メイドからの復讐劇編3
日も暮れ始め、夕方になろうというのに、カーテンは開けられず夜を迎えようとしていた。
私は洗い物を片付け、旦那様の横にちょこんと座った。
「亜季さん……」
少し甘えた声で、私の名前を呼ぶ。
それは、何かの始まりを予感させる。
その後、どちらかということもなく、身を寄せ合い互いの唇を重ねる。
そして、私達は一つになった。
私の作戦通りである。
ここまで来れば、私の思うがままだ。
「旦那様……私だけを愛して下さい」
「亜季さん……こんな気持ちは初めてだ。妻とは、別れよう……」
「旦那様……お気になさらないで下さい。私は、今のままで十分幸せです」
「亜季さん……不甲斐ない僕を許してくれ」
そう言うと旦那様は、再び私をきつく抱き締めた。
私はニヤリと、不敵な笑みを浮かべる。
――我ながら、だいぶ悪女に染まってきたものだ――
旦那様の腕の中で、そんなこと思いながら夜を越えた。
◇◇◇◇◇◇
それからというもの、暇を見付けてはアパートで旦那様と偽りの愛を育み続けた。
あの女は、相変わらず旦那様を疑っていたが、旦那様の仕事が軌道に乗り始めた所為もあり、間抜け面を晒していた。
そして、ある日私の中に新たな命が宿った。
私はこのことを誰にも話さず、淡々と自分の業務をこなしていた。
しかし、それにも限界がある。
お腹が目立ち始めた頃、私はあの女に言ってやった。
「奥様、誠に申し訳ないのですが、産休を取りたいのです」
あの女は、慌てた様子で私の身体を舐め回すように見入った。
「亜季さん……あなた未婚じゃない。誰の子よ」
私はほくそ笑みながら、言い添えた。
「奥様もよくご存知の方です」
「私が知ってる人?」
状況が把握出来ないあの女は、首を傾げながら、物思いに耽った。
「わからないわ。誰なの?」
私は、この瞬間を待っていた。
あの女が慌てる姿を。
絶望する姿を。
「旦那様の子です」
「はぁ? あなた自分が何を言ってるのかわかってるの?」
屋敷内に、怒号が響く。
「わかっています」
「許せない……今すぐ堕ろしなさい!」
「嫌です」
「この泥棒猫め!」
「お言葉ですが、奥様。最初に私の大事な人を奪ったのは、そっちですけど?」
「何のこと?」
「忘れたとは言わせないわよ。三年前、私には婚約者がいた。あなたは婚約者を私から奪った。だから、復讐するためにここに来たのよ」
「まさか、あの人が……ねぇ、聞いて亜季さん。違うの……違うのよ」
「言い訳なんか、聞きたくない。あなたの所為で、あの人は死んだのよ。私の人生返して!」
泣き崩れるこの女を、私は傍にあった壺で殴り付けた。
やがて、頭部からおびただしい量の血を流すと息をしなくなった。
私は血だらけの壺を投げ捨てると、高らかに笑った。
「何もかも、終わったんだ……」
この広い屋敷に、憎悪に満ちた願いはようやく届いた。
私は警察に自首し、臭い飯を食べることになったが、そんなことはどうでも良かった。
旦那様はと言うと、事業に失敗し会社はあえなく倒産。
多額の借金を背負い、首吊り自殺をしたという。
この夫婦は、私が手を下さなくても、自滅していたかも知れない。
しかし、今となっては後の祭。
私は薄暗い独房で、少し笑った。
ネタ切れにつき、休載します。
リアクション薄いので、モチベーションが上がりません。
尚、復活次第再開します。




