日常2
「はあ・・・」
生徒会室の前に立ち、深い深いため息をつく要。
扉の向こうを想像すると、今朝の星座占いが1位だった喜びなど吹き飛んでしまった。
生徒会役員と教師、一部の生徒にしか与えられない特別なカードキーでロックを解除し、要は恐る恐る扉を開けた。
室内に入った要の目に、漫画でよくある机に天高く積まれた書類の山が映る。
あまりの多さに、資源の無駄遣いやろ・・・と思うが、積み上がってるものは仕方がない。
自らの席に着き、他の役員の席をちらりと見る。
自分の所にも既に書類の山が出来上がっているのに、彼らの場合は床にすら積まれていた。
普通なら、こんな事態になる事など無いのだが、残念ながらここしばらく、ずっとこの様な状態だ。
全ては、BL小説等でよく見かける、アンチ王道的展開のせいだった。
入学式が終わってしばらく経ったある日。
理事長の甥という人物が転入してくる事になった。
何故か案内することになった要は、やって来たその人物を一目見て悟った。
もう、自分に平穏は訪れない、と。
もっさりとしたマリモのような鬘にがり勉眼鏡をかけた転入生、木津川光は開口一番こう要に言ってのけた。
「お前、その張りつけたみたいな顔止めろよ!俺には本当の笑顔を見せて良いんだぞ!!」
常識的に考えて、初対面の人間に対して言う言葉ではない。
しかし、言ってしまうのがこの木津川光であった。
(うわぁ・・・ホンマにこんなん言うのが居るんや。アホちゃうん)
光のような、所謂アンチ王道小説に出て来る転入生と、要は間近で接さなければいけなくなった。
光よりも背が低く、見るからに女にしか見えない要に対してもお約束的なセリフをのたまう光に、要はドン引きだった。
とにかく光から離れようと頑張った結果・・・
これまたお約束な展開で、要以外の役員は仕事を放棄。
光に構いきりになり、今に至る・・・という訳だ。
期日の迫っている物を手に取り、それと共にPCの電源を入れる。
耳にイヤホンを付け、PCが立ち上がった事を確認すると準備万端。
周囲に積み重なる書類の山に視線を向けると、要は作業に取り掛かった。
(何で気付かんのやろ・・・。普通に考えたら分かると思うけどな)
現在サボっている他の役員達の目は節穴じゃなかろうか、とキーボードを叩く手を止めないまま要は思った。
目を休めるために一度瞬きをして、ある所をちらりと見る。
ここ、京極院学園の重要な場所・・・生徒会室や職員室等には監視カメラが設置されていた。
外部からの侵入はもちろん、内部でも不正を働く者がいないかを常にチェックするためだ。
カメラの映像は理事会の役員にも毎日届けられていて、光に現を抜かす者達の姿も筒抜けだった。
理事長や他の生徒会役員達はこのことを覚えているのだろうか?
ともあれ、授業に使用されているリスニング用のCDを聞きながら要はひたすら手を動かした。
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