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チート戦線、異常あり。 作者:いちてる

7章 前編 サマーバケーション

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羽衣会 6

前回後2話でこの羽衣会編は終わるなんてほざきましたが、当然嘘です
作者が嘘つきですので登場人物も当然嘘つきです
 その後数台残しパトカーは発車する。

 最後尾で進んでいたこの車は信号に引っかかり、他の車とはぐれた。

 すると直進するはずのパトカーが急に右折した。

「宝瀬のお姫様からの指示です」

 運転手は俺に質問される前に答えてくれた。

「俺だけ別行動? ばれない?」
「その質問をされた時は『強力な能力者だから別に分けた』と答える様に仰せつかってます」
「ぶっちゃけ幾つくらい指示を出されているのか?」
「その質問をされた時は『10ほど』と答える様にと」

 未来予知しなくても推理だけである程度のモノを見れるという真百合。

 卑怯、敵でなくてよかった。

「俺の殺人権は別に問題ないんだよな」
「はい。あなたは人を殺しましたが罪には問われません。ですがこの後政府から何らかの取引を持ちかけられることがあるかもしれないとのことです」
「何らかのって?」
「例えば、テロリストの暗殺とかですね」
「テロリストって?」
「ニュースは御覧になりませんか?」
「ああ、あいつらのことね」

 南米にあるテロ組織の活動が活発になっていると聞く。

「その幹部の暗殺とかを頼まれることはあるかもとのことです」
「別に幹部じゃなくても頭領も構成員も全員纏めて殺してもいいんだけどな」

 テロリストを殺した程度で罰は当たらないはずだ。

「正直な所あなたをどうするか政府でも決めかねているんですよ」
「どういうこと?」
「あなたは超者ランク3位。その強さを疑う者はいません。ただその力を利用することにいささか問題が起きます」
「問題?」
「あなたの周りはどう考えても異常です」

 異常?

「衣川と繋がっている、これはまだいい。大したことじゃない。でも宝瀬と繋がっていることが問題です。正直な所あなたは日本という国の所有物ではなく、宝瀬という家系の所有物という認識が政治家たちの認識です」

 確かに言われてみればその通りだ。

 あの人に頼まれたら何でもするつもりだ。

「ですからこの殺人権はあなたに恩を売ったのではなく宝瀬に借りを作ったという認識なはずです。そんな状態ですのであなたに強く何かをしろとはなかなか言えない」

 確かにそう言われてみればそうかもしれない。

「それとあなたの血族もどう見てもおかしい。まるで強くなるために生まれたような存在です」
「そう?」
「ええ、0位と裏3位の息子。隠されたといえばそれまでですが、もしあなたの生まれた時まで遡れるのなら多くの人間が青田買いにかかるでしょう」

 父さん裏では3位なんだ。

 強いか弱いかよく分からん。

 公に出来ない人間(犯罪者やスパイなど)を含めるのが裏のランキングだ。

「なあ、俺の裏を含めた順位っていくつ?」
「4位です。1位と2位は変わらず、王陵君子と祟目崇ですね」

 王陵君子はテレビでも雑誌でもよく見る。
 血赤色の髪と髭を生やしたいかにも覇王と呼ぶべき見た目だった。

 だが祟目崇については良く知らない。

「2位の人ってどんなの?」
「分かりません。2位は帝国の秘蔵っ子だそうですので」

 そうか。ま、いいや。

「もうじき目的地です、そちらにお姫様が居ますので後はお二人でお楽しみください」

 楽しむって何をすればいいんだ?



