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チート戦線、異常あり。  作者: いちてる
8章 人という名の
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修学旅行に向けて

サイコパスもここまでくると芸術

 修学旅行に行くためにはそれ相応の準備がいる。


 必要な物を持っていくために、自分の部屋で何が足りていないかを確かめながら荷造りをさせている。


 そして一つ忘れていたの思い出した。


「アンリちゃん。4泊5日の旅行に行くから準備しといて」


 俺は家事ができない。


 ぎりぎり荷造りくらいなら出来るかもしれないが、リスクリターンの関係ではこの薄紫の美少女にやらせておいた方がいい。


「男物の持ち込み品なんて、アンビ知らない」

「誰が俺のと言った。アンリちゃんのだよ。必要なものは一緒に買っておくから先に言っておいて」


 帝国にアンリちゃんを連れていく。

 俺の最善をするために。


「――何を言ってるの? アンビが帝国に? それってアンビに死ねってこと?」


 666の関係者だ。

 帝国人の怒りはとてつもないのは説明するまでも無い。


「多分死なないと思うから大丈夫」


 絶対とは言わないのがミソ。


感無量ナンセンスでアンリちゃんから発した音は届かないようにするから、自分からばらそうとしない限りはばれないでしょ」


 アンリちゃんは自分の声を全国放送しただけで、姿形は誰にも知られていない。


 だからそこにだけ注意していれば問題ないはず。


「アンビに拒否権がない事は分かってるから文句は言わない。で、それはいつ行くの?」

「10月27日から31日まで」

「そう」

「必要なのは早めにな」


 一緒に買った方が手間はかからない。


「女の人呼んで。生理的にお前に頼みたくないものがある」

「ふーん。あれ? 生理って頭からじゃなかった?」


 前回の生理は10日からだった記憶がある。


 多少前後はしても末までには帰るので、そういったものは必要ないと思うのだが。


「きも。なんで知ってるの」

「飼い人の管理くらいちゃんとするさ。飼い主としての責任はちゃんととるよ」

「きもいといったの訂正する。まじキモい」


 なろう小説だったら『奴隷の管理をするご主人様素敵です』なんていう流れになるはずなのに……この仕打ちはあんまりである。


 王道が王道たる由縁は、それで人気が取れるから。

 誰もやらないことは、やっても無意味だからなのに、なんで作者はこんな展開にするのか。


「でもいい。いつかはちゃんと懐いてくれる。俺はそう信じてる」

「御爺様はあんたの事を曲がりなりにも評価していた。それは間違いじゃなかったけど、その想定を間違えていた。英雄の類じゃなく、異形の類として見ていれば、結果は変わっていたかもしれない」


