ユア・ウェルカム
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「で?結局何だったの?」
「いや俺に聞かれても…」
「じゃあ誰に聞けばいいのよ」
「質問を投げかけたのはクロ。ならその後の事を聞く相手もクロ。何もおかしいことはない」
「普通に投げた予想がロケットランチャーで返されてんだから俺にもわかるわけないだろ」
「「ちょっと何言ってるのかわからない」」
「クソが」
突如として目の前から、文字通り消え去った希空に放置された俺たちはこの事態に困惑していた。それもそのはず、一のつもりで投げたはずの情報が数百倍やばそうな情報として返ってきたのだ。脳が理解するのに時間を欲している。
そもそもさっきの会話をどこまで信用すべきなのか、希空が本当にラスボスなのか、なんかのバグじゃねえのか、というかクレアは知らない感じだったが、まだ共通のイベントじゃねえかなとすら思っている。
それぐらい曖昧でよく分からないイベントだった。
うーん、よし。
「わかんねえことはいったん置いといて現状の整理するか」
「それもそうだね」
「二人とも切り替え早いね。まぁいいか、私はともかく、二人はまだ始めたばかりだからまずは攻略優先で行こうか。」
その通り。まだ始めたばっかなんだ。これ以上あれこれ考えるのはもう少しこのゲームを理解してからにしよう。
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というわけで、次の行動に思考を切り替える。
俺たちが目指す場所は「海闊天空の深蒼湖」と呼ばれるエリアだ。
ここ、ドライヴィアから次の街へ向かう道は三つに分かれており、そこから更にそれぞれが別のフィールドに繋がっている。最終的に合流する場は同じだが、それまでの道中で二つのフィールドを攻略する必要が出てくる。
その中で俺が選んだのはこの「海闊天空の深蒼湖」。理由はこのエリアに出現するレアモンスターが落とす素材が目的だ。このエリアは中心に大きな湖があり、その縁をぐるっと周り進むだけのエリアなのだが、その広さはかなりのものとなっている。
その上、湖には魚系のモンスター、地上と上空にはその魚を狙うモンスターがうじゃうじゃといる事から、戦闘がひっきりなしに行われる為、初心者にはあまりオススメされないエリアでもある。
準備を終え、情報もほどほどに集め終わったのである程度人目がつかない場所を通り、街の門へと向かう。
「そういえば二人はギルドとか転職とかはまだ知らないかんじ?」
「知らん」
「知らない」
「まぁまだ二日目だから当然だよね。じゃあまずジョブシステムからなんだけど…」
……
………………
………………………………
……なるほど、転職、つまりジョブチェンジ。このゲーム、初期職選択の時も思ったが、ジョブの多さがほかのゲームと比べて尋常ではないくらい多い。初期だけでも分類分けされているため数十種類は存在する。そこから一般、中位、上位、最上位……更にはユニーク職業や隠し職業なんて物もあり、現在発見されてるだけでも百種類近くあるとか。作り込みがおかしくねえか。
セオリーとしてはチュートリアルとして最初の街か、二番目の街で一般職に転職するらしいんだが、生憎俺たちはそれらをスキップしている。
そして次にギルドについてだが、これに関してはそこまで難しいことはなく、ほかのゲームと大体同じであり、仲のいいプレイヤー同士でグループを作るものだ。活発なところは週に何回協力するだの、月のノルマがある等があるが、そういったのは面倒なので今は入るつもりも、作るつもりもないな。
素材集めがしやすくなるのはメリットだと思うが、他者からゲームに仕事を課されるのは個人的に性に合わない。
なおこちらも基本的には最初の街でチュートリアルがあるらしい。他にもあったらすごく困るなぁ…
最初の街で受け損ねたチュートリアルを三番目の街で言葉伝いに受けながら、特に問題もなく進み、街の門を出てしばらく歩くとそこには、名前の通りの雄大な湖が広がっていた。
季節の概念はないとはいえ、少し暑さを感じさせる日差しに対して、身体に涼しさを感じさせる風が吹き抜ける。辺りの草は靡いており、水の透明度は高く、すぐそばにある砂浜の砂は滑らかなものだ。
「おぉ!」
「これは…凄い…」
「ここは今解放されてるエリアの中でも人気のあるところだからね。広くて綺麗な湖だから安全圏でキャンプする人もいるらしいよ。」
「確かに、この景色は壮観だな」
「クロ、なんか無いの?」
「拳ぐらいなら」
「喧嘩を売ってると捉えていいの?」
まさかぁ。
俺ほどの平和主義なプレイヤーはそういないぜ?まぁ俺が同じ立場なら間違いなく買った上で更に売りつけるが。
「二人とも直ぐに煽り合うのこれからも変わらないだろうね。そうそう、噂だとヌシ個体って呼ばれるモンスターもいるらしいよ。私はまだ会ったことないけどね」
