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チート戦線、異常あり。  作者: いちてる
5章 嘉神一樹の同窓会ならび主人公が知ろうとしなかった物語
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Ⅳ-Ⅳ 時と運命そして世界

初見で気づいた人はいないと思う

 さて、現在短針は11と12の間を、更に言えば少し12よりを指している。


 私がやるべきことはあまり無いので待ち合わせ時間がくるまでずっと嘉神君相手にメールしていたのだが、全く返信が来ていない。


 自分でも毎日数十、多ければ百を超えるメールは多すぎると理解しているが、嘉神君はちゃんと返信してくれる。


 文章量は少ない。

多くが『分かった』『俺もそう思う』といった一言返信だ。


でもその一言が彼と私が繋がりを確かなものにしている。


 それが無いというのはある意味今日の中で一番の危機的状況だ。


「お嬢様、時間になりました」


 めしべには時間になるとコールするように頼んでいた。


 指定した時間通り一秒も狂いが無い。


「どこへ向かわれるのですか?」

「○×公園よ。送ったらもう帰っていいわ」

「…………夜遊びですか」

「ええ。そういう考えも出来るわね」


 そんな楽しいものではないのは確かなのだけどね。


「…………わたくしは一端のメイドですのでお嬢様に意を申すことはしません。ですが一つだけ一人の女として伝えたいことがあります。大火傷にはならないようお気を付けください」


 それを伝えるの二か月遅いわ。




 数分で準備をすませ(最初から時間はあったのだがあんな男の為にわざわざ準備するのが癪だったのでやらなかった)、めしべに送迎させ一人で約束の場所に向かう。


 当然ながら日は既に落ちている。


 今宵は新月。星明りが見えると洒落込みたいが夜空は雲が占拠している。


 腕時計(1200万)を見る。


 0時を指すまで長針が3周といったところ。


 そういえばここは嘉神君が男子トイレで意識不明の重体となって発見された場所だ。


 すでに血がついたタイルは新しいものに張り替えている。


 そのタイルは私が保管しているのは秘密。


 約束の場所に誰もいなかった。


 日本人は5分前行動が基本なのに。


 それでも時間が進むわけで残り1分で時計が0時を指す。


 もしこのまま何もせず何も起こらなかったら『運命』として私はあのネズミに支配されてしまう。


 とはいえ自分からは頼めないのだからどうしようもないのだけれど。






 そして……時計の針が12時をさした。







 石束は指定した場所にやってきたのは指定した時間の10分後


「遅いわ。私人を待たせる人間は嫌いって言ったわよね?」

「言いましたよ。でもセンパイの好き嫌いに関係なくもうオレがご主人様なんです」


 …………


「というかセンパイ、オレのことちゃんと探してないでしょ」


 開口一番石束は私がまともにゲームを参加していないことを指摘した。


「あたり前でしょ。あなた実際は日記に書いているの4つじゃないでしょう?」

「アハッ。なんでばれたんですか?」

「ばれるとかそういうのじゃないわ。初めから信用していないの。私はもう嘉神君以外は信用しないことにしているから」


 それに、初めから私に勝ち筋を提示していなかったのも悪い。


 ゲームと命ずる以上、お互いに勝ちが無くてはいけないのに、こいつは私が攻撃できないようにし、かつ他人に相談することを禁じた。


 足掻く足掻かない以前に、一方通行なゲーム過ぎてやる気が無い。


「遅刻したのも本当はどこかに隠れていたんでしょ? そもそもあなたが私に見せた日記新しすぎ。まるで私に見せるためだけに存在するように。あなたは私に他に書かれていないことを見せたかったのでしょうけれど、むしろそれは逆効果よ。他にも日記があってそっちが本命なのでしょう。きっとその日記には……そうね、『乗り物に乗っている間は見つけることが出来ない』とか『走っている時は追跡できない』とか書いてあったんじゃないの?」

「…………すごいですねセンパイ。全部大当たりです」


 なにがあがく姿を見たいだ。

最初からあがける余地なんて残していないくせに。


「でもそこまで分かっていてゲームはゲームです。センパイはオレに負けたんです。ぐふふ。むしろ分かっていて何もしなかったってことは実はセンパイもオレからの支配を望んでいたり?」


