さっさと終われエピローグ
更新遅れてすみませんでした。
「二年にクラス変えたって聞いたんだが冗談だよなぁ?」
「いいえ。冗談じゃないわ。本気よ」
扉の前で二人は向き合う。
そしてその後ろには四楓院先輩をはじめ数人の女子生徒が。
恐らくは真百合の友達みたいなものだと思うがあんな風にたむろされるとすげえ通り辛い。
トイレ行きたいんだけどな……。
「何がしたいんだよぉ」
「何がしたいか?そんなの言うまでもないわ」
クラスのみんなが俺を見る。
だからなぜこのタイミングで俺を見るんだよ関係ないだろ。
「言ってくれてもいいだろ!オレたちは親友だっただろ?」
「そうね。親友だったわね」
真百合の言葉一つ一つに棘がある。
「本当に何があった!あの日!あの日から真百合は変わった!頼むから元の真百合に戻ってくれ……」
あの日とは殺し合いが起きた時期のことだろう。
四月下旬俺たちは無理矢理コロシアイをさせられた。
犯人たちの動機はただ宝瀬真百合が苦しむ姿を見たかったからという破綻した論理だけだった。
コロシアイについては俺達の協力によって防がれた。
俺達は誰一人として死者を出してはいない。(ただし主催者共はほぼ皆殺し)
コロシアイをしたという記憶も俺の父さん嘉神一芽によって消された。
記憶が残っているのは俺と時雨と早苗と真百合のみ。
本来ならばそれで終わりだったはずなのだが、ここで真百合の方に問題が起きた。
彼女のギフト反辿世界は自分が死ぬと『世界』が三時間前からやり直されるらしい。
なお悪いことに俺達は連れ去られた時眠らされたため、三時間前までもどっても寝ちゃっていたのだ。
つまり意識が覚醒した時すでにコロシアイが始まっていた。
そして殺され、やり直され殺される。
絶望的な無限ループ。
真百合曰く数千回繰り返して正しい数は覚えてい。
それが彼女にどのような影響を与えたのか俺は知らない。
ただ間違いなく彼女は変わったらしい。
俺は以前の彼女がどのような人だったのか知らない。
今のままでも何ら問題ないように思えるが、それは俺だけの話で他者から見れば問題があるのかもしれない。
「答える必要はないわ。あなたと私はもう同級生じゃない。先輩と後輩よ。話しかけるのはいいけれど気安く話しかけないで」
「~~~~!」
「琥珀達もよ。これは私が決めたことだから」
「ですが……」
「ですがもどうしたも無いわ。それとももっとはっきり言ってほしいのかしら。二度と私に関わらないでって」
カッと目を見開き訴えるように真百合を見る笹見先輩。
うーん。ただいくらなんでもこの言い方は真百合が悪いと思う。
「えっと……宝瀬先輩」
「真百合」
「……まゆりん」
「何?」
どうやら宝瀬先輩はNGでまゆりんはOKらしい。
基準が分からん。
「いくらなんでもかつての友達にそんなこと言うのはどうかと思いますよ」
再び注意する。
「え?嘉神さん仲野さん相手にボロクソやってませんでした?」
「月夜さん、あんたは黙ってろ」
それはそれ、これはこれなのだ。
「そうね、嘉神君の言うことは全てが正しいわ。だからごめんなさい」
うん。これで全ては丸く収まったはずだ。
「……………」
あれ……?
笹見先輩なんでこっちを見て睨んでいるの?
