北の書26 ~思春期最大の悩み クリスマスパーティの駆け引き・5~
このカフェチェーンは値段設定がちょっとお高めで、基本的に学生客は少ない。学生たちはドリンクバーのあるファミレスやファストフード店へ行くからね、だからアタシはわざとここを選んだのだけど。
「アタシがそう言うのはちょっとマナー的な側面もあるのよ。愛理ちゃんだってこれから年齢を重ねてオトナになるとね、友人・知人の結婚式に招待される機会があると思う。そういうときに白や黒はもちろん、赤や黄色など原色系の服は避けるべきなのが一般常識なのは知ってる?」
「なんとなくのイメージですけど、黒一色はちょっとお葬式っぽいですかね。白は花嫁さんのウェディングドレスと被るから…ですか?他の色はちょっとわかりません。」
対面に座っている彼女は考えながらも答える。
「これはきちんと理由があって、結婚式は"花嫁が主役"なの。言い換えれば『参列者は花嫁を立てるために、花嫁より目立ってはいけない』のよ。今回のクリスマスパーティにも同じことが言えるわ。」
「と言うと?」
「いい?今回のパーティ、恐らく誰かが意中の人に急接近するために企画されたんだと思うの。"みんなで遊ぼうよ!"って誘い方は一番お手軽だからね。二人きりのデートではないから気楽に声をかけやすいし、誘われる方もみんなが行くならって参加しやすいの。…ただし、この方法には大きなデメリットがあるわ。」
「あ、分かった。ライバルも便乗して参加しやすいってことですか!」
さすが察しの良い愛理ちゃん、話が早くて助かるわ。
「正解。そしてこういうのは"企画した人を一番立てるのが最良の手"なの。考えてみれば当たり前の話なんだけど、言い出した人が一番苦労するでしょ?みんなに連絡して、予定を調整して、盛り上がるイベントも考えて…。」
「当然そうですよね。」
「それなのに『はい行きます』の一言でポッと参加してきた人が一番目立っていたら、苦労して企画した本人はどう思うかしら?」
「あ…。自分が一番苦労して企画も準備もしたのに、なんであの子が一番チヤホヤされてるんだってなりますよね。」
「そういうこと。だから今回は目立っちゃダメよ、少なくとも愛理ちゃんが一番目立つようなことは避けるの。さらに上のテクニックとして、『あなたのおかげでパーティに参加できることがとても嬉しい』と直接お礼を言うの。そうしたら相手もまたこの子を誘おうかなって気持ちになるから次に繋がるでしょう?」
「何事も感謝の気持ちは大切ですもんね。あ、ジャージで行けってそういうことか…。」
「さっきも言ったけど、ジャージは極論として出しただけだからね。でも本質は同じ。ちなみに誰が最初にクリスマスパーティを企画したのか、当ててあげましょうか?」
「え、分かるんですか?」
目をまん丸にして身を乗り出してくる愛理ちゃん。店内は暖房がついており温かいのだけど、アタシ達が頼んだドリンクはもうすっかりぬるくなっている。
「おそらく企画の立案者はキサラギさんって子じゃない?こういうのって"開催場所の確保"が一番困るのよ、裏を返せば開催場所の提供者であるキサラギさんが言い出している可能性はすごく高いわ。もしくは立案者と親しい協力者ポジションってところね…アタシの持っている情報で推理するならだけど。」
「ちょっと聞いてみます!」
愛理ちゃんはサラダサンドを食べ終わった手をおしぼりできれいにすると、スマホでメッセージを打ち出した。
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※この話は一部フィクションです。




