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チート戦線、異常あり。  作者: いちてる
7章 前編 サマーバケーション
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神陵祭 1

 一日を終えるのが早ければ一週間が終わるのも同じように早く、あれよあれよのうちに夏祭り当日になった。


 当然その間も早苗の勉強を見ながら宿題をほぼ全て終わらせ、演舞を仕上げ、超悦者スタイリストになるよう父さんと修行した。


 銃の次は剣を裁く練習を、その次は爆弾を受けても耐えれるように何度も手榴弾をその身に受けた。


 印象に残っているのは剣の上にのってバランスをとる練習で、こんなことして何の練習になるんだと言ったら、『バランスをとるポーズも重要。そうでないと剣山や飛行機の上で戦闘なんて出来んぞ』といわれ、なるほどとも思った。


 休みなんてあったもんじゃない。


 だがとっても充実した日々だと自信を持って言える。


 とまあ、こんな感じで過ぎていったわけだ。


 神陵祭をまともに参加するのは初めてと言ったら、出番までは遊んでおいでと香苗さんに言われた。


 通しは朝のうちにすましたので、言われた通り夏祭りたるものを満喫する。


 しかも香苗さんからお駄賃を5000円ももらったのだ。


 衣川組としての報酬ではなく神陵祭町神陵祭実行委員による前払いなのでセーフ。


「しっかし何しよう」


 何しろ自分夏祭り初体験である。


 しかも夏祭りって男一人で楽しめるものなのか。


 ま、大丈夫だろ。楽しいかどうかなんて人の主観だし、そうだと思えばそうなるに決まってる。


金魚すくいは……ないな。


 一応取れる自信はあるが取ってしまった後処理が出来ない。


 たこ焼き……鉄板だな。買おう。


 ただこれから動かないといけないからあんまり多くは食べれない。


 だから食い物は演舞が終わるまでこれで終わり。


 取りあえず座って食べるために道のはずれに移動する。


 真夏のこの時期、5時半ではまったく日が沈む気配が無い。


 8ケ400円のたこ焼きをほおばる。


「うん、普通に美味い」


 特に感動するわけでもなく、予想の反中で美味い。


「お? イツキじゃん」

「時雨か? どうしてここに?」

「どうしてって。普通に遊びに来ただけだ」

「一人?」

「いいや。ただ集合時間間違えて予定より2時間くらい早く来てしまった。だからよかったら一緒に回らないか」


 そりゃこちらからお願いしたいくらいだが一つ聞いておきたいことがある。


「何で二時間も間違えたんだ?」

「17時と7時を勘違いしてしまっていた」


 なるほど、それはしゃーない。




 それからぶらぶらと目的もなく歩いてとある出店を見つける。


「お、これは…!」

「どうした?」


 一目ぼれした。


「おじさんこれください」

「おうよ、500円な」


 買ったのは仮面ライダーのお面。


 普段なら買わないが折角お駄賃を貰ったのだから、買わないと罰が当たるだろう。


「それ……仮面ライダーか? 確か……ア○トだっけ」

「ク○ガ」

「そうだった。確かおれらが小1か2の時だっけ?」

「そう」


 好きだった。今でも一番好きだけど。


「正直意外だぁ。イツキってそういうの買うのか?」

「祭でお面を被るのは由緒正しいことだぞ」


 わたあめやたこ焼きなんかよりもずっと祭らしい。


「そっちじゃなくて仮面ライダーとかガキっぽいじゃん」

「そりゃ最近のはそうかもな。だがク○ガは違うんだなこれが」


 チッチッと指を振る。


「規制が今よりはるかに弱かったから残酷な表現が多々あったんだ。例えばトラックで袋小路まで追い詰めてバックでひき殺したり、ネットで殺人予告だしてそれを実行したりするのは今じゃ絶対に出来ないだろうな」

「それは深夜ドラマか何かよ?」


土曜深夜32時ドラマだ。


「なかでもラストバトルは圧巻だった。ぶっちゃけガキの頃何が起きたか分かんなかったがある程度大人になって見直すと唸るしか無かったな。しかも最近のライダーシリーズ最強という設定が男心をくすぐるよな」

「じゃあ最強はディ○イドか?」

「それはない」


 断言できる。


 ディ○イドが最強? 見てないけどあり得ない。


「でもよ、確か過去のライダーに変身出来てその最終フォームを重ね合わせるんだろ? 勝てるわけ無いじゃん。しかも公式で最強って認めているんだろ」


 俺は落胆のため息をつく。


「例えばの話だ。孫○空とル○ィとト○コ、誰が一番強いか客観的に考えれば一択だろ?」

「そりゃ、○空だろ」

「そうだな。俺もそう思う。でもさ、その週刊誌が主導してそいつらが集合するアニメを作るじゃん。それでそのアニメの中でみんなで力を合わせて戦うのを見て、孫○空とト○コのスペックが同じなんていう奴いる?」