 んで、到着。

 目的地は、意外や意外ファミレス。

「ここ大丈夫?」
「はい、現在貸し切りで中にいる客も店員も全てが宝瀬の息がかかった者たちです」

 無駄過ぎる。

 押すタイプの扉だったが、俺が扉を開ける前に自動で扉が開かれた。

「久しぶりね」

 真百合だ。

「入って」

 まるで自分がメイドの様に案内する彼女だったが、一体何のためのお着きの人なんだろうか。無駄金じゃないか。

「メニューは全て買い占めたから好きなのを好きなだけ注文していいわよ」

 さも当然と言わんばかりに言ってのけるし、もう俺はつっこまない。

「早速で悪いが、これからの確認をしたい」

 早苗が気付きそうで内心びくびくだった。
 早く対策を取らないと、ひょっとしたら何かに気付くかもしれない。

「どうしたの。そんなに慌てて。何か手違いでも起きたのかしら?」
「ああ。そうなんだ。早苗の頭が思ってたより良かった」

 気づかないと思っていたのに一番真実に近づいたんだ。

「そうなの。出来れば詳細を私に教えて。どうやって殺したかは勿論、見つけた後の行動を特に念いりにね」

 言われた通りに起こしたこと起きたことを正確に話す。

「……………」
「どうした? 何かまずいことでもあったか?」
「ちょっと一人で考え事をしたいからお手洗いに行ってくるわね。1分ほどで帰ってくるから何か頼んでおいて」

 真百合が何か一人で考えたいなんていうのを珍しいなと感じつつ、実は何かやらかしたんじゃないかと焦る。

 取りあえず海鮮丼を注文したが、不安であまり喉に通りそうにない。

 丁度1分で真百合は帰って来て向かい合い一言。

「甘めにつけて40点ってところね」
「な、なにが?」
「殺した時の証拠が残るのは仕方がない。でもそれを回収するのは私達宝瀬だから平然と握りつぶせる、だから嘉神君は早苗達にばれないようにするためだけに全力を尽くす必要があった。でもあなたはそれをしなかった。中途半端に警察相手をごまかそうとして、少し早苗達に対する嘘を怠った。ほんの少しだけれどその少しが致命傷になりかねない。私はそう思っている」
「い、言うなあ」
「今は下手なお世辞より率直な感想を言った方が嘉神君の為になるでしょう?」

 一から十までその通りだ。
 やっぱり真百合に頼んで正解だった。

「じゃあどこをミスったんだ?」
「それは……あまり言いたくないわ」
「え?」
「だってあまりにも致命的なミスなんですもの、それを言ってしまえば絶対に動揺してしまう。早苗の前で余計なボロを出してしまう」

 確かに指摘され目が泳いだというミスがあった。

「正直な所そのミスというのはフォローしきれない絶対的な状況証拠なの。物的証拠ならいくらでも改善できるのだけれど状況証拠の改竄は難しいわ」

 何かを落としたとかじゃないのか。

「そしてもしも、そのミスを早苗が気付いてしまったのならあなたは言い逃れができなくなる」
「そんなにひどいミスをしたのか」
「ええ。はっきり言って貴方らしくない」

 真百合にしては直接的に非難したな。

「まずは最悪な状況を考えましょう。もしも早苗があなたのミスに気付いてしまったのなら、迷わずに反辿世界リバースワールドを使ってこのファミレスに入る前に戻ってきて。そしてここに入ってきたときに『戻ってきた』と言えばきっと私なら察するわ」

 第一目標は早苗にそれを気づかせないこと。
 万が一気づかれた時は『世界』を巻き戻し、対策を練り直すこと。

「後は……当然だけど私のことは早苗に喋らないようにということね。あなた一人で全部殺したけれど宝瀬と協力して殺したという勘繰りをされるのは面倒よ。だって協力はしているんですもの」

