エピローグ的なもの
第一章最終話です。
安定の超展開
目が覚めるとそこが天国でも地獄でも見知らぬ天井ではなかった。
普通に洞窟の天井だった。
試しに頬をつねってみたが痛みはなかった。
よかった。まだ生きてたみたいだ。
てかあれ?早苗はどこいった?
俺は、洞窟の外に出た。
早苗はすぐそこにいた。
早苗は山草で朝食を作っていた。
「うむ?起きたか。一樹」
「起きたのはいいけど何これ」
「何これとは失礼だぞ。朝食に決まっておろう」
それは分かる。
「水どこにあった?」
「近くに川があったぞ」
「鍋は?」
「不法投棄されていたのを使った」
うん。なるほど。
最後に一番重要なことを聞く。
「それ食べて大丈夫な食べ物使ってんの?」
「安心しろ。食べられるものと食べれないものの区別くらいついている。現に私は定期的に山に登っていると話をしていただろう」
確かに。キノコが取れるって言っていた。
「おっけ。信用しよう。この程度のことで早苗を信用しなければこれから戻るときに成功できるとは思えない。そしてなにより文字通り腹が減っては戦ができないからな」
「その通りだぞ」
俺は切り株の椅子に座った。
「食べてもいいか?」
「もう少し待ってくれ。私も一緒に食べる」
そうだな。それがいい。
「「いただきます」」
早苗の作った朝食は、有り合わせの山菜で作ったとは思えないほど美味かった。
ていうか美味すぎだ。
「早苗は魔法でも使えるのか」
「………あまりこういうことを言いたくはないのだが一樹の食事レベルは低すぎるぞ」
確かに俺は料理できないし母さんの料理が底辺クラスだ。
「いや、それを加味しても早苗の料理がうまいってことは変わりないって」
「そうか。それはよかった」
早苗は花を咲かせるような笑顔で答えてくれた。
朝食をとり三十分休憩。
気力体力ともに回復したところで
「そろそろいくか」
「うむ」
「もしもの時の為に言い残す言葉はないのか」
「無い。何故なら私たちはここでは死なないからだ」
やっぱかっこいいな早苗は。
「ふう………」
俺は次元穴を発動した。
自分でも惚れ惚れする程完璧な移動だった。間違いなく早苗の敷地内だ。
「間違いないよな?」
「ああ。間違いないぞ」
なのに一度もこんな景色を見たことがない。
辺りは気持ち悪いほど真っ赤に染まっていた。
周りには無数の死体が転がっている。
そしてその中心で
「お?遅かったじゃないか。心配したぞ」
一人の男が座っていた。
そして俺はその男を知っている。
「父さん」
依然見せてもらった写真と全く変わらない。
異能者殺しの異名を持つ男。
間違いなく嘉神一芽本人だった。
「大きくなったな。一樹」
父さん笑みを浮かべながら俺の元に歩み寄る。
「来るな!」
全身血塗られている状態でその笑みは本当に気持ち悪い。
「ああそっか。オレはさっき人を殺した所だったな。忘れてた」
それは彼にとって殺人は何の意味のない行為であるということを物語っている。
「心配したんだぞ。勝手にどっか行って」
「ふざけんじゃねえ。あんたは!人を殺して!何も思わないのか」
「思わないね」
予想通りの返答だった。
「オレにとって殺しちゃいけないのは育美と一樹くらいだ。あとはそこにいる女だって殺してもかまわない」
一瞬俺を見て
「こんな風にな」
瞬間移動で、早苗の背後を取った。
「早苗ぇ!」
俺は鬼人化で父さんに襲い掛かる。
「おお。一樹もやはり近距離万能型か」
俺は父さんのギフトは知っている。
口盗め
キスした相手が能力者の場合、その能力を問答無用で奪うことの出来るギフトだ。
ある意味俺の口映しの上位互換と言える。
そしてもう一つ、
俺の父親は早苗の母親からギフトを奪っている。
最強の近距離ギフト。鬼神化を。
「母様の敵!」
「やめろ!!!」
俺の発言を聞いてくれた。
父さんが。
父さんは何も防御をとる動作はしなかった。
が、鬼人化の一撃を受けてダメージを受けた様子はない。
「運がよかったな。女。一樹がいってくれなかったら死んでたぞ」
早苗は自分と父さんとの力の差に絶望しかけたが
「鬼神化」
最強の一撃で反撃する。
「さすがに、その攻撃をまともに受けるわけにはいかない」
