北の書45 ~女子高生の、SNSとの付き合い方~
明日は愛理ちゃんの高校の入学式。その前夜、アタシはまたしても彼女と電話していた。とっても大事なことを伝えるためである。
『明日から私、いよいよ高校生です!それでのり子さん、話ってなんですか?』
「愛理ちゃんに今の時代に一番大切な話をしておこうと思ってね。愛理ちゃんってもちろんSNSやってるわよね?」
『はい、一応。今は見るだけになってますけど、高校生からは友達との写真や動画を載せていこうと思ってます。結構ああいうのって思い出になるみたいですね、昔で言うアルバムみたいな!』
媒体が実物の写真やビデオテープからインターネット上のデータに写っただけで、SNSとは確かにアルバムみたいなものである。コメントを書き込んだり、家族や親戚とシェアしたりするところも似ている。
違うのはそのお手軽さだ。パソコンやスマホがあれば誰でも無料で入手できる上に、極論地球の反対側にいる人とメッセージや写真を交換することもできる。
「そうね、キラキラ女子高生時代の思い出はもちろん学生時代にしか作れないから、その点はアタシも異論なしよ。ただ…愛理ちゃん、これからSNSをやる場合、友達を載せるのはやめなさい。自分の写真や動画だけを上げるの、もし友達が写っているのなら片っ端からモザイクした方がいいわ。」
『えー!なんでですか?それにそんなことしたら、私の顔にモザイクしないで!って友達とトラブルになりませんか?』
愛理ちゃんの反論も最もである。
「そういうことを言われる可能性もあるわね、でもモザイクしない方がよほどトラブルに繋がるのよ。特に学生時代はね。SNSの写真って色味を明るくしたり顔の皺を消したり、いわゆる"加工"が当たり前になっているでしょ?」
『加工はみんなやってますよね。足長くしたり顔にスタンプ押したり、プリクラみたいに。』
「それが問題なのよ。よくあるトラブルは、自分だけ加工して嫌いな子は無加工…いやむしろブスに見えるようマイナスな加工をしてアップしたりすることね。」
『ひどいなぁって思うけど、そういう話チラホラ聞くかも。テレビでもこの前バラエティ番組でそういうSNSトラブルの特集が放送されていましたし。』
「でしょ?あと全員平等に無加工でアップすると、今度はなんで私だけ顔が大きく写ってるのに加工してくれないの、ひどい!ってクレーム付けられたりするわ。じゃあその子を加工すると、今度は他の子も修正しないといけなくなる…せっかく楽しい気持ちで写真や動画を撮影しても、そういうトラブルでお友達と喧嘩になっては本末転倒だと思わない?」
『確かにそうですけど…。』
愛理ちゃんには華やかな女子高生生活を送ってほしい、そのためにもきちんと駄目な理由を話さなくてはならない。SNS全盛期の今の時代だからこそ。
「それに難しい話になるけど、本人の同意なしに勝手に写真や動画をインターネット上にアップすることは、肖像権の侵害と言って立派な違法行為なの。特に顔がバッチリ写っている場合。同意だって大体は口約束だろうから、言った言わないのトラブルになるわ。それなら加工の件も含めて、いっそ友人全員をモザイクしてしまった方がいい。モザイク無しの写真データは自分のスマホにあるわけだから、友人たちと見せ合うときは本体のデータを使えば問題ないでしょ?友達にはモザイクするよって先に言っておくのはもちろん、SNSの方は自分以外全員モザイクしていることを、分かりやすくプロフィール欄に書いておけばなお良いわね。」
『でも言われてみれば、確かに有名人のアカウントがアップする写真なんて、著名人でない一般人は全部モザイクにしてますよね。あれってきちんと法律違反にならないように配慮しているんですね。』
「そういうこと。それと友達にも、自分の顔はなるべくモザイクしてくれるよう言っておく方がいいわ。余計なトラブルを回避できるし、友達に"自分を加工させる手間"をかけさせなくていいからね。モザイクは美白効果や小顔修正なんかと比べて手軽にパパッと終わるから。」
『分かりました!どのみち私、今まで写真や動画をあまり撮ってこなかったタイプなので、のり子さんが心配するほど撮影しないかもしれませんが肝に銘じておきます。それに自分の姿が載るのはやっぱり恥ずかしいから、友達に撮ってもらうときはモザイクしてもらいます。』
「それが賢明ね。あ!それからもう一つ。くれぐれも話題や注目度欲しさに、飲食店の調味料を舐め回す写真や動画を撮影したりアップロードしたりなんて絶対駄目よ!損害賠償でとんでもない額を請求されるし、刑事告訴されたら威力業務妨害罪あたりで前科が付いちゃう可能性もあるからね。」
『しませんよ、絶対しません。それに私、そういうのだけは絶対気をつけようと思ってますから!確かアルバイトの人がそういう迷惑行為するのをバイトテロって言ったりしますよね。』
「よく分かってるじゃない。ごめんなさいね入学式前なのに、どうしても心配になっちゃって。」
『大丈夫です!私も緊張して眠れなかったけど、のり子さんと電話したらなんだか緊張がほぐれたみたい。おやすみなさい。』
おやすみ、そう言って電話を切るともう23時をすぎていた。アタシも寝なきゃ。
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