北の書13 ~思春期最大の悩み 鋭すぎず、鈍すぎず。3~
えっ…と言葉に詰まる愛理ちゃん、そりゃロマンチックな恋愛話からいきなり人が死んだと聞かされればそうなるわよね。でも事実だから仕方ない。
「亡くなったのは花火大会から半年後くらいかな。花火大会の後もたまにSNSで連絡を取り合っていたんだけど、あるときご家族の方から連絡をくれてね。最初は信じられなかったし信じたくなかったけど、お葬式にお邪魔したときに実感が湧いたわ。あぁ、もう彼とは会えないんだって。」
なんで…と絶句する愛理ちゃん。何が言いたいかくらい分かるわよ。
「お葬式のときに聞いたんだけどね、彼の会社は長時間労働が常態化している会社だったの。それで彼は深夜に車で帰宅中、過労による居眠り運転をして電柱に激突。深夜だったしまわりに民家も少ないところだったのもあって発見・通報が遅れ、病院へついたときにはもう手遅れだったそうよ。」
なにか言おうとしている愛理ちゃん、アタシは一旦話を中断し彼女の言葉を待つことにした。数分してからやっと口を開く愛理ちゃん。
「だからさっきのり子さん、彼の気持ちは分からないままって…。」
「そういうことよ、もう確かめる方法はないわね。だからもしもタイムマシンがあったら花火大会のときのアタシに言ってやりたいわ、"アタシも中道くんのことが好きよと伝えなさい"ってね。」
「そうしたら未来は変わっていたでしょうか?」
「分からないわ。でもご遺族の話では彼ね、あの花火大会のあとから一層仕事に打ち込むようになっていたらしいの。だからあのときのアタシの返事次第で…知りようがないけど、知りたいわね。」
かける言葉が見つからない、という感じで黙っている愛理ちゃん。仕方ないわ、アタシが愛理ちゃんの立場でも何も言えないだろうから。明るい空気に戻したくて、アタシは努めて笑顔を作る。
「ちょっと重い話になっちゃってごめんなさい、でも愛理ちゃんには知っておいてほしいから。"当たり前だけど時間は戻らない"ってことを。特にアタシのようなパターンはやり直しが効かないからね。どうしたら一番後悔しないかな?って選択をしてほしいわ。」
なんだか辛いこと思い出させたみたいで、ごめんなさい。そう言いながら頭を下げる愛理ちゃん。
「なんで謝るのよ、アタシが勝手に話したことなんだから気にすることないのよ。それになんだか話を聞いてもらってスッキリしちゃった、ありがとね。」
夕方のお散歩代行まではまだちょっと時間がある。アタシは空気を戻すために愛理ちゃんに、一度恋愛運を占ってみないかと提案してみた。
「えっ是非やりたいです!占いサイトでも使うんですか?」
「違うわよ、アタシが使うのはトランプ。アタシはトランプを使った占いができるのよ。とにかく取ってくるわね。」
トランプは事務所に備品として置いてある、ごくまれに子連れの依頼人が来るため玩具類も多少置いてあるのだ。
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※この話はすべてフィクションであり、実在の人物・地名・事件・建物その他とは一切関係ありません。




