北の書40 ~合格祝い~
ここでアタシから、愛理ちゃんにプレゼント。タイミング的に合格祝いってやつよね、驚きつつも開けていいですかと律儀に確認してくる愛理ちゃん。中学生なのにマナーのしっかりした子よね、無礼な人だと何も聞かず当たり前のように開けたりするし。
「あ!これって、ボディバッグですか?」
そう、アタシが愛理ちゃんにあげたのはピンク色の小さめのボディバッグ。
「え~めっちゃかわいい!良いんですかもらっちゃって!」
「もちろんよ、高校生活で使ってほしくて実用的なものを選んだの。気に入ってもらえたかしら?」
「ありがとうございます!」
なぜなら高校生活ともなればスマホに財布に家や自転車の鍵に…と貴重品を多く持ち歩くようになるものである。だからこそアタシはボディバッグを選んだのだ。
「体育の授業や移動教室なんかに、財布や鍵を誰もいない教室に置きっぱなしにする人もいるけど、不用心でしょ?それに万が一無くなったときにクラスメイトや友達を疑うようではお互いイヤな思いをするだけよ。だけどそのボディバッグに常に貴重品を入れて身につけておけば、無くしたり盗まれる心配をゼロにできるってわけよ。」
「なるほど確かに~。しかもこれスマホとおサイフをちょっと入れるくらいだから厚さもそこまでないですもんね、これなら制服の下とかに隠せそう!」
そこも大切なポイントで、貴重品を見せびらかすように持つのは盗んでくださいと言っているようなものだ。本当に大切なものはなるべく見えないように持ち歩くのが一番良いのである。電車通学する子の場合は、満員電車でスリに合わないためにもね。
「それからそのボディバッグね、2WAYなの。肩紐を伸ばせば首や肩にかけられるし、紐を短くしてウェストポーチのようにもできるわよ。ちなみにファスナーのところ以外は防水だから雨の日も安心。」
紐をいろいろ調節したり自分のスマホを入れたりしながら、ホントだ!と嬉しそうな愛理ちゃん。アタシ的にはせっかくのお祝いだからもうちょっといいブランド物でも良いかなと思ったんだけど、入学したての女子高生がブランド物持ってたらまず間違いなく同級生の反感買ってイジメられるからやめたわ、と説明した。
「そこまで考えてくれてるなんて感謝しかないです、本当に嬉しいです。大切に使います、ありがとうございます!」
さて合格祝いも渡したところで、話題を戻しましょう。
「愛理ちゃん、どういう高校生活にしたいの?大好きな小野くんは陸上でスポーツ特待生を勝ち取ったわけだから、きっと陸上部に入ると思うのよ。愛理ちゃんもこの機会に陸上部に入っちゃうなんてどう?急接近できちゃうかもよ。」
しかしボディバックを一度また元の入れ物にしまった愛理ちゃんの反応は、うーんとイマイチ。アタシの思っていた反応と違うわね。
「それが私、バイトしようと思ってるんですよ。ほら私の家って父子家庭ですから、ちょっとでもバイト代家に入れたらお父さん楽かなって…。」
なんていい子なのかしら!パパ活とかそういう不純な言葉がはびこっているこの時代に、重要文化財レベルで貴重な子だわ。
「素敵な考えじゃない、それにバイトだって立派なお仕事よ。お父さんには話したの?」
「いえ、まだです。でもお父さん今月から職場の配置が変わったみたいで、朝6時出勤で午後3時か4時に仕事が終わるようになったんです。だからよほど長時間の残業がない限り、妹のお迎えも仕事帰りに行ってくれるから、部活でもなんでも好きにやりなさいって。」
「そう…でもお父さんには家計がうんぬんの話はしない方がいいわ。バイトする目的は別の話にすり替えた方がよさそうね。」
「なぜですか?」
「中学生の愛理ちゃんはまだピンと来ないかもしれないけど、親のプライドってやつかしらね。子どもに家計の心配をさせてるって気づいたら、親心に結構ショックだと思うわよ?だからもしバイトしたい理由を聞かれたら可愛い洋服やコスメいっぱい買いたいからとでも言っておくのがいいわね。それが一番、女子高生らしくてかわいいでしょ?」
ちょうどアタシの話が終わったタイミングで、さっきの店員がトレーに蓋を乗せてデザートを運んできてくれた。
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※この話は一部フィクションです。




