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チート戦線、異常あり。  作者: いちてる
1章 衣川早苗と化け物退治
7/351

口映し 1

後書きに主人公の能力の解説があります。

あとサブタイトルで何となく察しが付くと思います。

 衣川さんが作った朝食は見た目的にも美味そうだった。


 期待して味噌汁を一口。


「うまっ」


 見た目以上のおいしさに驚いた。


「美味いだろ。早苗の作った味噌汁は。あたしの自慢だよ」

「ええ。きっと良いお嫁さんになれますね」


ブゥ。と二人とも吹き出した。うわ、汚い。


「ななななな!何を言うかバカ者!!!」


 動揺する衣川さんに対し


「ははははっはははははは」


 爆笑する衣川さんのお母さん。


そんな面白いことを言っただろうか。


「でも、衣川さん俺の制服綺麗に吊していましたし、この家だって広いわりに散らかっていないじゃないですか。衣食住全てにおいて衣川さんは良妻の素質がありますよ」


 制服一つハンガーに吊すのにもちゃんと皺にならないようにしていたし、昨日や三日前だって部屋は全て綺麗だった。


「そこまで言うんだったらだったら早苗お前にやるよ」


今度は俺と衣川さんが味噌汁を吹き出した。


「いいですよ。俺なんか勿体ないです」


 俺は一切家事ができないので衣川さんの家事スキルは生きる上で必須だ。


 そう考えると先ほど俺は彼女のこと嫌いと言っていたが、実は相性はいいのかもしれない。


 ただあくまでもこれは俺視点の話だ。


「それに衣川さんは俺なんか大嫌いでしょうし」

「そうだ。こんな鬼畜な人間、私のタイプではない」


 鬼畜と言われるとさすがに落ち込むのだが、この際仕方ない。


「そうかい。鬼と鬼畜。案外相性良さそうなんだけど」

「そんなことない(ですよ)」


同時に言ってしまった。






学校に行こうとしたのだが


「あの衣川さん。俺良く考えるとここから学校に行く道分からないんですよね」


 この家は俺の家の更にその先にある。始めてきたときは走って分からなかったし、一回家に帰ったときは偶々通りかかったタクシーを使ったのだ。


「それは遠回しに私と学校に行きたいと言っているのか」


 確かにそれが一番手っ取り早いだろう。


「はいその通りです」

「ふっ!ふざけるな。私は貴様なんか大嫌いだ!だから一緒に学校など行かん」


 そうか。それはしかたない。


 後ろから着いていこう。




「おはようございます。衣川さん」


 玄関に出ると月夜さんが、いた。


「え……?何で嘉神さんが」

「えその……何か色々あった」


 良く考えると俺クラスメイトの女子の家に日帰りしたんだよな。


 うわーお。これは社会的に死ぬな。


「今日も……お楽しみだったんですね。ごめんなない」


 九十度の綺麗な謝罪の後、一目散に去っていった。


 てかあの人噛んでるし。


「ねえねえ衣川さん。これまた絶対誤解されるよね」

「うるさい」


怒ってる。ま、仕方ないよな。






 なんか色々と吹っ切れたのか一緒に行くことを許可された。


 女心と秋の空とはこのことか。


「そう言えば衣川さん。あの化け物一体何だったんですか」


 彼女を守ると約束した以上中途半端なことはできない。


「知らん。一年前急にあの化け物は現れたのだ」

「急にって。心当たり無いんですか?」

「分からん。大体恨まれる事なんてギフトホルダーである限り日常茶飯事だぞ」

「大変ですね。ギフトホルダーって」

「今はお前もだぞ」


そうだった。


「そう言えば、何で俺生まれたときの試験で引っ掛からなかったんでしょうか」


 確か生まれたらすぐ能力者かどうかを調べるテストがあったはずだ。


 あれ俺全く引っ掛からなかったのだが。


「あれはギフトホルダーかどうかを判断するテストではない。ギフトを使えるかどうかを判断するテストなのだ」

「それ全く同じ意味じゃありませんか?」

「少し違う。あのテストは、精神的にまいっていたときや、相対的なギフトを感知することが出来ない。現にお前の父親のギフトも相対的なものだったろう」


 確かにそうだ。


「それに公表されていないが、実際この世界の五%は異能者の素質があるらしいぞ」

「え……?」

「福知によれば、ギフトを使えるのが一%のユーザー。素質があるのが五%のホルダーだそうだ」

「つまり、使えるけど目覚めていないギフト持ちはテストで引っ掛からないと言うことですか?」

「そういうことになるぞ」


 ふうん。てか福知って誰だっけ。