 気持ち悪い。


「ねえ。折角だからあなたが昨日書いたこと全部教えて」

「いいですよ。絶望してください。

『センパイはオレの言うことを何でも聞く』

『誰もオレを攻撃することはできない』

『オレは決して死なない』

『誰もオレを傷つけることはできない』

『だれもセンパイを助けてくれない』

他にも書いていた記憶がありますけど、多すぎて忘れました。あと日記は置いてきたので破壊すれば大丈夫なんてそんなこと思わないでくださいね」


 ………………ふうん。


「じゃあ、さっそく命令してみますか、センパイ」

「待って。最後に一つだけ聞かせて」

「なんですか? 時間稼ぎのつもりなら無意味ですよ。だれもセンパイを助けてなんてくれないんですから」

「だったらいいじゃない。負け犬の遠吠えとして強者様は聞く義務があると思うのだけれど」

「………………いいですよ。どんな遠吠えをするんですか?」


今までで一番気持ち悪い顔をこの爬虫類は私に向けた。


 さすがに気持ち悪かったのと、冷静になるために一度目をつむる。


 失敗することは許されない。


 一つの失言が命取りになってしまう。


「与那国島と択捉島の時差何時間か知ってる?」

「……は?」

「いいから答えて。時差は何時間ですかって問題。中学生でも知っている問題だから気楽に答えなさい」

「二時間」


 馬鹿じゃないの。ここは正解を答えてほしかったのに間違えるなんて思わなかった。


「時差は無いわ。でもね、日の入り日の出には二時間の差があるの。きっとあなたはそれを勘違いしたのでしょうね」

「? なんのつもりだ? 何が言いたい?」


 設置されている時計は12時50分を指している。


 私の時計も同じ時刻、恐らく石束のも同じ時間を指している。


「二時間の差があるのに時差が無い理由、それはね。日本という国が兵庫県明石市を標準時と定め、日本はすべてその時間で決められているの」

「そうですね。知ってます。それだけですか」

「まだ私の話は終わっていないわ。では問題です。あなたの時計は正確ですか?」

「残念ですけど正確です。ちゃんと時間を合わせたし持っている時計は一つじゃない。肌身離さずもっていた。そこにある時計だって同じ時刻を指している。正確に決まっている」


 どうやらまだ私の言いたいことが理解できないらしい。


 そしてそろそろ頃合いだろう。


 勝った……はず。


「これだからあなたは愚かなのよ。時計というのは一秒一分の『時を計る』機械であって『時を示す』機械じゃないのに」

「…………どうやらセンパイはやっぱり泣かされたいようですね。じゃ命令します。今すぐ服を脱ぎ捨て土下座しろ」


 その命令


「聞けないわね。そんなの」


拒否します。


「は?」


 石束は理解していない。


 何が起きたのか何をされたのか。


「教えてあげる。あなたの言うゲームは終わったの。そしてそれはあなたの敗北という結末を迎えたわ」

「なにが起きている!? 能力の不発? そんな馬鹿な!! ちゃんとオレは書いた。ここにだって書いてある!!」

「そうね、私にはその日記に細工する力はないわ。でもね宝瀬なら日記じゃなくて他の所に細工をすることが出来るの」

「なんだ!? なんなんだ!!」


 さて、淡々と答えを伝えましょう。



そして絶望しなさい。


あなたが喧嘩を売った宝瀬はいったいどういうものだったのかを。




「私はね、ずらしたの。日本の標準時子午線を兵庫県明石市から沖縄の端に、西に15度ずらしたの」








「…………………………………は??」

「まだ分からないの? 日本とイギリスには9時間の時差があるでしょ。その時差を無理矢理8時間にしただけの話」

「いやいや、ありえない。そんなのはったりだ」


 はったりじゃない。本当のことだ。


 そうじゃなかったらこいつのいう命令を実行しないといけないじゃないの。


「確かに時計は0時50分を指している。でも実際の時間はまだ昨日の23時50分。明日になっていない」


 今日この日だけ、一日が25時間ある。


「毎日が24時間変わらずやってくる。そんなことを当たり前だと思っているあなたには絶対に到達できない考えよね」

「そんなことしたらいったいどんな迷惑が……」

「兆単位でお金が動いたはずよ。でもだからどうしたの? 私という人間を助けるためにその程度の出費宝瀬ではどうということは無いわ」


 このセリフはちょっとだけ嘉神君をまねる。


 とりあえずかっこつけてみた。


「…………そうだ! たとえそうだとしてもそれじゃ昨日のいや、今日の日記は残っている。だれもオレを見つけることが出来ない。あと10分走れば何も変わらない」

「その通りよ。でも何度も言わせないで。それはもうあなたにはできない」


 私が言い終わる前にそれは来た。


 風神のごとく現れたそれを私は知っている。


「お嬢様にいいいいいいいいいいいい何をしたああああああああああああああああああああああああああ」


 おしべがきた。


「あ、言い忘れていたけれどさっきまでの会話ずっと盗聴されていたから。私の命令抜きで下僕どもが勝手に動いたの。それまでちょっと時間を稼ぎたかった。だからあなたとの毛より価値の無い会話を続けていたの」


