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白竜に選ばれた僕は、不運少女を守るため“負けない力”を手に入れた  作者: Mです。


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【綻びを探す者】

 教室──輪を乱す一つはいつだって悪の象徴で。

 ──そんな悪に集る暴力はいつだって正義の味方だ。


 そんな様子を俺はただ──見ていることしかできなくて──


 だけど、そこに現れたノアの保護者はたった一人で──

 悪役を演じ、その正義という暴力に立ち向かう。



 「さて──舞台は整った──ここでぼくは何をすれば観客を喜ばせられるのだろうか──お前たちを満足させられるのだろうか」


 リエンと名乗った女性は周囲を見渡しながら──


 「“富”──富豪を“演じ”──全くぼく側の利益も理解も届かない多額の示談金をばらまけばいいのか──」


 右手にはいつの間にか大量の札を握りしめ頭の上に掲げている。


 「それとも──君か、ノアと大きくもめたのは──」

 頬にうっすらと刃物がかすった傷のある女子生徒。

 その机に右手を置き、顔を覗き込む。


 「君の親は──?」


 女子生徒は口を開けず、瞳が──一人のさきほどの男の一人を見る。


 「──確か、大手の自動車工場に勤務をしていたが──自立し起業し今は小さな会社で働いている……だったかな」


 「お前──なんでそんなことを」


 「“権力”を握るには──周囲の事を知る、情報を常に仕入れておくべきだ──」

 スマホを取り出し──どこかへと電話をする。


 「──ぼくだ、例の会社は──そうか、思ったよりも安くすみそうだな」

 「──大手企業から抜けた時に、君が得意の取引先として契約している会社があったね──そこはもう、“ぼくのモノ”だ──」


 「何を言っている──」


 「──ぼくの一言けんりで、その契約を断ち切ってもいい──」


 「ふざけるな、そんな金が──そうすることの意味にお前になんのメリットが──」


 「──あるさ、この場でぼくが“悪役”を“演じる”のなら──おまえらごときに多額の示談金と頭を下げるという行為まで強要されるくらいならね──」


 女は言葉通りに“演じ”続けている──

 富、権力──そのすべてを使い──


 「それとも──」

 「ノアが多勢のお前たちに立ち向かったように──そんな正義気取りのお前たちに武力で立ち向かう──そんな英雄あくを“演じ”られれば“名声”を得られるか?」


 ノアの机にあった、今回問題となったハサミを手に取り──

 刃の先をサーベルでも手に持っているかのような持ち方で男に向ける。



 「さて──ここまでのぼくの“演技ことば”に申したいことはあるのか?」

 「誰でもいいよ──聞かせてくれないか?」


 リエンという女性が周囲を見渡す。

 誰もが空気に飲まれかけている。



 「──守りたいんじゃないんですか?」


 悪役を演じる女性の瞳が俺に向く。


 「お、おい、トウカ──」


 こんな場で意見するのは不釣り合いな人間。

 ナギサが俺にたぶんそう告げている。



 「そうか──君がトウカくんか」


 「俺も──正直、今回の件については──ノアを守るあなたの行為は正しいし、正直──あなたの言い分は正当だと思ってます」

 「でも──あなたがそんなノアを守ろうとするように、事実はどうあっても親が子を“守りたい”という感情は平等であるべきじゃないですか」


 「なるほど──面白いな、少年?」


 完全にリエンさんの興味は俺に向いてしまう。



 「守られるべき者が守られず──守るべきではない者が守られる──そんな舞台で少年、君はそう同じことを言うのか?」


 「所詮、俺、一人の意見など一つの都合です──あなたの今までの意見を否定するつもりはありません──それでも、あなたや俺には悪に見える、それを守るという行為は俺たちが否定するべきじゃない──」


 「それじゃ──誰が否定をする?おまえたちクラスメイトは──ノアを助けたか?そこの教師はノアを助けたか?神は──この舞台に相応しい悪に罰を与えるのか?」

 「黙っていても、誰も守ってくれない──誰も守れないのだよ少年」


 「──俺がずっと──その言葉だけを聞かされ正しいと思い込んでいるだけだとは思います──それでも──」

 「誰かを守る──というのは、その相手に暴力を振るい勝つことじゃなくて──その誰かを“負けさせない”ことなんだ──」


 「──つくづく不愉快だな──本当に面白いよ少年──不快なほど君の言葉には興味が沸く」

 「──“演じ”てみせよう──君のその言葉を全て覆すほどの“悪役”を──」


 もはや、他の者はただの観客、そう言うように俺の前に立っている。


 「君が守るそれを──このぼくが奪ったとして──君は今の言葉通りに“守った”と“負けなかった”と言えるのだろうか──」





────



 放課後──学園の校門前──


 「おい──女、ちょっと話を聞かせろ」


 毒島アゲハ──

 声をかけたのは──真解ユズル。


 ユズルのその顔だけでいうなら、この学園でもトップを競うほどの容姿。

 一瞬、顔を赤らめながらも──

 それ以上にすぐに恐怖感が勝って真顔になる。


 「お前のクラスに──結代トウカってクソガキは居るか?」


 「結代──?は、はい──同じクラス──」

 素直に答える。


 「お前のクラスは?」


 「え──?2年C組──」


 「お前の担任は──“男”か“女”か」


 淡々と質問を繰り返す。



 「男──だけど」


 「ここ最近で担任が入れ替わったりはしたのか?」


 「いえ──一年の時からずっと催稀先生でしたけど」


 「2年C組──結代トウカの居るクラスの担任教師は“男”なんだな?」


 「は──はい」


 「悪い、助かった──」


 「えっ──それだけ!?」


 イケメン男、ナンパでも期待していたのか、毒島は思わずそう叫び──

 頭を傾げながら──ユズルに背を向け歩き出す。



 「おい、そこの男、ちょっといいか──」


 すぐに別の男子生徒をつかまえる。


 「おまえ──2年C組か?」


 「──違います」


 「2年C組の担任教師は男か女か?」


 何かの綻びを探す様にその質問をくる人間に繰り返す。



 「確か──男だったと思います」


 「ちっ──助かった」



 「なぁ──あいつ、1か月ぶりの登校だったよな──」


 二人組の男子──後ろから歩いてくるマスクをした男子生徒を見ながら──



 ユズルはその二人組の前に立ち──


 「えっ?」

 その二人組を無視をする。


 「おい、おまえ──」

 マスクをした男子生徒にユズルは話しかける。


 「二年C組か?」


 「い…いいえ──」

 病弱そうな男子生徒は不意な男の質問に戸惑いながらも──


 「二年C組の教師は──男か女かどっちかわかるか?」


 「……た、確か──“女”の先生だったと思います」



 「……全部、俺が“正す”──必ずだ」


 綻び──見えないような目の前を通過する糸を掴みとるように──

 真解ユズルは“何者か”を睨むように学園を見上げる。

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