「あの、福知って誰ですか?」

「クラスメイトだろ。茶髪で眼鏡をかけている」


 ああ。あのクラスで唯一まともそうに見えた能力者か。


「ホームルーム前にそいつからお前のギフトを見抜いて貰う」

「そんなこと出来るんですかあいつ!」

「あいつはそういう能力だぞ」


 クラスメイトのギフトのすごさに戸惑った俺である。






 また上履きに画鋲が入っていた。今度は六十一個。


「真子か」

「だれですかそれ?」

「一年十組の後輩だぞ」


 つまり能力者ということか。


「でもどうしてわかるんですか?」

「この画鋲。全く同じ形をしているだろう」


 言われてみれば、全て同じように少し傷がある。


「あいつのギフトは複製だ。軽ければ軽い程多くのものを複製できる」

「良いんですか勝手に教えても」

「本来はだめだが、これ以上は問題になる。あいつのためにも」




「お前ら喧嘩はどうしたんだ」


 時雨が二人で登校してきた俺らを指差した。


 確かにあれほど仲が悪かったのに一緒に登校すれば怪しまれるだろう。


「月夜。何か知ってるか?」

「あの……別に嘉神さんが衣川さんの家にお泊まりしてたことなんて知りません!あ……」


 絶対わざとだろ。


「ごめんなさい」


 わざとじゃないのか!?


「それより、福知。ちょっとこっち」


 福知は如何にも真面目そうな生徒であった。


「なんだ。今僕は二次元のことを考えているから忙しいんだ」


 訂正する。絶対こいつ不真面目だ。


「いいから来い」


 衣川さんは福知の襟を掴み連れ去った。






 使われていない教室まで福知智ふくちともを連れ込んで状況を説明する。


「へえ。まさか無能力者代表の一角が能力持ちだったとはね」

「あれ?見抜くなら分かっていたんじゃないの?」

「僕の鵜の目鷹の目アンコモンズウォッチャーは裸眼でしか使えない」


 眼鏡をかけているから使えないのか。


「お前視力いくつだよ」

「0.8」

「最初から裸眼でいろよ」


 伊達メガネとかオサレ系しかいないと思っていたのに。


「仕方がないだろ。僕のギフトは裸眼じゃないと使えないが裸眼だと常時使えるんだ。ギフト持ちばかりの教室で一時間過ごすだけでも情報量が多すぎてパンクする」


 そうか。なら仕方ないな。


「別に僕が君のギフトを教えるのは構わない。ただ僕は少なくともギフトは個人情報と考えている。盗み見ていいものじゃない」


 結構まともな意見だ。


「だから衣川。お前はここから離れろ。その後こいつから聞け」


 渋々衣川さんは納得してくれた。






「もう一度確認するぞ。本当にいいのか。僕に視られても」

「別にいいけど。一体何で駄目なんだ?」

「僕のギフトは、ギフトを見抜く。つまり、そのギフトの弱点ですら分かる。つまり君は今から僕に弱点をさらすことになるんだ」


確かにそう言われると遠慮したくなるな。


「だが問題ない。別俺がお前と敵対するわけじゃないしな」

「そうか。じゃ、こっちを向いて」


言われたとおり福知の目を見た。


 福知は眼鏡をはずし


「なん…だと……」


 冷や汗をたらしながら驚いていた。


「ギフトネーム『口映しマウストゥマウス』君のギフトは、口付けをしたギフトホルダーのギフトを使うことが出来るギフトだ」


 予想通りだった。


 衣川さんと事故で口付けをしてから俺は鬼人化オーガナイズを使えるようになった。


 それに父親のも似たようなものだった。


 ただ父のはもっとエグいが。


「それで、今君は二つのギフトを使える」

「え?一つじゃなくて?」


それとも口映しマウストゥマウスもカウントした二つなんだろうか。


「違う。一つは鬼人化オーガナイズ。そしてもう一つは柳動体フローイング

「何だそれ?」


 聞いたことも無い。


 ていうかキスしたことあるの、俺の覚えている限り衣川さんが初めてのはずだ。


柳動体フローイングは―――――するギフトだ」

「は……?」


 驚いた。そういうギフトもあったんだ。


「まいったな。ここまでえぐいのを視たのは初めてだ」


 眼鏡をかけ直し福知が語りかける。


「だってそうだろ?どんなギフトであれ君の間合いに入れば君は使えるようになるんだぜ。老若男女問わずだ」


それは嫌だな。特に男は。


「一応礼儀として弱点も伝えておくべきかな。君の口映しマウストゥマウスは、あくまで使えるようになるだけだ。ものにするわけではない。だから僕のように体質で影響するギフトなら上手く使えるが、衣川のように経験で鍛えた異能は、また同じ経験をする必要があるというわけだ」

