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チート戦線、異常あり。 作者:いちてる

1章 衣川早苗と化け物退治

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白仮面

この小説はR-15であり残酷な描写があります。
特にこの回は色々と酷いです。
「この事件は君の為に作られたんじゃないかと」

 ジョセフ・ランフォードがそんなことをいった瞬間、彼の体が真っ二つに分かれた。

「え?」

 あまりの出来事に誰一人として現状を理解ができなかった。

 彼は腰から上が地面に落ちていき、切れ目からは大量の血が噴き出す。

「コル……ネリア……」

 妻の名を呟き、ジョセフランフォードはあっけなく絶命した。

「………ッッッ!」

 コルネリアさんが彼の亡骸を抱きかかえる。

 そして力のこもっていない手で、力の込めることのない手を精一杯握っていた。

「おっしゃぁ。まずひとーり」

 振り向くとそこに白仮面がいた。

 コルネリアさんが殺した白仮面の死体はまだ地べたにあるので、恰好が同じだけの別の人間だろう。

「せんぱい。ずるいっす。おれも殺りたかったっす」

 そして白仮面は一人だけじゃなく十人いた。

「しかたねえ。じゃあっちの女やるよ」
「うっひょー。マジっすか。いいんすか。やっちゃいますよ」

 そんなこと言いながら一人の白仮面は拳銃を構える。

 そして発砲。

「………」

 コルネリアさんは自身のギフトで銃弾を止めにかかる。

 おかしい。なぜ俺は銃の軌道が見えている。

 遅すぎるぞ、あの銃弾。

「うひょ」

 急に銃の軌道が変わる。

 そして今まで遅かった分、加速してコルネリアさんの脳天を打ち抜いた。

「どっすか。せんぱい。おれもなかなかのもんでしょ」
「………」

 コルネリアさんを殺した白仮面の男はジョセフさんのように上半身と下半身が分裂した。

「馬鹿野郎!おれが殺せっていうのは日本人の方だ。あいつはおれが殺したかったのに。このくそ役立たずが」

 わずか一分で三人の命が無くなった。

 何だこれは。

 何なんだこいつらは。

「このキチ〇イ共が」

 衣川さんは怒りを露わにしている。

「お前ら本当に国家の機関か!恥を知れ人間の屑が!」

 俺とあった時よりも怒っている。

 ただ待て、こいつらの異常性に圧倒されていたが、さっきあいつなんて言った。


『馬鹿野郎!おれが殺せっていうのは日本人の方だ。あいつはおれが殺したかったのに。このくそ役立たずが』


 つまりこいつは衣川さんを殺せと言っていたことになる。

「おいてめえ!何で彼女を殺す必要がある!」
「ああ?理由なんてねえよ。強いて言うなら二人殺すより四人殺したほうが楽しいだろ」

 マジモンのサイコ野郎だった。

 周りの白仮面も特に反応していないところを見るとこいつと同等と考えていいのだろう。

 周りは真っ暗で、俺のお先も真っ暗だ。

 ………

「衣川さん。動けますか」

 俺は衣川さんにしか聞こえないように話す。

「動くことには支障はないが、恐らく鬼人化オーガナイズはしばらく使えん。鬼神化オーガニゼーションは言わずもがなだ」

 実際動けるのは俺一人か。

「衣川さん。聞きたいんですけどこのまま殺されるのを待つのとワンチャンスを狙うのどっちがいいですか」
「嘉神、それは選択肢になっていないぞ。断然に後者だ」

 そっか。

 やってみるしかないか。

 正直出来るかどうか分からない。

 いや、出来たところでどうなるかわからない、急所を三回連続で引き当てる必要がありそうな展開だが、一応まだ引き分けには持ち込める。

「衣川さん。俺が殺すって言ったら松明を思いっきり上空に投げてください」
「うむ。他には何かないのか」
「出来るだけコルネリアさんたちのそばにいて」
「分かったぞ」

