北の書44 ~クラス分けとお弁当~
アタシ達は案の定ビッグサイズのクロッフルを食べきれず、それぞれタッパーをもらってそこに分け入れ持ち替えることになった。もちろん料金はすべてアタシのおごり。愛理ちゃんは改めてごちそうさまですと申し訳無さそうだった。進学祝いなんだから堂々としていればいいのに、ホントにいい子ね。
「なんか私…どんどん不安になってきちゃった。高校生活大丈夫ですかね?」
店を出て歩きながら愛理ちゃんが呟く。次の目的地は靴屋だ、制服は学校で支給されるが登下校用の革靴は各自用意するらしく買いたいとのことだった。
「案外そんなにビビる必要ないかもよ?それに女子は共感性の生き物、学園祭や修学旅行なんかのイベントも男子より女子の方が一致団結して楽しもうとするし。今から心配してても仕方ないわ、とにかく愛理ちゃん!挨拶をしっかりすることと、ちょっとでもこれは失礼になりそうだなと思ったことは絶対に言わないこと。あと自慢ばかりにならないように話すこと。この3点を抑えておけばスムーズなスタートが切れるはずだから。」
愛理ちゃんと靴を選びながらそう諭したアタシは、革靴と運動靴をそれぞれ1足ずつプレゼントしてあげた。彼女はさすがに遠慮して靴は自分で払うと言ったが、こういうときは大人に甘えなさいとアタシが会計を終わらせた。あとで必ずお礼はしますと言って怖い顔して引かない愛理ちゃんに、アタシは
「じゃあイイ男がいたら紹介してくれればいいわ。もちろん未成年はお断りよ、アタシが警察に捕まっちゃうからね。」
と冗談めかして言うとようやく笑顔を見せてくれた。
「なんかのり子さんって年の離れたお姉ちゃんみたいです。」
「あらそう?アタシもなんだかデキの良い妹ができたみたいで嬉しいわ。」
お互いにそう言い合うと愛理ちゃんの家の前で別れ、彼女は自宅へ入っていった。日中は暖かくなったとはいえ、陽が沈むと寒くなる。アタシは早足で自宅への道を歩いた。
数日後、愛理ちゃんから電話が来た。ちょうどアタシの休憩中を見計らって電話をしてくれたようなので、そのまま応答する。
「どうだった?オリエンテーション行った感想は。」
しかし電話先の彼女の声はちょっと暗い。
『それが…クラス分けが発表されていたんですけど、小野くんとは別のクラスになっちゃいました。』
電話しながら愛理ちゃんがスマホで撮影した写真を1枚アタシに送ってくる。どうやら愛理ちゃんが1年4組で、彼女が思いを寄せる小野くんは1年3組。
「あら残念、隣のクラスになっちゃったのね。でもある意味よかったかもね。もし彼と一緒のクラスになれてたら、愛理ちゃん学校にいるとき1日中肩の力が抜けなくなっちゃいそうだから。」
アタシはこういうとき、なるべくポジティブに言い換えるようにしている。
『そうですね、それに3組と4組はいくつかの授業や行事を合同で行うこともあるみたいなので、今から楽しみです!』
「愛理ちゃんこの前高校に進学したらバイトしたいって言ってたけど、校則はどうなってるの?確認しておいた方がいいわよ。」
『一応ある程度の成績を維持している者で、かつ保護者の許可があればバイトOKだそうです。ただし中間テストや期末テストで一課目でも赤点を取った場合はバイト許可が没収になるみたいですが…。』
「そりゃそうよ、学生の本分は勉強ですからね。でも愛理ちゃんならよほどサボらなければ赤点はなさそうだから安心かな。あと確か聖修高校って弁当制だと聞いたけど、大丈夫?」
『お弁当はお父さんと相談して、前の日の晩にある程度作って朝詰めるだけにしようって作戦にしているんです。どのみち今はお父さん朝の6時出勤だから、自分のを作るついでに私のも詰めてくれるみたいで。バイトもオッケーしてくれました!』
「そう。お父さんと仲良くやってるようでよかったわ、じゃあまた何かあったらいつでも電話してきてね。」
アタシは電話を切ると、お弁当か…と思う。学生の頃は当たり前に母親が毎日作ってくれていたけど、意外と面倒くさいのよね。隙間なく詰めなきゃちょっと傾いたりしたらグチャってなっちゃうし、食中毒にも気をつけなきゃいけないし…特に夏なんかはね。大人になって自分で自分のお弁当を作ることになったとき、心の底からお母さん学生時代ありがとう、って思ったっけ。
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※この話は一部フィクションです。




