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チート戦線、異常あり。 作者:いちてる

4章 八重崎咲と文化祭

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終わらないエピローグ

「宝瀬真百合、十七歳です」

 このクラスにやってきたのは転入生ではなかった。

 在校生だ。

 しかも先輩。

 博優学園において校長よりも有名な生徒会長。

 三年十組に所属しているはずの宝瀬真百合だ。

「えええ!」「なんで?」「生徒会長が?」

 クラスメイトが騒ぎ出す。

「静かにしろ。えっと、本人・・強い希望・・・・で学年を一つ下げることになった」
「そんなこと出来るんですか?」
「義務教育じゃないんだ。金を積めば高校は何でもできる」

 先生が言うのならその通りなのだが一体何の目的があってわざわざ学年を一つ下げたのだろうか。

「高峰先生」
「は、はい」

 平社員が代表取締役に呼ばれた時のような返事をした。

 高峰先生汗流しすぎ。

「立っているのも疲れたので座っていいかしら?」
「どどどどうぞ」

 声が裏返っている。

 そういや俺に重王無宮スクランブルキャッスルが通じなかった時もかなり慌てていたな。

 この人はきっとピンチになると慌てて正しい選択ができなくなるお人だろう。

「どこでもいい?」
「はい」

 直立不動で軍人を連想した。

 めっちゃかっこ悪いがな。

 さも当然とばかり先輩は俺の右隣にいる臼井に

「席、退いてくれるかしら」
「え?あのここぼくの席」
「退いてくれる?」
「あ、あの……」
「退、け」
「は、はいぃぃぃい」

 ここから先輩の顔は見えなかったが臼井がすごいビビっていた。

 荷物を持って転げながら後ろの席に行く。

「あ、嘉神君、偶然にも隣の席になったわね」
「そうですね」

 先輩はきっと廊下側の席が好きだったんだろう。

 うん、きっとそうだ。違いない。

「お、おい……」「これってあれだよなあ?」「うん。絶対目的嘉神くんだよね……」

 何やらクラスメイトがよからぬ噂をしている気がする。

 気がするだけなので放置することにした。

「えっと……嘉神」
「何ですか高峰先生」
「お願いだから宝瀬さんの機嫌を損ねないでくれ」

 いろいろ突っ込みどころがある。

 生徒なのに敬語を使ったり、何で俺に言うのかとかだ。

「何勝手に嘉神君に命令してるの?高峰先生は何様のつもりかしら?」
「ご、ごめんなさい」

 マジで宝瀬先輩はこの学園で権力持っているんだなと思う。

「というわけで今日のホームルームは終了だ。質問は受け付けん、以上だ」

 それだけ言い残し高峰先生は逃げた。

 クラスに一時の静寂。

 普通転入生がやってきたら質問タイムとなる所なのだが二人とも俺たちは知っているので質問する内容が無い。

 月夜さんだけならお帰りと声をかけれる所なのだが、宝瀬先輩がいるとそういう雰囲気になれない。

 そんな空気の中一人特攻を仕掛ける猛者がいた。

「えっと……宝瀬さんでいいんだよね。ワタシは八重崎咲っていうんだよ。よろしくね」

 彼女の名は八重崎咲やえざきさき

 八重崎は女子では唯一一年のころから同級生だった。

 つまりは何も能力を持っていない普通の生徒である。

 男女ともに人気があり宝瀬先輩と早苗などのギフト持ち以外では人気ランキング一位となっている。

 そんな彼女だからいろいろ問題児が多いこのクラスに入れられたのだろう。

 全くまとめ役になっていなかったけどな。

「そう。それで?」
「え?」
「私があなたと仲良くするために二年に戻ってきたと思っているの?」
「い、いえ」
「ならいいでしょ。私はあなたと仲良くする気なんて無いわ」

 クラスの空気が一瞬で凍り付く。

 これは何とかしなければ。

「駄目ですって。クラスメイトなんですから仲良くしないと」
「そうね。嘉神君の通りだわ。仲良くしないなんて言ってごめんなさい。呼称は真百合でいいわ。だからあなたも咲でいいわよね?」
「え、あ、はい」

 なぜだろう。

 クラスの空気が凍てついた。

「お、おい嘉神。これは一体……」
「何だ時雨?」
「いやおめえが誰に好かれようが勝手なんだけどよ、ここまでされるのはちょっとおかしくねえか?」

 時雨の言っている意味が分からん。

 ただ俺は先輩がこのクラスに来た理由に一つ仮説を立てた。

 先輩は一年間も殺され続けていた。つまり一年間丸々勉強をしていないのだ。

 つまり頭の中にかつて習った授業の内容が入っていない。

 三年の受験シーズンに全く頭に二年の内容が残っていないなんて絶望的すぎるので、現役を諦めて基礎から復習をしに来たのだと。

 そうだ。それ以外の答えはない。

 我ながら完璧な答えだ。

 完璧すぎて金田君も江戸君も真っ青だ。

「なんでしょうか。絶対よからぬ結論を出した気がするですね」
「ん?月夜さんなんか言った?」
「いえ。なにも。これはこれで面白そうなので少し黙っています」

 さて、そうと分かったら気を使わないとな。

「みんな少しは気を使ってやれよな。きっと先輩には先輩なりに色々と事情があるんだよ」
「「「…………」」」

 なんだその視線は。

 こいつは一体何を言っているんだと言いたげな視線だ。

「嘉神君、一つ言いたいことがあるわ」
「何ですか?」
「私はもう二年十組の宝瀬真百合よ。生徒会長はまだ続ける予定だけれどもう先輩じゃないわ。だから敬語はいらないし下の名前を呼び捨てで構わないわ」

 仮に先輩が同級生だろうが年上のことには変わりないのだが。

「どうしても名前が恥ずかしいっていうのなら、俺の雌犬、俺の性奴隷、俺の肉便器でもいいわよ」
「ちっとも良くねえよ!」

 まだ名前を呼び捨てた方がいい!

 序に敬語ではなくため口になってしまった。

 そんなやり取りをしていたがここは二年十組の教室なわけで同級生がいる。

 だからこの会話が聞かれたわけであり

「「「…………」」」

 やーめーてー!

 そんな目で俺を見ないで。

 とくに早苗。さっきからずっと黙っているけどそんな汚らわしいものを見る目で見ないで。

 生きるのが辛くなる。

 この空気を打破する方法を考えようとするが無理だ。

 いや正確にいえばあるのかもしれないが俺には思いつかないが正しいな。

 ただ空気を変えるのは俺だけじゃない。

 クラスのみんなは勿論、俺とは全く関係の無い部外者でも変えることができる。

 誰もが予想しなかった形で。

「真百合!?」

 乱暴に教室の扉が開かれた。

 全員がそちらを見る。

 そこにいたのは女性たちだった。

 以前お世話になった四楓院琥珀先輩の他に数人の女性が。

 そして扉を開けたのはショートカットで赤褐色の髪をもった目つきの悪い人だった。

 宝瀬せんぱ……真百合はそれを見て鬱陶しそうに

「おはよう。笹見水晶先輩」
「……!!」

 否応なしに空気は変わる。

 真百合と俺から真百合とそこにいる笹見水晶という女性に周囲の関心が移っていく。

 ただ、それがいい方向になるとは限らないが。


メインヒロイン→衣川早苗
今回のヒロイン→八重崎咲
現状のヒロイン→宝瀬真百合

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