「クレアでも戦ったこと無いんだな」
「まぁそんなにこのエリアに訪れないって言う理由もあるけど、それを無しにしても出現率がかなり低いらしいよ」
「なるほどなぁ」
そんな話を聞くと是非とも戦ってみたい。今日じゃなくても良いのでまた攻略しに来るかな…いや、別にここじゃなくてもヌシ個体とやらは他のエリアにもいる可能性はあるか。
であればもう少し攻略を進めてから他のエリアで探すというのも手だな。なら今は思考から外してても良さそうだな。なら気を改めて…
攻略開始と行こうか
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攻略開始といったはいいものの、現在のレベルが低い順にハクア、俺、クレアとなっているので、現在は白のレベリング中だ。
そして俺はと言うと、見学を言い渡されちまった。なんてこったい。
クレア曰く、少なくともレベル差をなくす為に暫く俺は戦闘見学だそうだ。
どうにもパーティプレイ中にレベル差がありすぎたり、多かったりすると出現モンスターにばらつきが出るらしい。
本来ならそこまで気にしないんだが、レベル差攻略はかなりきついと先達はいうので、おとなしく従っておこう。マルチプレイは節度を保ってやるべきだしな。
てなわけでアドレアさんのところでサブ用として購入した別の武器を使いたかったが、暫くはお預けだ。
それに反してクレアが戦闘に参加している理由は、単純にあいつが現時点でのレベル上限に達しているからだ。いくらモンスターが強くても、あいつがいるなら現状で負けることはないだろう。
もっとも、参加といってもメインは白が担当し、クレア本人はそのサポートに徹しているという感じだが。
それと、後から聞いたのだが俺が倒したあのアリンコはあのダンジョンのランダムボスモンスターの中でも最上位のモンスターらしい。道理でレベルやら経験値が多いわけだ。
……そういえば蟻といえば、あの蟻を倒した時に落とした『星雷の刻証』とかいうアイテム。ログアウト後にチラッと攻略サイトを覗いたんだが、特に記述はなかったんだよな……
クレアなら、あれがなんなのか知ってるかな。後で聞いてみるか。
などと、適当なことを考えながら眺めていると、戦闘が終了したのか白とクレアがこちらに戻ってくる。
「何呆けた顔してんの?」
「お疲れ、随分と余裕そうだったな」
「そりゃあ私がついてますから」
「へいへい、すごいすごい」
「随分雑に扱ってくれるなぁ」
「餌を目の前に待てを強いられる犬の気分」
「変なたとえ」
うるせぇ。別にレベル上げに協力すること自体には文句はないが、かれこれもう一時間は経つだろう。
そろそろ体を動かしたくなってんだよこっちは。
「それで、今のレベルは?」
「37」
「それはどうなんだ?」
「そうだね、そろそろ問題ないかな」
よしきた。ようやく俺も戦闘できるってことだ。
跳ね起きで立ち上がり、非現実の身体とはいえ、ずっと座りっぱなしで軽い疲労を感じていた身体のコリをほぐすように伸びをする。
「それで、俺達のお目当てのモンスターはどんな奴なんだ?アドレアさんはお前が知ってるから着いてからのお楽しみって言ってたけど」
「そうだね……そろそろ…かな?」
「ん?何のことだ?」
「いや…そうだね、2人に一つ問題を出そうかな」
「問題?」
ボソボソ呟いたかと思ったら今度は唐突にクイズを出してきた。何なんだ?何か嫌な予感がするような…
「このゲームのモンスターは、通常モンスターやクラウンモンスター以外にも、モンスターとしての分類が数多く設定してあるんだ。その中でも、特定条件を達成することで出現するレアモンスターって枠組みがあるんだけどね…その強さはエリア関係なしのピンキリなんだよね」
突如、辺り一帯に地響きと謎の咆哮が聞こえる。この感じ、地中…ではない。俺の目線より更に少し先、少し下。つまり、目の前にある湖の中か!
「ここで問題です。そのレアモンスター、どういった条件で出現、または世界観の設定をされているでしょう?」
「おいまさか!?」
「……面倒くさそうなことになったね」
クレアの背後でとてつもない地響きと共に、湖面の水が激しく揺れ始め、水しぶきが激しさを増すと同時に、俺と白の警戒心が一段階上がる。
そして、その地響きを引き起こした張本人が湖からその姿を現す。
「2人とも、改めてようこそ、『アルスべーレ・モノクローム』の世界へ!」
レアモンスター:キャリアー厶・サーペントの表記と同時にこちらに振り返ったクレアの表情が目に入る。
その顔は隠しきれない程の悪意が滲み出た満面の笑みだった。
・レアモンスター
希少種とも評され、通常のモンスターよりも出現確率が低く設定されている。また、その出現は確率だけではなく、条件を達成することによって出現することもある。今回は後者。
通常種よりも高いレベルと戦闘力の為、初心者殺しとしても有名。