「つまり漫画とかで、この技を編み出すのに十年かかったとかあったら、本当に十年間修行しないといけないわけか」


面倒だな。


「そうとも言えるし違うとも言える。あくまで修行は過程だからね。技を生み出す結果にどういう過程を踏もうが問題あるまい」


そういうものか。


「とはいえ、この学園でトップクラス、いやもうこれは生徒会長を抜いて最強のギフトだ。まあ物が物だから気付くのが遅いのは分かるが、よく十六年間普通として生きて来れたね」


 感心された。


 ちっとも嬉しくなかった。






「予想通りといえば予想通りか」


 衣川さんに俺のギフトについてのみ話す。


 俺は今まで何度鬼畜と言われ続けただろうか。


「それでどうする気だ?」

「どうする気ってどういう意味だ?」

「私達と同じ異端児として暮らすか、クラスメイトに隠して暮らすかだ」


 それか……。


「一ヶ月様子を見て、大丈夫そうだったら能力者としていきます」

「そう簡単にいくかどうか分からんぞ」


 まあ俺もそう思う。


 少なくとも今は問題を先送りにしたかったのだ。


 昨日今日で情報が多すぎる。


 これからのことや仲野のことをゆっくり考えたかった。


 だが、それは許されなかった。


「おい……嘉神……!?」


 よりにもよって仲野に聞かれていた。


「仲野!?」

「どこから聞いてた」

「おれ達に隠して暮らすかどうとかって……」


 そうか。ギフトを聞かれていないだけマシと考えるべきか。


 それとも仲野に聞かれた時点で最悪と考えるか。


「おまえ……おれ達を騙していたのか!」

「違う。知らなかっただけだ。それに俺が異能を使えるようになったのはつい最近、三日前のことだ」

「嘘を吐くな!そんなことあるわけないだろ!!」


 世間にはギフトは先天的なものだとされてきた。俺もそう教わったし、仲野もそう教わってきている。


「本当だ。信じてくれ」


 一縷の望みをかけて頼んだが


「ざけんな!誰が信じるか!この化け物!」


仲野は吐き捨てたあと、逃げ出した。


 その場に残される俺と衣川さん。


「化け物か……」


 そうだろうな。俺だって最初そう思っていた。


「気に病むことはない。しばらくしたら慣れる」


そうだろうな。


「お前も災難だな。私の勘ではもうクラス中に広まったとこだろう」

「衣川さん。俺高一から一年間。仲野と友達だったんですよ。一緒に帰ったり一緒にゲームセンター行ったりしたんです。それなのに、こうも簡単に友情って崩れるんですね」


 正直泣きたいくらいだ。


「そんなことはない。私に言わせればお前たちのそれは友達ごっこですらない。お互いがお互いの友達を押しつけていただけだ。現にお前は仲野を守るだけでその間違いを正そうとはせず、仲野はお前を利用するだけだっただろ」


 否定したいが、全くもってその通りだ。


「私と月夜は、小学校の頃からの親友だが喧嘩したことはあれど、仲違いしたことはなかったぞ」


 そうだろうな………


「嘉神、私は今からお手洗いにいってくるがたぶん帰ってこない。だからお前は先に教室に戻ってろ」


 女の子からお手洗いなんて……


「衣川さん」

「何だ?」

「その……ありがとうございます」

「何の事だかわからんぞ」


 クールに去って行った。


 ああいうところがモテるんだろうな。同性に。






 五回くらい深呼吸をして教室に入る。


 クラスメイトは一斉にこちらを向いた。


「おい来たぞ」「嘉神だ」「嘘吐き」


 予想通り非能力者は、俺のことをボロクソ言った。


「おい嘉神」


 二つ後ろの時雨から声をかけられる。


 俺はこいつに酷いことをしたからな。


 覚悟はしておくべきだろう。


「なんだ」


 少し低めに返事をする。


 ただその時雨は俺が今までのことなんか無かったような爽やかな笑顔で俺を歓迎した。


「ようこそ。二年十組へ」


 どの能力が一番強いかという議論で、コピーする能力が最強と多くの人が言っています。

 またごく少数ですがフラグを作る能力が最強という人もいます。

 そこで私は思いました。


『フラグを作って能力コピーできたら最強じゃね?』


 そんなノリで作ったのがこの小説でありこの主人公、嘉神一樹君です。




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