表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
チート戦線、異常あり。  作者: いちてる
6章 黒白の悪魔
110/351

黒白の悪魔と臙脂の閻魔と 3

 まずは一度死んでやり直す。


 ただ溺死は趣味じゃないので、脳みそと心臓に刀を突き立て自害する。


「呼ばれてとび出てじゃじゃじゃじゃーん」


 何度も聞いた声。


 先ほどまでは聞くのが億劫だったが、今回は違う。


 今回は、勝つための手掛かりがある。


 先に宣言しておくが、これで絶対に勝てるというわけではない。


 答えを言うと、魔夜ちゃんとキスするための算段がたっただけだ。


 肩から手を生やし、自分の口を覆っている魔夜ちゃん。


 触れることはできないし、近づくことも許されない相手に一矢報いる。


「鬼ごっこしよう。魔夜ちゃんが鬼な」

「うん! 魔夜鬼ごっこ好き。タッチされたらお兄ちゃんの負けね」


 そういって、手を生やそうとする。


 事前に予測していたため、ジャンプで回避。


 その後、空気を固め足場を作る。


「浮くのはずるい!」


 ここで何もしないでいると、追撃を喰らい、また死んでしまう。


 だから一度降りる。


 三次元的な動きをするのは、手から逃れるときだけだ。


「こっちだ」


 とある場所へ誘導。


 その場所は俺が前回死んだ海岸付近だ。


 俺の背が海、魔夜ちゃんの背が樹海になるように調整する。


 魔夜ちゃんが予定通りの場所まで来たところで


雷電の球ライジングボール!!」


 時雨のギフト。


 敵を倒すだけならもっと他にマシな能力がある。


 二次色の筆レインボードリームによる次元変換。

 運命による行動強制。


 などだ。


 耐性を持っていなければギフト発動からの効果がほぼ保証できる。


 それに比べ、雷電の球ライジングボールは、


1、電気の球を創る

2、それを投げる。

3、ぶつかる。

4、ダメージを受ける。


の行程がかかり、確実性が無い。


 このギフトのメリットといえば、使ったときの体力消費が少ない、それくらいだと思っていた。


 どうせ死ぬんだから体力の心配もしなくていい。


 だから俺はこのギフトをループ期間中一度も使わなかった。



 だが、もう一つこのギフトにはメリットがあった。



 今回はそれを利用する。


 全力で放ったその球は、魔夜ちゃんの身長と同じくらいの大きさだ。


 それでもその一発は魔夜ちゃんには当たらない。


獄落常奴アンダーランド


 鬼が身代わりとしてこの技を受ける。


 受けて死んでも蘇るのに、そうしないのは最近自分のギフトを知ったことへの裏付けだろう。


 ビリビリバリッと轟音を立てるが、鬼は全く堪えていない。


 それでいい。


 目的はすでに果たせた。


 後は時間を稼ぐ。


 勝利の女神様がやってくるのを信じて。


「ん? お兄ちゃん何か悪い顔してる」

「失礼なこと言うな。悪い顔なんて世界三大侮辱の一つだぞ」


 残り二つは、キチガイとロリコン。


 父は死ね。


「まあいいや。そろそろ鬼さん交代しようよ」

「嫌だ。変わってほしかったら…………捕まえてみろ」


 来た!


 途中言葉が出なかったが何とか踏みとどまる。


 この瞬間、俺はミスさえしなければ勝つことを確信。


二次色の人生レインボーライフ贋工賜杯フェイクメイカー


 日本刀を作り、その数を増やす。


「すげー。お兄ちゃん、魔夜にも一本頂戴」

「一本と言わず、全部くれてやる!」


 創った二十の刃を、重力を利用し魔夜ちゃんにむけ、放つ。


獄落常奴アンダーランド


 死ななくても迫りくる無数の刀剣は、彼女が防御の動作を行うに十分な理由になる。


 手を使い、刀を捕まえようとする。


 だが楢木魔夜は脳としては幼い人間。


 処理能力が限られている。いくつか掴むことのできない刀が、魔夜ちゃんを襲う。


 放った二十の刀のうち、掴まれなかった刀が8本。そのうち、魔夜ちゃんに命中した刀は5本。


 残りの3本は素通りしてしまった。


 実際百本命中しても彼女が死ぬことは無い。


 それでもいい。


 目的は果たした。


 全ての布石は打った。


あとは、走る。


 楢木魔夜に向かって突進する。


 最後の目的である彼女とキスをするためだ。


 前に述べた通り、彼女の肩からは手が生えておりキスするより先に手の効果で死んでしまう。


 これはそのガードを外すための布石。


 いい加減ネタばらしをしようか。


 まず雷電の球ライジングボールのメリットだが……光を発し大きな音をたてることだ。


 不意打ちに向いていないが、これはこれで十分強力な効果だ。


 これと全く同じ現象に花火があるだろう。


 花火は風情を楽しむためにあるが、もう一つ役割がある。


 信号花火。


 遠くのものに対しての合図。


 放送が無い田舎では放送の代わりに、花火を鳴らして祭を開催するか否かを伝えることがあったと聞く。


 これも同じ。


 無数の手が襲い掛かってくるが、壁を作り、宙に浮き、大きさを変え回避。


 だが彼女を守る手は決して届くことは無い。


 近づくことしかできない。


 それでいい。


「うぉおおおおおおおお」


 右手を伸ばす。


 攻撃するわけでもなく、防御する為でもない。


 ただあるものを掴むために


「なにや……あり?」


 なにやっているのか? そう魔夜ちゃんは聞きたかったのだろう。


 だがそれを言うことは出来ない。


 首が宙を舞っているから。



 何故首が体から切り離されたのか。


 斬られたからだ。


 俺が放った刀剣によって斬られたからだ。


 だが斬ったのは俺じゃない。


 彼女だ。


 そしてその首は俺の方へ投げられる。


 投げたのは俺でもなく強いては俺の意思ではない。


 彼女の意思だ。


 彼女が楢木魔夜の首を掴み放り投げた。


 楢木魔夜は背後から襲ってくる彼女に気付かず、また彼女は俺が放った日本刀を使い、彼女の首を一刀両断にした。


 なぜ彼女がここにいるか。


 それは楢木魔夜の所為だろう。


 楢木魔夜はもう人間として暮らすことはできない。


 楢木魔夜は地獄そのものだ。


 閻魔になってしまった。


 息をするように死者を増やすのだろう。


 不幸を増やしてしまうのだろう。


 だから天は彼女を地獄に追放した。


 だが閻魔は元いた天に憧れた。


 天を求める閻魔の嘆きは正当なものであるのだろう。


 だが天からしてはたまったものではない。


 閻魔が天にやってくればそこは地獄と化すだろう。


 故に天は、天魔は閻魔を排除する。




 緑黄の天魔。




 その名は――――――



 ―――――――月夜幸



サブタイトル 黒白の悪魔と臙脂の閻魔と 緑黄の天魔

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