 それは言われなくても分かるし、最初からそのつもりであった。

「何で別行動になったかは、強力な能力者だから何かあった時に対処できるよう大勢で囲む必要があったから……で問題ないでしょう」

 真百合の話の途中だが携帯が振動する。

 マナーモードにしていたので着信が来たとき誰かは分からなかったが、履歴を見て見ると早苗と書いてあった。

「早苗から?」
「ああ」
「電話なら数分待ってから折り返し電話をしましょう。メールなら私にも文面を見せて」

 メールなんだが、人のメールを他人に見せるのはどうだろうかと思う。
 今は非常事態だから仕方ないか。

 メールには『直に話をしたいことがある。連絡をくれ』と男らしく率直かつ端的に用件を伝えていた。

「……」
「十中八九気づいたかもしれないわね。でも残りの一で違うかもしれないわ。その一の可能性がある以上今すぐ巻き戻せなんて言えない。会いに行くべきと進言するわ。ただしもしも九の方だったら私の言ったことを思い出して」

 躊躇わずに巻き戻る。
 約15分前に。
 そのあと真百合に『戻ってきた』という。

 杞憂だと良いが、それはこの後決まる。

 覚悟を決め早苗に電話をする。

「もしもし、俺だ」
「一樹、時間あるか? 会って話したい」
「ああ。場所は?」
「私から呼ぶ」

 そっか。速攻悪鬼正宗デビルメイクライで俺を呼びよせることが出来るのか。
 この能力地味に強いよな。

 幾許と重ねられた世界オーバーロックオーバーラックの天敵。
 近距離技のくせに遠距離系の敵の天敵。

 ただ致命的に攻撃力が足りない。

 鬼人化オーガナイズ鬼神化オーガニゼーションで底上げしてもスズメの涙ほどだ。

 今の俺なら鬼神化オーガニゼーションのパンチなんて瞬き一つで防ぎきれる。
 そう、超悦者スタイリストなら誰だって。

 酷いインフレだ。

 そんなこと今はどうでもいいか。

「どうぞ」
「……速攻悪鬼正宗デビルメイクライ

 本当に一瞬、零瞬といってもいい間に早苗が俺の前に否俺が早苗の前に現れた。

「こんな場所ですまないが、どうしても面と向かって話がしたかったのだ」

 周りを見渡すと壁だった。

 トイレだった。

 洋式便所に座っている俺を早苗は見下していた。

 なんか構図的にエロイ気がするがそんな事言っている余裕はない。

「それで話って何? こんな場所に長く居たくないから本題から話して」

 ダブルの意味で衛生上良くない。

「そうか。どうしてもあと一つ一樹に聞かないといけないことが出来た。確認したい」
「なんだ?」

 覚悟を決める。実際ばれるとしたらどんなんだろう?
 とはいえ早苗程度に気付くようなミスを犯し、しかもそれが致命傷だなんてあり得るかと疑問に思ってしまう。

「あの時、一樹と二人で屋敷の様子を探った時のことだ」
「それが?」
「屋敷に入る時一樹は私に何をした?」
「何をって……周囲を警戒してて特に何かをしたつもりはなかったが?」

 何かをやらかしたのかと考えるがやっぱり何もやってない。

「そうだ。お前は何もしていないのだ。何も」
「うん、だから?」



「私が生身の状態でいるのに一樹は何も言わなかったし何もしなかった」



 っ!!?!?!?っ??!!!!

 やっべえええ。
 ガチなミスだ!!!!!

「大勢の人が数分前に殺され、明らかに危険な状態だった。それをやった人と一樹が戦ってどっちが勝てるかどうかは私には分からん。ひょっとしたら一樹の圧勝で終わるかもしれない。だが、それでも私の身を案ずることをしても良かったのではないか? 多少は鍛えているとはいえこれでも女だ。素の状態で殴られたら吹き飛ぶぞ」
「て、tてて……敵がいないのは知っていたから」

 呂律が回らない。
 どうしよう。

「ならば呼び寄せればよかったじゃないか? 私は提案したぞ?」
「そうだな。うんん、そそうだそうだ。でも敵の強さが分からなかったから―――」
「だったら少しも私の身を案じなかったのは何故かと聞いている」
「そうだ! そうそう! 鬼神化オーガニゼーションはあってもなくてもどうでもいいんだ。うんうん、そうだよそうだ。いいか、世の中には超悦者スタイリストというのがあってだな。それは早苗のギフトを平然と超えられる恐ろしい物なんだ。それがうん、それがあったから無駄にスタミナが減らないように気を配ったんだ。そうだよそうだった」

