漫画家志望編1
久々の再開です。
「はぁ……」
私は大きな溜め息をついた。
これと言って、理由はない。
私の名前は『山崎 すみれ』 この春、高校生になって、新生活を迎えたというのに憂鬱でならない。
周りの子は、恋の話で盛り上がってはいるが、私にそういう話は縁がない。
黒斑の眼鏡に、田舎臭いお下げ。
おまけに顔は、美人ではない。
つまり、ブスと言うことだ。
性格も暗く人付き合いも得意ではない。
そんな風に、自己分析をすると余計に憂鬱になる。
「すみれ~。どうしたの? また、暗い顔して」
私の唯一の友達『葉山 茜』だ。
茜とは、中学からの友達で、私と違って明るい性格だ。
茶色いメッシュの入ったショートカットが印象的で、男子からも人気があった。
何故、こうも性格の違う二人が一緒にいるかと言うと、私達は共通の趣味を通じて意気投合したからなのだ。
その共通した趣味とは、漫画だった。
お互い好きだった少女漫画の『恋の交響曲』で、話が盛り上がり、今では二人でオリジナルの漫画何てのも描いている。
「茜、こんなの描いてみたんだけど、どうかな?」
私は、昨日徹夜で書き上げた漫画を、茜に見せた。
「う~ん。いいけど、ここは直した方がいいかもね」
「わかった、ありがとう」
茜の漫画を見る力は、優れていてお世辞抜きに評価をしてくれる。
私も茜の作品を評価するが、それはお互いが信頼しあっているからなのだと思っている。
「なんだこれ? うわ~、こいつ漫画なんて描いてやがる。キモ~」
「ちょっと、返しなさいよ」
私の描いた原稿を取り上げたのは、『笹野 祐希』だ。
私が最も苦手とする男子で、ことある事に私達にチャチャを入れてきた。
「本当に返してよ!」
「こんなもん、ゴミと一緒だ。まてよ、ゴミ以下か?」
それを見ていた何人かのクラスメイトは、笹野と一緒に笑った。
更に笹野は、追い討ちを掛ける。
――ビリビリ――
私の描いた漫画は、二つになり最終的には紙吹雪レベルまで細かく刻まれた。
私は泣いた。
「笹野、酷すぎよ。すみれに謝んなさいよ」
「何で、俺がこんなブスに謝んなきゃいけねんだよ」
その言葉で再び、教室はクラスメイト達の笑いに包まれた。
「すみれ――っ!」
私は茜を振り切り、その場を逃げ出した。
悔しくて、悲しくて、胸が張り裂けそうだった。
気が付くと、私は旧校舎に来ていた。
茜と見つけた秘密の場所。
保管された机や椅子、言わば倉庫のような役割を持つ場所だ。
私は、旧校舎の隙間から僅かに見える、太陽の光を見て思った。
「世の中は、なんて不公平なんだろ……私が漫画を描いちゃいけないの? 酷いよ……酷すぎるよ……」
私は溢れ出す涙を抑えきれず、声を出して泣いた。
「すーみーれ。やっぱりここに居たんだ。笹野の奴酷いよね……私の描いた漫画にも文句言って来たよ……」
私は茜が来たことで安心したのか、すっかり泣き止んでいた。
「空……青いね……」
晴れ渡る四月の空は、何処までも広がっていた。
「すみれ、何言ってんの? 当たり前じゃん」
「そうだね……」
私は少し笑った。
「授業……サボっちゃおうか?」
「でも……」
「いいから、いいから」
私は茜の手に引かれて立ち上がった。
授業サボるなんて、考えたこともなかったし、もともと私の中にそんな選択肢なんてなかった。
でも今日は、サボりたい気持ち。
笹野に酷いこと言われたから?
茜が一緒に居てくれるから?
どっちにしても、私は人生で初めてサボろうとしているのだ。
ちょっとした罪悪感……思えばこの時からだった。
――私が変わったのは――
夏を迎える頃、私はコンタクトに変えた。
田舎臭いお下げもやめ、髪を茶色に染め、髪を巻いた。
すると、周りの男子の見る目が変わっていった。
いわゆる、高校デビューってやつだ。
今まで私を見下していた男子が、私をちやほやするのが、堪らなく嬉しかった。
そんな中、あいつも手のひらを返すように、私に言い寄って来た。




