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チート戦線、異常あり。 作者:いちてる

7章 前編 サマーバケーション

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超悦者 5

 朝は早苗の勉強、昼は真百合と練習をすれば夜になるのにそうは時間がかからなかった。

 今日俺は予定よりも5分速く待ち合わせ場所に到着した。

「お? もう来てたのか」

 待ち合わせ時刻よりも前にくるのは、もしものことがあった時の為に余裕を持って行動できるためだと思う。

 だが俺達は瞬間移動(正確には俺のは次元移動)を出来るためぴったりでも問題ない。

 ではなぜいつもより早く来たかというと、それはもう答えは一つだ。

「さっさと始めよう。俺は今から何をすればいいんだ?」

 しかしそれでも俺はいち早く超悦者スタイリストを身につけたかった。

「どうした? いつになくやる気じゃないか」
「まあ、父さんには話してもいいかな。今日真百合と一緒にサーカスで何ができるかその上で何するかを主に話したんだ」
「それで?」
「一応俺も昨日のうちに出来る準備したんだよ? 何時間もジャグリングを特訓したんだ。これでも頑張ったんだ」
「オレからすれば数時間で形にする一樹も大概なんだが、それで?」

 もう何となく落ちは読めているだろうが、どうしても話したかった。

「あいつ俺よりうまかった」
「そう」
「そうってもう少しまともに人の話を聞けないのか?」
「いや……何というんだろうか……年収10億の人間が100億の人間を妬んでるのを見た気分」

 俺の年収なんて3,000×12しかないのに、その例えはあんまりだ。

「それで、どんな風に上手かったんだ」
「ネットで見ただけ」
「は?」
「昨日ネットで動画を流し見しただけで練習らしい練習はしてないらしい」

 ぶっつけ本番で俺と同じようにできていた。

 人が折角努力しているのにあんまりだ。

「すげえ悔しかったから、なんとかぎゃふんって言わせたくなった」
「言えって言えば嬉々として言いそう」
「ん? なんだって?」
「何も。それで、超悦者スタイリストでずるしてあっと言わせたいわけだ」

 そゆこと。

「恥ずかしくないのか?」
「別に? 知らない方が悪い世界なんだろ? だったら真百合が悪いんだよ。それに目の前に生き恥をかきまくってる人がいるから、もしかしたらマヒしてるのかも」
「ろ、ロリコンは恥じゃないし……」
「別ロリコンのことだと言ってないんだが? あれあれれ?ロリコンが恥だって自覚してる?」
「息子ながらうぜえ」

 ロリコンにうざがられても気にする理由はどこになるのか。

「ま、という訳だ。さっさと始めたいんだが」
「そうか。では始めるとするか。一樹、まずはこれだ」

 手渡したのは二丁の拳銃。

「なるほど。まずはこれを使いこなすのか」
「そう。一番よくあるのは銃だ。使うのも防ぐのもどちらもよくあるだろ?」

 確かに。

 銃に関しては俺も一度やったことがある。

「レッスン3は『銃を使いこなせ』だ」

 所は変わって屋上から郊外へ。
 アメリカのガンマンがいそうな雰囲気の世界に変化した。

「で、何するの?」
「好きにやっていいぞ。強いて言うならオレを撃て」
「おっしゃ! 死ね!」

 先手必勝、ひょっとしたらまだ超悦者スタイリストになっていないかもしれないので致命傷になるかもしれない。

「正直よめてた」

 放った銃弾は父さんが撃った銃によってあさっての方向に飛んで行った。

「ちっ」

 防がれたことよりも思考を読まれたことに憤りを感じる。

「聞き忘れたけど今回ギフトは?」
「防御か回復だけにしてくれ」

 おっけー。

「了解」

 10分後に忘れよう。
 アイハブ積極性記憶喪失。



 1時間後。

「飽きた。つまらん」
「はえーよ」

 最近の若者よろしく飽きがきてしまった。

「仕方ないじゃん。撃っても父さん当たってくれないんだもん。つまんない」

 やってもやっても成果を得られないならやる気なんてそがれてしまう。

 教え方が悪いね。

 教える人が下手だと、覚える側も大変。

「的確に急所を狙ってきたら逃げるしかないだろ」
「このヘタレ野郎。男として向かってくるものを受け止める度胸も無いのか?」
「ええー。分かったよ、受け止めりゃ……ぐへあええ」

 了解を得られたことで早速発砲。

 少しフライング気味な気がしたが審判はいないので問題ないと判断。

「あっぶねえ。一樹! 男が男の急所を狙うなんて恥ずかしくないのか?」
「はあ? むしろ父さんにとって一番必要の無い部位を狙ってやったんだぞ。感謝しろよ」

 そして死ね。

「反抗期が長すぎる……」
「受け入れろ。それが親の務めだ」
「子が親にそれを言うなよ」

 とまあこんな感じで今日の修練が終了。

 特訓成果。

 目を瞑っても狙ったところに撃てるようになった。

 これで頭の上に載ったリンゴを狙撃する芸が出来るようになったわけだ。

「早速実験したいな。父さんパス」
「リンゴか……頼むから本当に的を狙って撃てよ」
「いくらなんでもこの流れだと、父さんしっかり防御してるだろ。拳銃なんて言う低火力で狙うつもりなんてまったくないよ」

