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チート戦線、異常あり。  作者: いちてる
7章後編 プロジェクト ノア
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宝瀬家の不愉快な人達 1

 真百合と弟君が部屋で引きこもったため、特にやることはない。


 まだ早苗の件から3日しか経っていない。戻るには早々。

 仕方ないので犬と遊ぶのだが、イヌマユの方がよく懐いて遊んでいて楽しかった。


 犬のくせに恥ずかしくないの?

 こうなったら読書でもするかと思い書庫にむかっているとナツミちゃんと出くわした。


「あぅ……」

「ねえ。暇だから話し相手にならない?」

「いいんでずが?」


 あ、また泣いた。嬉しくてもなくのか。

 垂れ流し女とでも言ってやろうかなと失礼なことを考える。


「あの……だったら最近流行のファッションとか…………」

「お? ナツミちゃんは男に女の流行を聞くのか?」

「ひぃい! ごめんなさい!!


 分かった、これがこの子の付き合い方だ。


「とはいえ何となく何を知りたいか分かった。軟禁から逃げてきたから外の世界の情報を知りたいんだな」

「そうです! すごいです!!」

「だったら何がいい? ドラマ? アニメ?」

「ネット小説を…………」

「ネット小説? なんで?」

「私の娯楽、読書以外許されていないんですぅ。本さえあれば今の所はいいんですけど少し別のジャンルに挑戦したくて……」


 だったら一つうってつけを知っている。


 覚悟して聞くがいい。




「カク○ムに登録されている『チート戦線、異○あり。』って小説が超おすすめ。アドレスはttp://kakuyomu.jp/works/4852201425154984970の冒頭にhをつければOK」




「それは大丈夫なんですかぁ?」

「へーきへーき。直リンクしてないし、商業目的でも無いただの宣伝だから」

「だったらいいんですぅ。ただそれ私『小説家にな○う』で見たことあるんですけど、文章が酷すぎて即ブラバしたんですぅ」

「ならば猶更おすすめしよう。文章は『な○う』よりまともになっていると保証する。それにしっかりと改稿してあるからより面白くなっている。読まなきゃ損だな」

「だったらすぐにフォローを……」

「おっと、それは良くない。あくまでもフォローは読者の意思だ。フォローや評価は善意で成り立たないといけないからな」


 これにて宣伝終了。のってくれたナツミちゃんにも感謝。


「他のはないんですかぁ?」

「俺の立場で出来るのはこれくらいだな。あとはなろうで日間上位でも適当に漁ってればいいんじゃない?」


 もう後はどうでもいい。やるべきことは終えた。


「漫画とかは読まないの?」

「ZI○で」


 ぶん殴った。俺は正しい。


「金持ちがそんなの使ってんだ! 恥を知れ!」

「ひぃいいい!」


 この後滅茶苦茶暴行した。




「ふぅ、すっきりした。オラ立てよ」

「びぐっ、ひっく」

「泣くんじゃない。途中から楽しんでいただろ」

「そんなこと……ないですぅ」

「は、口ではそんなことを言うが体は正直だったじゃないか」

「酷いですぅ、そんなこと思ってないです」

「だったら明日もここにくるから嫌だったらどこか別の所に行くんだな」


 翌日。


「ふん、やはり来たか」

「違うんです、(本を読みたいって)体が疼くんですぅ。嫌ですけど……嫌なんですけど」

「ハハハっ、そんなに(書庫に)いきたいか」

「はい! (書庫に)イカせてください!!」


 無事本日もノルマ達成。


 少しだけナツミちゃんと仲良くなった。





 その日の昼、弟君を引き連れて高級デパートがある東京までワープ。

 約束してあったお手伝いの為だ。


「それで何を買うんですか?」

「考えたんだけど、アロマかアイマスクかどっちかなんだけど、弟君はどっちがいいと思う?」

「アイマスク一択」

「え? そうなの?」


 二択を聞いたが正直アロマの方がプレゼントとしてマシだと思っていた。


「普通ならアロマなんですけど、姉さまにプレゼントするなら目隠しの代わりになるアイマスクの方がいいかと思います。あと姉さまは別の匂いを嗅ぐのに忙しそうってのもありますね」

「うーん」

「だったら両方買えばいいじゃないですか。あり得ないことですが気に食わなかったら僕が引き取りますし、お金がないのならバイト代として払いますよ」


 プレゼントを1つではなく2つ贈るなんて庶民の俺には考えもしなかった。


「金は貰ったものがあるからな。今俺は小金持ちだ」


 と、弟君のアドバイスがあり15万のアロマセットと2万のアイマスクを購入。




「と、いう訳ではい。これ」

「…………」

「正直真百合にはずっと迷惑かけていたし、これからも迷惑をかけると思う。もちろんこんなので恩を返せるなんて思っていないけど、ある程度形にしないといけないと思ってな。夏のお中元だと思ってくれたら嬉しいっ……えっと真百合?」