 一応話してあげたけど聞いて無いわね。


「コロスコロスコロスコロス。お嬢様をあだなす者は一切躊躇わずコロス。ぶちころすぬっこおろおおあおあすさ」

「ひひひひいいいい」


 走って逃げ始めた。


 でもね残念だけどおしべは『法則』のギフトホルダーなの。


 『運命』で逃げようが『法則』として追ってくる。


「お嬢様」


 ここでめしべが登場だ。


「石束向に関わる者や物をすべて廃棄しました。事後報告になりましたが構いませんか」

「いい仕事をしたわね。褒めてあげるわ」


 とはいえ、本当に厄日だった。


 きっと安眠は出来ない。いつも通りの眠れない夜がやってくるのだろう。


「離せ!」


 遠くから石束の声が聞こえるが無視。


「そいつは出来ない相談だな」


 そして同じところからとある声が聞こえた。


 本来はそこにいないはずの存在。


 頭ではあり得ないと理解している。


 ただ私が強いては私の魂が聞き間違えるわけがなく、その声は間違いなく彼の声だ。


 私の神様。


「嘉神君!?」


 一目散に走り始める。


 ヒールを脱ぎ捨てただただ彼に会いたく全力で駆け寄った。


 そこに彼はいた。


 石束の口内に靴をねじ込み


「俺の靴を舐めろ」


 無理やり咥えさせていた。


 石束、そこ私と変わりなさい。


「あ、真百合じゃないか」


 石束を見向きとしないで、私の方に向かって


「うっおええええ」


 ゲロを吐いた。


「だ、大丈夫?」


 ハンカチ(定価10万円)を使い彼の口を拭く。


「あんまり、嫌な予感がしたから全力で走ってきた。しばらく回廊洞穴クロイスターホール反辿世界リバースワールド使いたくない。あと鬼神化オーガニゼーションも。ここに来たのはついさっき……オエエ」


 私は吐瀉物を拭きながら


「私の為にわざわざ確証もないのに来てくれたの?」

「そうだな。そうなるな」

「こんなになってまで?」

「ああ。こんなことならコロッケ食わなきゃよかった。って真百合? 大丈夫か震えてるぞ」


 大丈夫なわけない。


 主に下半身がやばいというか、軽くイッた。


「おーい、真百合さーん?」

「大丈夫、大丈夫だから」


 なんて今日はいい日なんだろうか。


 厄日なんて無かったのね。


「正直状況はよくわかってないんだけど、なんとなくこいつぶっ倒したんだけど問題ないよな」

「あるわけないわ。好きにして」

「そっか」


 石束はようやく立ち上がり、無我夢中となって走り始めた。


 まだぎりぎり0時にはなっていない。


 つまり『走ったら追えない』が残っている。


「そういや、ちょっと試したい技があった。占里眼サウザンドアイズ


 さて、彼が何をしようとしているのか考えるのと同時にとある行為を実行する。


 ありとあらゆる布きれを使い吐瀉物を回収する。


 宝物が増えた。


「か~ら~の~」


 瞬間移動じゃなく、私の能力だった反辿世界リバースワールドを使い、走っている石束の先に移動した。


「さっき俺は占里眼サウザンドアイズでお前がこっち方向に走っている姿を見た。それはもう『運命』として定着し、お前はそういう『運命』としてこのコースを走らなくてはならない。だが俺だけは『運命』を踏み倒しこうやって行動する。で、ここに日本刀を設置した」


 占里眼サウザンドアイズ


 私の知らない能力だ。


 そもそもなんで嘉神君は九州のはずれにいったのか分からない。むしろ消されている?


 石束は全力で日本刀まっすぐと突き刺した嘉神君のもとに走ってくる。


「やめ……たすけてえええええ」

「なるほど、俺が見たのは走る後姿だけで、顔は見ていない。つまり叫ぶことはできるのか。ふむふむ。あと石束夜中に叫ぶな。公園だろうとご近所様の迷惑になるだろうが」

「いやああああ」


 石束向 意味の無い15年の人生に幕を下ろした。


 興味なんて無い。当然ながら今頭の中は嘉神君のことでいっぱいだった。




 このあと嘉神君は私の家に泊まって翌朝手配した飛行機で東京へ向かっていった。


 とっても気持ちよく眠れた良い夜でした。



いくらなんでもこれは酷いという方へ

4章やっと終わるエピローグに出来るって本人が言っています。

よって誰も悪く無い。私も悪く無い。

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