「あ……ねえな」

「無い。あり得ない。それと同じ、いわばディ○イドに出てくるク○ガは公式が作った同人誌だ。そのク○ガを倒した所で本物には勝てない」


 実際なら殴り合いしただけで装甲が吹き飛ぶ火力差がある。


「更に言うなら俺が今ここでブ○リーみたいなの召喚するじゃん」

「出来んのか?」

「知らん。あくまで例えね、それで俺が作ったのだからボコボコにするじゃん。それで俺>ブ○リーの式になると思う?」

「ねえな」


 そんなことしたら人して恥ずかしいよな。


 せめて同じ作者なら納得できるもんもあるのに……

別の人が作ったんだから形と名前が似た別の何かだ。


「あとディ○イドのコスチューム最初も最終も含めトップクラスにダサいし。あれを見て子供たちが喜ぶと思ってんの?」


 言ってないがライアルも同じ理屈で無い。


 まあ、ディ○イドと違ってデザインは及第点つけてもいいけど。


「じゃあ最強はなんだ?」

「ブラックRX」


 即答であり、仮面ライダーを知っている人の5割くらいの人が納得するだろう。


 あの能力ぶっちゃけ『物語』に近いものがあるし。


「仮面ライダーは兎も角、最強の仮面キャラなら知ってるぜ」

「ん? 誰だ?」

「俺だよ」


 振り向くとパンツを被った変態がいた。


「げっ、神薙」

「よく分かったな」


 顔を見てないがこんなことするのはこいつしかいない。


「被ってるパンティが小さかったからか? やっぱ椿の勝手に借りた奴じゃ面積が足りなかったか。おい薊、お前が今はいてるパンツと交換しろ」

「いーやーじゃ。絶対にいやじゃ」

「…………よかったら」

「さんきゅー。ペロッこれはTバック。早速装着」

「……まだ顔が分かる」

「もう一枚重ね着するから寄越せ」

「それを再び被ればいいじゃろ」

「ではこのわざわざ今日薊の為に俺が選んだシースルー下着を装着。ん~グッドスメル。あ、あとこれから家に帰るまでノーパンな」


 人類の恥。

 国民的性犯罪者。

 性器末覇者裸王。


 まだまだいろいろと侮辱する言葉が思いつく。


 だが今はここから逃げることにする。


「シュウ、この隙に逃げるぞ」

「無駄なんじゃねえの?」


 強制エンカウント、出会ったら即死、逃げても逃げれない。


 ダントラより酷い。


「ん? メール?」


 このタイミングで携帯が鳴る。


 着信の相手は真百合だ。


『今あなたの10メートル後ろにいます』


 怖えよ。


 ただこの中に入りたくない気持ちはよく分かる。


 でも巻き込んじゃう。


 みんなで傷をなめ合おう。


「おーい、こっちこっち」

「…………」


 すたすたと何も言わずにこっちへ歩いていく。


「――――」


 俺の後ろにぴったりくっついた。


「がるるる」


 犬の様に神薙さんを威嚇する。


 俺盾にされているようです。


「ふぇぇ、怖いよぉん」

「どの口がそれを言うか」


 いつの間にかパンツを被っていない普通の姿に戻っていた。


 相変わらず同性から見ても綺麗と言える造形をしている。


 なんで天はこいつに感情なんてものを与えたんだろう。


「ものすごい迷惑な人だけど大事にはならないと思うからそこまで威圧しないでもいいんじゃねえか?」

「こっちにもいろいろあるのよ」


 そういや一度真百合この人に首斬られてたな。


 警戒するのは当然か。


「やめろ~そんな目で俺を見るんじゃな~い」


 体をクネクネしながら悶える神薙さん。

 わりときもい。


「新しいのに目覚めちゃううううう」


 ものすごい楽しんでる。


「今のうちにここから逃げましょう」

「そうだな」


 そそくさとこの場から離れる。


 何とか逃げられた。


 奇跡だ。


 しかし時雨とははぐれてしまった。


「すまん時雨、お前の犠牲は1か月くらい忘れない」


 南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏


「折角だから二人で回りましょう」


 返答をする前に左手を握りしめ一回転入れられる。


 たしかこれは、こ……・・……びとつなぎ……


「小人繋ぎだっけか」


 なんか微妙に違う気がしないでもないがまあいいや。


 しっかし、目の前になんかピンクいハートがちらほら幻覚として見えるのはなんでなんだろうな。


 目がちかちかする。




 それからそれから、




特に何かするわけでもなくぶらりぶらりと真百合と夏祭りを楽しんだ。


「そろそろだな」

「そうね、行きましょうか」


 着替えたりストレッチをしたり最低限のマナーとして早めに到着しないといけないと思いまだ開始一時間前だがその場に向かう。


「早苗巫女服着ているんだって」

「……そう」


 すっげえ興味なさそう。


「俺巫女服好きなんだよな」