片手で止めた。
ギフトを使わずに。
「なあ一樹。こいつ殺していい?」
「駄目に決まってるだろ」
「そっか」
掴んだ腕を放り投げる。
早苗は一回転して着地するが、心に受けたダメージは大きいはず。
「一樹は来ないのか」
「来るわけないだろ。いくらなんでも勝てないと分かって挑むのはたまにしかしない」
「そうか。何せ父さんは三十六個のギフトがある。一樹の十二倍だ。仕方ないか」
「いや。九倍だよ」
鬼人化、雷電の球、柳動体、そして次元移動の四つ。
多分数え忘れたのは次元移動の奴だろう。
「………そうか。そうだったな」
何やら父さんが悲しそうな目をしたのは気のせいだろうか。
「父さんは本来一樹たちをかませ白仮面から逃がす役割だったんだけど、まさか一樹一人で逃げ切れるとは思わなかった。すげえな」
「そりゃどうも」
父さんは十人相手したのに服に傷一つ付いちゃいない。
一体どんな化け物だよ。
「父さん。あんたいったい何でこんなふうになったんだ」
「こんなふうとはどういう意味だ」
「何で、殺し屋なんかになった!」
俺の物心のつく前までには父さんはいたという話だった。
逆説的に考えれば殺し屋になったのは十年位前ということになる。
「………仕方なくが一番しっくりくる理由だ」
そういうとまるで逃げるように死体とともに去って行った。
俺と早苗の戦いは煮え切らない不完全燃焼のまま終わりを迎えたのだ。
「あーら。一樹くん。久し振りね」
あれからまた眠くなり早苗の家で昼寝を取らせて貰ったからすでに夕方になっている。
母さん激オコぷんぷん丸。
「母さん、ガチでどうしようもないことが起きた」
「へえ。一体何があったのかな?」
「父さんと会ってきた」
笑顔が固まった。
「それはホント?」
「間違いなくホントだ」
「そう………遂に来るんだ」
「何の話だ?」
「いーや。一樹くんには関係のない話です」
そりゃどうも。
「それに一樹くんは絶賛停学中なんだから大人しくしてなさい」
そうだった。俺停学中の身だった。
本当に今日は色々なことがあった。
化け物に襲われ、変態に襲われ、蒸発したと言われた父さんに会った。
怒涛の一日だった。
これ以上の一日はもう二度とないだろうと思いながら、俺は停学中の課題に取り掛かった。
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「まあこんあものかな」
一人の女がテレビを見ていた。
「ジョセフランフォード。変に感づかなければ死ぬことなかったのに。可哀想」
彼女は彼女が殺したランフォード夫妻に憐れみをかける。
「次生まれ変わるときも夫婦にしてあげるから許してね」
そう言って彼女はテレビを消す。
「さてと、そろそろかな」
予想通りに得体のしれない生命体が彼女の元にやってくる。
「おかえり。イス」
彼女はその生命体を掌の上に乗せ、
「えい」
潰した。
その行為はまるで人が蚊を叩くときと同じような動作だった。
「これで証拠隠滅っと」
ランフォード夫妻の時と違い彼女は微塵も罪悪感はない。
「でも落第点でしょ。ちょっと情報与えてしまったけど主人公を『物語』に引きずり出しただけで十分かな」
彼女は盤上の駒を見ながら
「先手は打ったよ。次は君の番だ。信一君」
一応書き溜めていたのですが、途中から話が変わった(具体的には衣川早苗2あたり)ので更新が遅れたり誤字が多かったりしました。
初投稿なので相場がどれくらいなのかはわかりませんが一日千アクセスの時はドン引きしました。いい意味で。
何しろ最初は100くらいでしたので。
この話が掲載される時点で九人の方がお気に入り登録をしてくださいました。本当にありがとうございます。
次章はもっとトンデモ展開にする予定です。
章タイトルは宝瀬真百合とコロシアイ(仮)
なお、次回のヒロインが作者的なメインヒロインだったりします(笑)
タグのヤンデレはこの人のためにあります。
投稿ですが一回練り直す必要性が出てきたのでキャラ紹介を挟んで数日後になるかもしれません。
最後にもう一度、お気に入り登録をしてくださった方々、また読んでくださる方々ほんとうにありがとうございます。