 何とかなるか自信はない。

「失敗しても文句言わないで下さいよ」
「大丈夫だ。私はお前を信じているぞ」

 ならばやりきるしかないな。

「確認するがお前たちは俺達を消す気で間違いないんだよな」
「そうだがなんか遺言でもあるのか」
「いいや。強いて言うなら次に会う時、お前ら全員殺す」

 衣川さんは松明を上に投げる。

 白仮面の連中はほんの一瞬、ほんの一瞬意識が上空に向かう。

その間に俺は死体となったコルネリアさんの元に行き、まだ温もりが残っている彼女の唇に己の唇をつける。

 そしてそのまま、彼女のギフトを使用した。






「いってええええええ」

 体が引き裂かれたように痛む。

 ただ痛むということは生きているということだった。

「嘉神……何をした?」

 衣川さんは俺に質問をした。

 よかった。生きてた。

「勿論ギフト使いましたよ」
「だが何のギフトを使った?」
「もちろん、コルネリア・ランフォードさんのですよ」

 俺の賭けは口映しマウストゥマウス)が死体にも有効であるということ。

 そして不完全のギフトのままで難易度の高そうなコルネリアさんのギフトを使用できるかということだ。

 そもそもジョセフさんのギフトは化け物を作るだけで上空から降ってこさせるような芸当はできない(はず)。

 だからその化け物の運搬のためのギフトが恐らくコルネリアさんのギフトだと考えた。

 現に、俺が初めて一人で戦ったときや本体が現れたときワームホールみたいな何かが出てきていたからほぼ間違いなく会っているという自信はあった。

 ただ自信があったところで俺が使えるという自信は無かった。

 ぶっつけ本番でなるようになるしかなかったが本当になるようになってよかった。

 衣川さんはほぼ無傷のようだが、俺は切り傷が多数。もっと酷いのはランフォード夫妻だ。

 死体だったとはいえコルネリアさんの下半身はすでに無くなっていた。

 ジョセフさんの上半身もさらに右側が無くなっている。

「でも凄いと思いませんか。これ」
「ああ。確かに」

 ランフォード夫妻は死んでから一度も手を離していなかった。

 死後硬直で強く握られていたと野暮な意見も出来なくはないが、それでもこれは愛で死後も一緒になったと考えるのが妥当だろう。

 それにしてもこのギフト難易度高すぎ。

 便利といえば便利なのに間違いないが、失敗したら即死クラスのダメージなんて使ってられない。

「ところで嘉神。ここはどこだ」
「さあ」
「おい待て」
「冗談です。ここは富士山ですね」
「そうか。富士山か。ならば安心……できるか」

 俺達のもと住んでいる場所は関西なので結構遠くまで来たな。

「もしかしてだ。ここは富士の樹海か」
「まあそうなりますね」
「………嘉神、いいたいことはあるか」
「ごめんなさい」

 素直に謝る。

「このままだとどのみち死んでしまうではないか」
「………」

 そうだな。うん。

「どうしましょう」
「嘉神、お前は他の場所に行けるのか」
「……無理っぽい。運が良ければ出来るかもしれないけど、サイコロを五回ふって6を出し続けた方が簡単な確率で」
「元いた場所なら」
「五割くらいで」

 ここまで来た時と逆のイメージでやればいいからだいぶ楽になるといえる。

「仕方あるまい。戻るか」
「いやいや。戻ったらここまで来た何の意味もないでしょ」
「何も今すぐ戻るとは言っていないだろ。今日は休んで体力をつけて戻る」

 確かに鬼神化オーガニゼーションを使える衣川さんは十分な戦力となりえる。

「それで衣川さん。提案があるんですけど」
「なんだ」
「この二人。埋めてあげましょう」
「そうだな。それがいい」



 穴を掘っている最中

「私からも一ついいか」
「なんですか?」

 一体何を言われるのだろうか。顔を変えろとか?

「その言い方だ。私に対して余所余所しい」

 そんなこと言われてもな。

「じゃあ俺にどうしろと」
「まず、私を呼ぶときは早苗でいい。そっちの方が速くてすむからな」
「ええー」

 何となくいやだ。

「現に嘉神、お前は化け物と共闘するとき呼び捨てにしていたではないか」
「げっ」

 うやむやにする気だったのに……

「どうだ。言ってみろ」
「早苗」

呼んでみた。

「うむ」

 満足そうに頷いて

「それと私も一樹と呼ぶ。文字数は変わらないが何せ嘉神は言いにくい」

 たしかに濁点入りは言いにくいともいえる。

「分かった。早苗」
「何だ一樹」
「呼んだだけだ」

 確かに文字的には少なくなったな。

「バカ」
「何でバカにされなきゃならないんだ。ばーか」
「うるさい、ばかばか」

 これこのまま続けたら終わらない無限ループに入るのでやめた。

 そうこうしている間に、穴を掘り終えた。

「えっと……健やかなるときも病めるときも……」
「それは結婚式の挨拶だ」

 そうだった。

「早苗はやり方知ってるか」
「知らん」

 男らしく言い切った。

「問題なのは弔う心だ。儀式など必要ない」

 格好いい。

「じゃ、合掌」

 しばらくの沈黙。

 大体百秒で合掌をやめる。




 その後、俺達は運良くというより奇跡的に洞窟を発見しそこで眠ることになった。

 明日になったら戻るといったが、そもそも白仮面が俺達を見つけ出し殺しに来るかもしれない。

 本来は警戒の必要がある局面だが瞼が眠くてしょうがない。

「私達、次起きるときは来るのだろうか」

 早苗も同じことを考えていたらしくそんなことを聞いてきた。

「一樹。その……だな。手、握ってくれないか」
「何で?」
「怖いのだ。眠くてしょうがないのだが、安心して眠れない」

 だったら起きとけよ。そっちの方が俺は安心して眠れる。

「悪いが私が起きていたところで、体力のない私は何の役にも立たんぞ」

そんな威張るな。

「わかった。その代わりちゃんと寝ろよ」

 右手を差し出す。

「ありがとう」

 握った手は柔らかく何より温かかった。

「おやすみ」
「おやすみ」

 きっと俺は今日この日程深い眠りにつく日は死ぬときだろうと考えて眠りに堕ちていった。

次回で一章がラストになる予定です。
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