 この二時間俺は、拳銃なんてたいしたことないことを学んだ。

「そうか。だったら仕方ない。ほれ」

 言われた通りに頭の上にリンゴを乗っける父さんを少し間抜けだと思うのは俺だけじゃないはず。

 二丁の銃を構え交互に発砲。

 構えなんか知らないし、反動なんて気にしない。

 プロが視れば馬鹿にされるフォームで……狙い通りリンゴを狙撃した。

「ふ、またつまらぬものを撃ってしまった」
「あれ? まさか真面目にやるとは思わなかったぞ?」

 どんなけ信用無いの俺。

「かなしーなー。親に疑われるなんてチョー悲しい」
「そ、そうか。すまん」
「しゃーない。許す精神も時には必要」
「絶対に一樹から言わないと思う言葉を生きているうちに聞けるとは……」

 しみじみと涙を流す父さんをしり目に

 さてと、すこし油断してもらったところで……大きく振りかぶる。

 思ったんだ。

 わざわざ銃で撃つという動作をしなくてもいいんじゃないかと。

 弾薬の力でなんて頼らず、投げた方が火力が出るんじゃないかって。

 むしろ発砲するとき脇をしめず投げた方が火力が出るんじゃないかって。

 銃弾は音速前後、それに投擲の速度をプラスする。

 これが超悦者スタイリストだ。

「死ねえええ!!!!」
「やっぱりかああ!!!」

 父さんの下腹部に見事命中。

「やったか!?」
「やられてなるもんかよ」

 そりゃそうか。当然と言える。
 こんなんでやられるなら苗字を今すぐ変更してほしい。

 だが父さんの口から血がたらーと零れ落ちる。

 つまりダメージは受けた。

 油断していたとはいえ超悦者スタイリストは解いていなかったはず。

 それなのに血が流れたということはダメージを受けたということ。

 もっと言うなら俺自身攻撃型の超悦者スタイリストを使えたということ。

「しゃあ!」

 思わずガッツポーズをしてしまう。

「見事っちゃ見事なんだけど、もっとましなやり方ないわけ」
「無い。俺はあんたの屍を超えていく。それに他所の修行とかでもよくあるだろ? この技を教えたら師匠が死ぬとか。修行の途中に支障が死ぬとか。むしろキリがいいんじゃないか? 息子のために死ねる親なんて今時レアだぞ」
「別に父さんとしては一樹の為に死んでも構わないんだが、少なくともそれは今じゃないはず」

 どうだろうね。ひょっとしたらすぐ先かもしれないし。

「冷静に考えて主人公の父親なんて三分の二くらいの確率で死にそうだよな」

 大体親越え辺りで死ぬのが様式美だと把握している。

「やめえや、それはちょっと洒落にならん」

 その場合誰が殺すんだろ。

「誰に殺されると思う?」
「なんで自分の息子に殺されそうな相手をしかも嬉々として聞かれるんだ」

 がっくり肩を落とす父さん。

「そうだな……相手はわかんないが一樹をかばって死ぬとかか?」

 オーソドックスなテンプレの解答。

「ないない」

 右手首を横に二回振る。

「どこかの氷雪系最強さんみたいに幻術にかかって俺が父さんの胸を突き刺すのが一番建設的じゃない?」
「建設的……って。意味は――――分かっていってるんだろうな」

 そりゃそうよ。もちのろんで当たり前だのクラッカーってやつ。

「大体父さんみたいなやつにまともな死に方が与えられると思ってる?」
「辛辣……」

 だが事実である。

「賭けてもいいが、父さんは絶対にまともな死に方をしない。勿論死ぬってのは完全な意味での死だからな。一片死んで復活とかそういうのは抜きな」
「じゃあ何か賭けないか?」

 そうだな…………

「賭けてもいいものは思いつかないが、父さんの持っているモノで欲しいものがある」
「なんだ?」
「ギフト。今ストック幾つだっけ?」
「口盗め(リップリード)を除いた49個だ」
「それ全部ほしい」
「ぜ、全部?」

 そう全部。

「口盗め(リップリード)も含め全部。文句ある?」
「正直、一樹に使ってほしくないギフトが幾つかあるから……」

 それは父さんの主観だろ。使うかどうかは俺が後で決めればいい。

「実際賭けなんかしなくとも死ねば勝手に奪う予定でいるから、こっちから賭けるものは無いんだけどな」
「ひっでえ」

 生きた父さんとキスするより死んだ父さんとする方がまだましだ。

「だから賭けなんて成立させる気は毛頭ないけど、逆に何を賭けてほしかったんだ?」
「その…………もう少し人に優しくだな」
「え? 人には優しいだろ」

 人と思ってない奴には厳しいかもしれないが、人には優しい。

「その……もう少しマイルドに? 穏やかな心を持つ子が育ってほしいって」
「…………。新しく子供でも作るのか」

 応援してる。と思ったが父さんと母さんの情事を想像し考えを改める。

「賭けはしないけど死にそうになったら言ってね。貰うから」

 死体残してもらわないと貰うに貰えない。

「んじゃ、また明日。大丈夫だよな?」
「ああ。大丈夫」
「ばいびー」

 今日もまた一段と強くなった。

 もう拳銃は怖くない。

 これはかなり大きい。

 色々と。

 ね。

恐ろしいことにまだこの章の半分も終わっていません。
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