 完璧だ。問題ない。

 はず。

「その超悦者スタイリストがどういうモノなのかは分からんが、持っていない可能性も十分にあったのであろう? 可能性の話だが無いとは言い切れないはずなのだ」
「こんなこと出来るのは超悦者スタイリストしかいない。違ったとしても1%ほどだ」
「その1%はお前にとって無視できるものだったのか。そうか、ならばいい。お前にとって私の安全など無視できるものだったというのなら私は素直に納得しようではないか」
「ち、ちがう! そんなことない!!」
「言っていることが滅茶苦茶だぞ。いつも以上に支離滅裂だ」

 あ……あわわあ……ああれれれあああ
 ひひああひ……ううぃああ――――あ

「ただ一言言えばいい。考慮するに値しないと。そう言えば私は納得する。今ならそういっても自分がやったといってもそれが本当の事だったら怒らない。だから本当のことを教えてくれ」
「ほ、本当に?」
「ああ。本当だ」
「本当に本当に?」
「本当に、本当だ」

 嘘をつけばいい。
 だがそれは俺にはできない。

 早苗は大切だ。俺の命なんかよりも。

 だからそんなことを言うんだったら本当のことを言おう。



「俺が殺した。だが別に問題ないんだ。殺しても罪には問われない。むしろ当然の権利だ。早苗に――――――――――――」



 パシッン

 頬が叩かれる音が響いた。

「馬鹿者!!」

 目が完全に俺を非難していた。

「お前は人の命を何だと思っている!!」
「怒んないって言ったじゃないか――?? 騙したのか――――?」
「一樹がそれを言うのか!!」
「それとこれとは違う。俺が一体どんな気持ちで白状したと思っているんだ!? 殺したかどうかなんて取るに足らない嘘なんかと一緒にするなよ----」

 俺は自分のことを雑巾だと思っているがゴミよりかは価値がある。

 そのはずなのに早苗はますます怒りに震えていた。

 今度は平手打ちではなくグーパンチで俺をぶん殴った。

 口からぽたぽたと血が流れる。

 歯が折れた。

「痛いだろう! 死ぬのはもっと痛いんだぞ!!」
「それくらい分かってる!! 分かってないのは俺が殺した奴らの方だろうが!!」

 あいつらが何人殺したと思っているんだ。

「マイナスのマイナス感情なんてむしろプラスじゃないか。それすら分からない馬鹿なのかよ早苗は。俺が教えた算数はお前に何一つ伝わらなかったのか!?」
「マイナスな人間なんて存在しない。どんな人間だって生きていくべきなのだ。お前は生きていて何も学ばなかったのか!?」
「早苗のくせになに俺に教えを説こうとしてるんだよ!」
「私なんかでも分かることをなぜ一樹は分からない?!」

 なんで早苗が怒っているんだよ。
 お前が怒るときなんて本当に悪い奴が相手な時だけだろう。

 その怒りを俺に向けるな。

 俺はあいつらと同類じゃない――――

「そんな目を俺に向けるな!!」
「向けてほしくなかったら 別のことをすればよかっただろう!」

 どちらも泣いている。
 俺も早苗も眼に涙を溜め、唾を吐きながら思いの内を吐き出している。

「ずっと前から言いたかったことがある。一樹、お前は――――――」
「やめろ! その続きを言うな!!!!」

 頼むからやめてくれ。

 早苗にだけは言われたくなかった。

 だからこんなに面倒なことをしたのに。

 全部無駄になってしまう。

「間違っている」

主人公の弱点は身内。昔も今も変わっていません。
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