「そうなの!?」


 すっげえ興味ありそう。


 この違いはなんだ。


「その……私も今度着てみようかしら」


 気軽に着る物じゃないのだが、そこは宝瀬。なんとかなるのだろう。


「まじ? 写メでいいから送ってよ」


 そうこうしていると目的地に到着。


 そこには巫女服を着た早苗がいろいろ何かしていた。


 何しているのかは頭の中に入ってこなかった。


「おい早苗。どういうことだ」

「一樹、着替えはあっちだが?」

「違う。俺はどういうことかと聞いている」

「ん?」




「なんで巫女のくせに腋見せてないんだよ」




 早苗の着ている巫女服は白衣が肩から手首まで伸びている。


「巫女は腋を見せるのが基本だろ?」

「バカか? 一樹は何を言っている?」


 早苗に馬鹿と言われた屈辱よりも現状に対しての怒りが勝っている。


「ここ『なろう』だよ? 東方パロっても伏字使わなくていいんだよ?」

「お前はいったい何を言っている」

「だーかーら。あのね、巫女服説明するとき博麗のもしくは別の早苗の巫女服って思いっきり手間省きながら分かりやすく例えられるだろ? そこで早苗が腋見せのサービスシーンをはさむわけだ。普段ツンツンしている早苗が恥ずかしがるギャップ萌えを楽しむ予定だったんだよ。それを何勝手に普通の巫女服着てんの?」

「もう一度たっぷりいうぞ。バカか?」


 つっかえねえ。この一週間腋見るを楽しみにしてたんだぞ。


 このままじゃ終われるか。


「しゃーない。過ぎてしまったことは仕方ない。広い心で許してやる」

「なぜ私が許されなくてはならんのだ」

「だから、着替えろ」

「は?」

「別着替えなくてもいいや。肩の所破け。そして腋を俺に見せろ」


 普段リョナ担当の早苗に御色気を任せるという俺の男気だ。


 感謝しろよな。


「おい。早くしろよ」

「嫌に決まっておるだろ」


 往生際が悪い。


「こうなったら一度全部脱がせてやる。そして俺に腋を見せろ!!」


 こうなったら力技だ。早苗と言えど男に勝てるわけ無い。


 顔を髪の毛のように真っ赤にしてやる。


「は、離せ!」

「そんなこといっても体は正直ではないか。がっはっは」


 このままあられも無い姿にしてやる。


「いい加減にしろ!」


 体が急に引き離され顔面に早苗の裏拳が直撃する。


「は、鼻が……」

「自業自得だ。馬鹿者」

「何をした?」

「シンボル使った」


 確か……絶対に命中するシンボル


速攻悪鬼正宗デビルメイクライ


 裏拳を俺に命中させたわけだな。


 攻撃面にしか役に立たないかと思いきやこういう使い方もあるのか。


「大丈夫か?」


 体についた土埃をはらいながら早苗に尋ねる。


「一樹の頭よりかはましだと思うが」

「そうじゃなくて、シンボル使っても体とか精神に負担はないのか?」


 いつか時雨にシンボルについて聞いたことがある。


 使い勝手はどうなのかを尋ねたのだ。


 時雨はそれぞれにこう答えた。



 ギフトはものすごい低燃費の神秘。

 シンボルはSANチェックして成功すればノーコスト、失敗すればSAN値が減少する魔術。



 安定性、仕様勝手はギフトの方が上と使用者全員が認めている。


 ただシンボルは愛着がわくらしくギフトよりも使いたくなるとのこと。


 使い過ぎれば発狂してしまうため、常人は使用制限を自分で設けているとのこと。


 だが早苗はそういうのを全く知らないと思う。


「問題ないぞ。むしろ鬼人化オーガナイズと違って全く疲れないのだ」

「そう……ならいいんだが」


 見た感じ本当に大丈夫そうだが……


「なんかそれっぽい事言って私にしたことをごまかそうとしてないか?」


 しまった。まだ早苗を腋巫女にする計画は諦めたわけじゃないが、今は劣勢。引くべきか。


「違うんだ早苗。さっきあの神薙さんに合ってだな。なんか変な事された」


 嘘はついて無いです。


 ぼくはしょうじきもの。


「もしかしたらその所為で変なことをしてしまったかも」

「もしかしたら?」

「いや、きっとそう。間違いなくそう。なあ真百合?」

「――――そうね。そうだったわ」


 流石は真百合。ここで空気を呼んでくれる。


「むぅ。そういうことなら仕方ない。私も殴って済まなかった」


 やったぜ。


 責任転嫁成功。


「いいっていいって。じゃ、俺達は着替えるからまた後でな」

「うむ。私は客席から応援しているぞ」

「任せろ。アッと言わせてやる」


 そうして始まったステージパフォーマンスだが、特に描写する必要はない。


 俺と真百合がペアを組んだんだ。


 失敗なんてあるわけがない。


 当然の様に大反響だった。



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