しかもバリバリの殺意を込めて。
親の仇を見るような表情だ。
つまり、怖い。
「てめえか」
「はい?」
「てめえがオレェたちの真百合を駄目にしたのか?」
いや知らねえよ。
「いつからあなた達のものになったのよ。私は常に嘉神君の物だわ」
真百合も煽っていくスタイルは止めてほしい。
「コロス」
ちょ、いきなり俺をカッターナイフで襲ってきた。
しかも躊躇なく喉元を狙ってきている。
びっくりして咄嗟にカウンターを入れてしまう。
最近使っていなかったけど一応俺空手有段者だから、素でもそこそこの一撃は打てるわけで……
「ぐばぁ」
やべえええ。
クリーンヒットしてしまったよ……。
反動で笹見先輩は扉に激突した。
めっちゃ痛そう。
「あ、あの……そっちから襲ってきたので謝る気はないですけど大丈夫ですか?」
「男なんかに心配されるほど柔じゃじゃないぜぇ」
頬を押さえながら立ち上がる笹見先輩。
うーん。
ここで男かどうかを言い出すあたり危ない神経の持ち主の気がするな。
「……えっと、話し合いをしましょう。武器は人間の英知ですが暴力は蛮族が使う措置ですよ」
「知るかよ」
ただまあ開幕にギフト能力を使わなかったのは評価する。
使っていたら本気で殺しに行くところだったからな。
「えっと……何でいきなり俺を襲おうと?」
「お前が真百合をこんな風にしたからに決まってるだろうが!」
「だそうですけど真百合は何か言いたいことありますか?」
「無いわね。強いて言うなら敬語はいらないわ。むしろ罵倒して欲しいわね」
いつも通りの真百合だった。
「やっぱコロス」
再びカッターナイフで、今度は眼球を狙ってきた。
流石に二度も攻撃されるのは嫌だったので、今度は腹パンで動きを止める。
「ぐぅあ」
くの字に折れ地面に膝をつく笹見先輩。
男女平等パンチに死角など無い。
圧倒、卒倒、絶倒なのだっ(キリッ)。
三度攻撃してこない様にカッターナイフを奪っておく。
攻撃手段を奪った以上この笹見先輩が俺に向かって攻撃するためにはギフト能力を使うしかない。
ただ学校で正当な理由が無い限りギフトを使うのは禁止されている。
…………その拘束守ってやる奴を見たことないがな。
「…………てめえ」
「はい?」
「決闘だ。決闘を申し込むぜえ」
まあ決闘は互いの合意があれば出来るのし、決闘による殺人は認められているが
「断る」
俺がやるメリットが一切ない。
「逃げるのか。ほんと男は軟弱だぜぇ」
「……」
どうしよう。殴りたいこのドヤ顔。
落ち着こう。ここはクールに
「先輩。俺を倒したければ時雨を倒してからにしてください」
「ちょっ?それおかしくねぇか?」
「何もおかしくないな」
何もおかしくない。
「いいぜぇ。ただ――――」
笹見先輩はギフトを発動する。
「犯された聖少女」
「ぐああああああああ」
時雨が悶え苦しみだした。
「ちょ、時雨!?」
教室の床の上で暴れまわる。
「オレェのギフトは単純明快で痛みを与えることだぜぇ。この男はハブに噛まれた程度の痛みが感じているはずだぜぇ」
ガチ拷問用のギフトじゃないか。
そんな能力一般の高校生が持つな。
「止めてほしかったらオレェと決闘しろ。そして負けたら真百合に二度と近づかないと誓え」
「…………誓う。だから止めろ」
苦しむ時雨を見て俺は誓うしかなかった。
それを聞いた笹見先輩はギフトを解き、時雨は痛みから開放される。
「はあ……はぁ」
息は荒れているがとりあえずは大丈夫のようだ。
まあ実際約束の件は口約束だし何かあれば反故すればいい。
そういう考えがあったから俺は二つ返事で返したわけだがその決断は間違っていた。
「聞きましたわ。その台詞」
見るからに高飛車なお嬢様の金髪縦ロールが後ろから割り込んだ。
「アタクシのギフト能力は躾けられた支配者。口約束を無理矢理守らせるギフトですわ。アタクシはしっかり聞きました。決闘に負けたらマユリに近づかないと」
おいこら。
そのギフトはチーt……じゃないな。
口約束を守らせるなんて回りくどくて受動的だ。
一回話を聞いて発動しなくてはいけない。
様はギフト効果発動まで遅い。
使えるかもしれないが強くはない。
それに能力としての弱点一つ思いついた。
まあ高校生程度が持つギフトか。
一週間前の所為で、ぶっちゃけそのくらいなら驚かなくなった。
慣れって怖いな…………
「ただし、決闘の日時と場所は今日の昼休み、ここの屋上でお願いします。あと五分で一限が始まる。先輩方は受験生なんですから授業はちゃんと受けるべきだと思いますよ。それともすでに就職決めているんですか?」
「てめえを殺すのに五分もいらねえがいいぜぇ。最期に真百合との一生の思い出でも作ってろ」
約束は取り付けた。
そしてこの約束は契約として受理される。
もう後戻りはできない。
俺は絶対に笹見先輩とした約束を守らないといけない。
ただ本当にこの決闘は不毛だ。
何で笹見先輩が俺を殺したいまでに敵視するのか、
しかもそれを他の皆も同意してやっていることが。
まるで俺が悪いみたいな流れだった。
だから、本当に俺自身に何一つメリットが無い。
強いて言うなら真百合と話せなくなることくらいだ。
それで俺は死ぬわけじゃないし真百合だってそうだ。
話せなくて死んじゃう人間なんていない。
いたら見てみたいものだ。
折角だ。
この先輩に一つ教えておくか。
「先輩」
「何だ?」
「こんな無駄なこと止めてさっさと受験勉強した方がいいよ」




