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チート戦線、異常あり。 作者:いちてる

5章 嘉神一樹の同窓会ならび主人公が知ろうとしなかった物語

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伍ノ壱 狂乱昔話

どいつもこいつも……
 昔々のこと。

 嘘です、そんなに昔じゃなく3年前のこと。

 母さんの仕事の関係で、中学2年になった時、とある学校に転入した。

 そこには林田稟、坂土素子、狩生武がいた。

 特筆すべきことはない、普通の田舎の中学校。

 ただそこにいる奴らは普通じゃなかった。

 みんな狂っていた。

 生徒も教師もみんなみんな狂っていた。

 そこで林田稟は虐められていた。

 理由はない。ただの悪意でいじめが起きていた。

 主犯は狩生、素子ちゃんや教師を含むその他大勢は傍観。

 初めのうちは、物を隠す無視をする程度だったらしいが次第にエスカレートしていき暴力を振うようになってきた。
 教師にも頼んだらしいが、ことごとく無視をされそれを知った狩生達はさらにエスカレート。

 クラスだけじゃなく学年全体としてイジメが起きた。

 当時の狩生は文武両道かつイケメンと三拍子そろった存在で、稟はチビでオタクだった。

 その二人どちらかを味方するかと聞かれたら前者と答えるのが大多数を占めていた。

 そんな中、俺が転入した。

 当然俺は戦うわけだ。

 正義の為に稟の為に。

 ただその時の俺はギフトを持って無かった。

 空手をやっているだけのそこそこ強いだけで100人の敵と戦うには弱すぎた。

 当初俺も返り討ちにされた。

 青あざが体中にできた。

 ただ、タダではやられなかった。

 動けなくなるまで戦った。

 鼻の骨を折ったこともあった。
 二階から突き落とされたこともあった。

 目を潰したこともあった。

 歯を数本折ったこともあった。

 治らない傷をいくつも着けてきた。

 その中の一つに狩生の足の骨を折り完治一年の大怪我も負わせた。

 その所為であいつはインターハイにも出れず落ちぶれていったんだったが、全く同情はしていない。

 あいつが悪い。ただそれだけ。

 これを喧嘩と見れば俺は全戦全敗だ。

 しかし勝者には何も残らない、得るのは生傷だけ。

 そんな戦いを何度も続ける奴はいない。

 100人いた敵は次第に90,80と減っていき2か月たったことは誰も林田をいじめなくなった。

 だれもが傷つき傷つけあった。

 そしてみんな自らの間違いを反省してくれて、稟相手に土下座してくれた。

 そのさいちょっときつめにお願いしたかもしれないけど覚えていないからきっと善意で謝った俺はそう信じている。

 これが一度目の稟に起きたイジメ。

 その後俺達は親友となり、素子ちゃんが告白した。
 恋人と親友どっちが大切なのかを聞かれ親友と返したら振られた。

 中学三年の二学期に再び転校したので豊穣町にいたのは一年とちょっとだ。

 転校する前に『もし何かあったら飛んでくるから。気をつけてね』と忠告しておいた。

 それが間違いだった。

 中部に移り住み、受験生として勉学に勤しんでいた。
 家は貧乏なのでお金がかからない学力特待制度がある所を優先して受験した。

 私立は博優学園を含め3つほど合格した。

 しかし、公立高校を受験する前日。
 一通の便箋が届いた。

 その中には一枚の写真が添えられており、写っていたのは稟が何者かによって暴力を振われている姿だった。

 俺はすぐさま九州まで行き、稟のもとに向かった。

 背景で場所は体育館倉庫だと分かっていたので一目散にそこへ行った。

 稟はいた。

 ボロボロになった姿だったがかろうじて生きていた。

 ただそこにもう一人いた。

 坂土素子だ。

 坂土素子が幼馴染の林田稟をいじめていた。

 最初、俺は自分の目を疑った。
 見間違いじゃないのか? と。

 次にギフトによる効果を疑った。
 何者かによる攻撃を受けているか? と。

 ただ実際は彼女の意思で稟をいじめていた。

 なにやら仲間を傷つければ会いに来てくれるとかI see tell だのわけのわからない言葉の羅列を復唱し続けていた。

 なんだかよく分からなかったが、それでもこいつが稟に暴力を振ったことに変わりはない。

 占里眼サウザンドアイズを持っていた彼女だったが、両目を潰せば無力なので潰し、稟を解放させた。

 翌日、素子ちゃんは自殺した。

 遺書はなかったが、俺宛にごめんなさいって書かれた謝罪文が届いた。

 謝る相手を間違えていると憤慨した。

 彼女の葬儀に参加しようとしたら素子ちゃんの母親からキレられた。

 何様のつもりなんだと思った。

 そもそも素子ちゃんが稟をイジメなかったらこんなことにならなかったのに……。

 だから俺は自分の意思を素直に伝えた。

 あなたの娘が悪い、被害者面を止めろ見苦しい。

 謝るべきは貴女の方だ。

 稟に謝れ。

 あんたがちゃんと教育していないのが原因だろうが。

 正しいだけのことしか言わなかった。

 母親はヒステリーを起こした。

 大の大人が俺を無理矢理外に連れ出し、唾を吐かれた。

 他人に唾を吐く行為はやっちゃいけないのでそいつを静粛した。

 それが大多数の大人VSたった一人のか弱い男の子という戦いの火ぶたとなりかけた。

 流石にこの時は死を覚悟していた。

 ただ俺なんかが死ぬことより、正義を優先する方が優先なので行動自体全く問題ない。

 いざ始まるという時、間に母さんが入ってきた。

 何をするかと思えば大人たちに土下座した。

 俺は生まれて初めて自分の母親が土下座するところを見た。

 悪意を持って罵られていた。踏まれていた。蔑まれていた。

 そんなの俺が許すわけにはいかなかった。

 それなのに母さんが止めてと言った。

 やめるわけにはいかない。母さんが傷ついているんだ。ここで戦わないと何のための正義だ。

 ただ足が動かなかった。

 怖かったんじゃない。神々しかった。

 男は背中で語るというが、母の小さな背中は四方から飛んでくる野次を跳ね除けるのに十分な声量を持っていた。

 その背中は間違いなくこう物語っていた。

『後は母さんが何とかするから』

 その意思に俺は屈した。

 目の前で母親が傷つけられているのに俺は動けなかった。

 生まれて初めて自分の正義を貫けなかった。



 このやるせなさを俺は一度も忘れたことは無い。



 町中の人間に嫌われ二度と来るなと塩をまかれ追い払われ、やってきたのは神陵祭町。

 そこで博優学園に入学する前に母さんと約束した。

『出来る限り大人しくして』

 その意味を正しく理解は出来なかったが黙って俺は頷いた。






 これが俺の過去の話。





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