 それは無いな。

 仮に俺が化物の類だとしても、あいつは勝てる星の人間じゃない。


 負けるべくして負けただけ。


 そんなことをいったらアンリちゃんは傷つくので言わないが。


 主の心、僕知らずとはこのことだな。


 しかし女の人を呼べなんて言われても困る。


「母さんでいい?」


 こういったことを頼めるのは、自分の母親しかいない。


「死神? いいけど」


 そういや母さんは純白の死神と言われていたな。


「話は変わるけど、アンリちゃんは俺の母さんの事どれだけ知ってるの?」


 よくよく考えてみたら、俺は母さんのことあんまり知らない。


「逆に聞くけど、お前は何を知ってるの」

「異端異能者の殺害かと聞いていたし、最初は納得したんだけど、よくよく考えたらおかしいことに気付いた」


 公にはされていないが、約一名を除いたPvsPならば母さんが最強らしい。


「そんな戦力を、悪人の殺害なんかに使うだろうか」

「自分の母親の能力も知らないの? 死神の能力は『能力の無力化』だったはず。確かに強いけど役には立たない」


 やはり支倉。情報はそれなりに持っている。


「そりゃアンリちゃんが考える『能力の無力化』ならばそうかもだけど、俺が考える『無ノ少女ラッキーガール』ならそんなことはない」


 永久機関を作ったりとかは簡単に出来そうなんだがな。


「そう? 御爺様はお前の父親を出来損ないといっていたけど、母親は肝心な時に使えない女といっていたから」


 初めて自分の母親の周りの評価を聞いた。

 母さんの事はそんなに嫌いじゃ無かったりするので、そこはかとなく悲しい。


「それとさっきまでは流していたけど、アンビじゃなくて、アンリと言うように」


 死んだことになってるけど、名前は世界中に広まっているんだから。


「……分かってる」


 こいつは手綱を俺が握っているため心配はしていない。


 俺の機嫌を損ねれば一発で死ぬのは分かっている。

 俺は人間が出来ているためそんなことしない、そういうことも分かっている。


「要するに旅行をペットに連れていくから、吠えないようにしなさいってことでしょ」

「まあそうなる」


 この年齢にしてその理解力。

 何気に英才教育は受けてきたか。


「それでアンビを連れていく理由は教えるの?」

「知りたいなら教えてやってもいいけど、知らない方がいいと思うよ」

「……教えて」


 そう本人がいうのなら教えてやろう。


 説明中。


「……知らなきゃよかった」


 アンリちゃんの表情はいつもの通り変わらなかったが、顔色は目に見えて青ざめていた。


「大丈夫。まず使わないと思う」


 だから安心してほしい。


「使う使わない以前に、そんな発想をすること自体あり得ない」

「そう?」


 割と当たり前の考えだと思うんだが。


「お前は本当に、人を人とは見ていない。だからこういうことを平然とできる」

「…………」

「飼い主様。教えて。お前の大切なものは、本当に大切なの? ただ大切にしないといけないから大切にしているだけなんじゃないの」

「――――はあ」


 ため息一つこぼし、彼女の頭を抱き寄せる。


 そして彼女の口に強引に舌を入れ、念入りにかき回す。


 昨日テレビでうるさい女を黙らせるためにはキスをするのが一番だといっていたので、早速実践をした。

 仮に黙らなければ苦情の一つでも送る、最悪の場合脅迫状を送って中止させることも考えていたが


「ぁっ……うぅ」


 無事黙らせることに成功したので満足した。


 テレビも案外捨てたもんじゃないな。


 さっきまで青かった顔色が、今度は赤く染まっている。


 しかしその表情が意味するのは、すぐに変わることになる。


「ふざけっ――んっぅ」


 怒声と平手打ち。


 弧を描きながら向かってくる右手を捕まえ、今度は床に押し倒す。


 やっぱり苦情を一つ入れておこうと思いながら、もう一度さっきと同じようなことを繰り返した。


 舌を入れるディープキス。


 噛みついて抵抗しようとしたが、力の差で不可能だと分かるのに30秒

 それでも暴れるのを止めるのに30秒

 もう一度暴れないようにするため念を入れ120秒


 計3分間の口づけ


「ふう」


 キリをよくするためあと2分続けても良かったのだが、飽きがきたのでやめた。

 さて、アンリちゃんはどうなってるかな。


「……はっぁ はぅぁ っ ぅぅ」


 確かに黙らせることには成功したが、顔は明らかに真っ赤に染まり、焦点も定まっているように思えない。


 少しやりすぎたかな? 小反省。


「水、要る?」


 透明なプラスチックのコップと、透き通ったミネラル水を創造


 黙って受け取り飲み始める。


 しかしその目は何だ。


 にらめっこでもするつもりか。


 よろしい、ならば絶対に勝つ必殺技を思い付いた。それを早速やって見せよう。


 一回0円のスマイルを作り、鼻先30㎝まで近づき一言


「可愛いな、アンビ」

「ぶっ――」


 飲んでいた水を吹きだす。

 汚いなあ。


「何やってんの!?」


 動揺するアンリちゃん。


 そりゃにらめっこなんだから、笑わせて当然


 そう言おうとしたが気づいてしまった。


 先にスマイルをした俺は、にらめっこでは負け。


 自分の足を踏んでこけるようなミス。


 ものすごくダサい。チョーダサい。そして何より恥ずかしい。


「言わせるなよ。恥ずかしい」


 今度は照れながらそっと囁いた。


「それとももう一回してあげようか?」


 さっきのにらめっこは無し。

 今度は真面目に変顔でもして笑わせてやる。


「いい」


 俺を押しのけてその場から立つ。


「どこ行くの」

「……トイレ」


 トイレなら仕方ない。


「俺達最初は何の話をしてたんだっけ?」

「修学旅行のことでしょ」


 あーそうだったそうだった。


 忘れてた。


 それさえ思い出したらアンリちゃんは用済み。


「長くても気にしないから好きなだけ行っておいで」

「やっぱお前いつか死ね」


 そういうアンリちゃんだが、少しだけ棘が無くなったような気が…………するのかなあ? うーん。分からん。






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