 返事がない。埴輪の様だった。


「えっと……生きてる」

「――うん」

「聞いてた」

「うん」

「ひょっとして要らない?」

「ううん」


 首を大きく横に振る。先日の尻尾を思い出す。


「ありがとう、本当に……――嬉しい!」

「えわっ! また泣いた!!」


 良かったねナツミちゃん。君の泣き虫はちゃんと遺伝してるよ。







 で、これ終われば良かった。

 これで終わっていれば全ては丸く収まっていた。




 その日は8月の4週目、弟君と妹ちゃんが帰る日。


 自分で書いた絵を、飛行機で輸送。そのついでにナツミちゃんを強制送還するという計画。


 2人を玄関でさよならの挨拶をしているのだが……真百合が部屋から出てこない。


「どうしたんでしょうか」

「さあ、ナツミちゃんは何か知ってる?」

「し、しりmせん」

「ん?」

「知らないですぅ」

「「…………」」


 ふうん。そう。


 気になったので、贋工賜杯フェイクメーカーを使い、複製体を真百合に送りつける。


『真百合が部屋から出れないのは、何か妹と関わりがあるのか』というメッセージを添えて。


 流星のように素早い動きで真百合がやってきたのだが…………嘘だろ?

 俺が宝瀬先輩呼びしていた頃、殺し合い事件が始まる前に一度怒らせたことがある。


 その時ここまで怒ったことはないって真百合は言っていたのに…………今の彼女は怒髪天と表現すべき形相になっている。


 まずやったのはナツミちゃんに目潰し。

 流れる動作で首を握り持ち上げ首を絞める。


「ちょっとこいつのバッグの中を確認してほしいのだけれど」


 男が女のバッグを覗き見るなんて……とかそんな事言う余裕はない。

 怖かったので、大人しく従うと…………


「あ、これ」


 俺が真百合に上げたアロマキャンドルが入っていた。


「盗んだのか!? 出来損ないの屑だと思ってはいたが、ここまでとは」


 弟君は呆れたように……いや、実際に呆れているんだろう。

 家族に対して嫌悪から侮蔑に。


「そう、お前ね」

「ひいいぎぃい」


 恐怖故になのか、呼吸ができず故になのかは分からないがナツミちゃんは失禁した。


「何か言いたいことは」

「だって……ずるいです」

「ずるい?」

「そうです! 私だって男の人からプレゼント貰いたかったです! 姉様は全部持ってて……少しくらい私に分けてくれたっていいじゃないですかぁあ」


 自白した。自分が物を盗んだって白状した。

 あーあ、これはもう駄目だな。


「全部ですって」

「全部です。名前も名誉も才能も全部全部、姉様の! 代わってください」


 入れ替えるギフトの持ち主が変わってほしいと請うた。


「私は宝瀬が嫌いでどうしても宝瀬がついてくる名誉もいらない。才能だって好かれる才能だけあればいい。欲しければあげても良かったわ。ただ――――お前は絶対にやっちゃいけないことをした。分かるわよね? 宝瀬の女に男絡みでちょっかいをかけて無事でいられると思っている?」


 今でも殺しそうな迫力。流石に殺しはまずいと声をかける。


「えっと真百合――――」

「嘉神君。これは私の誇りの問題。仲間である貴方のから貰った誠意を、こいつは奪ったの」


 そう言われたら何も言えない。

 中間からの誠意を奪われたら、確かに八つ裂きにしてしまうな。


 うんうん。正論。


「殺しは良くない。ただ――――」

「分かったわ。殺しはしない」


 『殺しはしない』の意味を理解出来ないほどここに居る人たちは愚かではない。


 皆が皆、真百合が何をしようとするのか、そしてナツミちゃんがこの後どうなるか察した。


「た、たた……だれがたすけて……お願いします助けて……・・ぇあたぎゃあああああ」


 引きずりながら真百合はナツミちゃんを運ぶ。

 恐らく行先は地下室。


 かつて一度俺が監禁された。

 そこに拷問具が置いてあったが…………まさか、本当に使うとは誰も思っていなかっただろう。




 何をしたのか聞いたが、答えてきたのはここでは載せられない内容だったため割愛する。


 可哀想だと思うが、仲間の誇りを穢したんだから仕方のないことだ。



そろそろ本パートに入るはず


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