない、頼子さん!」
初対面の人なのだ。緊張するのは当然でしょう。しかもイケメンがいるのだ。
「いらっしゃーい、頼子。あんた達、早く家に入っちゃいなさい。彩音もほら、お茶の用意して」
「わ、わかってるよ。あ、ど、どうぞ」
私は顔を赤くしながらも頼子さん達を中に入る様案内する。
頼子さんはさっさと入り、続いて静賀さん、静賀さんの子供の皓緋さん。
静賀さんはにこっと笑って行き、皓緋さんは「ありがとう」と言って入って行く。
私は返事もできず、赤くなって俯きながら小さく頷いた。




