北の書12 ~思春期最大の悩み 鋭すぎず、鈍すぎず。2~
「中道くん含めた仲の良い10人で卒業旅行にも行ったんだけど、当然なにもなく楽しく過ごしてふたりとも卒業。もちろん彼の気持ちはずっと確認できないままね…。そのままアタシは地元の銀行に、中道くんはIT系のベンチャー企業に就職したわ。」
「のり子さんって元銀行員だったんですか!初めて聞いた。」
「まぁね、今はこうしてなんでも屋さんやってるから数年で辞めちゃったんだけど。その話は置いておいて、新社会人としてバタバタと過ごして3ヶ月くらい経った頃かしら…中道くんから久しぶりに連絡が来てね。花火大会にでも行かないかと誘われたのよ。」
えー急展開!それでそれで?とまたしても身を乗り出してくる愛理ちゃん。冷静に話すアタシと温度感が真逆でちょっとおもしろいわ。
「当時は職場と家を往復する毎日で、休日も遊んでなかったからアタシも久しぶりに心が踊ったわ。だって相手は元々気になっていた中道くん…しかも向こうからお誘いしてくれたの。テンションの上がったアタシは、ちょっとお高めの着物を予約レンタルして美容院も行って花火大会当日を迎えたわ。」
もはや自分のリアクションがアタシの話を中断させる原因だと悟ったのか、モナカを食べながら黙って聞いている愛理ちゃん。首をたまに上下させて相槌だけはしてくれている。
「その花火大会は結構大きな規模でね、屋台が立ち並んだり地元の人達が屋台を囲って盆踊りしたりと結構にぎわうのよ。そして冗談にならないくらい人混みになる。だからアタシたちは早めに待ち合わせして、花火の場所取りをしたの。彼はかっこよくなっていたわ、卒業して数ヶ月しか経ってないのに人の顔って変わるものよね。話が長くなるから途中は省くけど、とにかく屋台で食べ物をいくつか買ってちょっと人混みから外れたところに陣取ったわ。そのままアタシと中道くん二人きりで話していたら花火が始まった。」
「夏の夜、男女が二人、きれいな花火…超ロマンチックじゃないですか!」
「花火見ながら仕事の愚痴やお互いの近況報告していたんだけど、メインであるスターボムっていう花火が打ち上げられたの。様々な色の星型の花火が間髪いれず30連発するものでね…話は聞いていたんだけど、初めて見たからアタシ見とれちゃったのよ。本当にきれいでね。そのとき横にいた中道くんが『俺は花火よりのり子ちゃんの横顔の方が好きだよ』って確かに言ったの。」
ちょっと!それもう告白じゃないですか!と大声で盛り上がる愛理ちゃん。
「普通に考えたらそうよね、今思えばあれは中道くんが出した精一杯の表現だったんだとアタシも思うわ。でもアタシ…スルーしちゃったのよね。鈍感な女を演出して、聞こえないフリしたの。」
えっなんで!と机にバンと手を突きながら身を乗り出す愛理ちゃん。アタシがびっくりすると我に返ったのか、気まずそうにソファーに座り直す。
「中道くんとは大学時代ずっと友人だったからね。ほら、恋愛感情と友情は全くの別物でしょ?当時のアタシはその辺があいまいだったのかもしれないわね。それにアタシ少女漫画とか大好きだったくせに、いざ自分がそういう立場になるとは夢にも思っていなくてね。なんて返したらいいか咄嗟に思いつかなかったのも原因ね。」
「じゃあ、その彼は今なにしてるんですか?もし相手もフリーなら今すぐ連絡してみたらいいじゃないですか!」
「無理よ。だって彼、死んじゃったもの。」
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※この話は一部フィクションです。




