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チート戦線、異常あり。  作者: いちてる
6章 黒白の悪魔
100/351

微かな願いと共に少年たちは日向を目指す

祝!100話!!

「雑草という言葉がある。だが実際は雑草という植物は存在しない。ではなぜそのような言葉があるか、そう呼ばれる存在がいてそう呼ぶ人間がいるからだ。当たり前のような話だがそれをまずは理解してろ。そして俺がこれからいう雑草はお前たち囚人のことだというのを忘れるな。

もちろん雑草には正式な名前がある。ハコベ、ナズナ、えのころ草。だが多くの人間はこれらの名前は知らない。


逆に毒草や毒キノコ、具体的にはトリカブトやカエンダケ。そう言った名前は多くの人間が知っている。


この二種類の明確な違いは言うまでも無く毒があるかどうか、人間に害があるかどうかだけだ。


もう一度言うがお前たちは雑草だ。


何も役に立たない、だが有毒ではない。


喜ぶべきことにそれが囚人と犯罪者の違い。


犯罪者は気をつけないと人間に害を与えてしまうが、雑草はただそこに存在するだけで終わる。


雑草はあくまで雑草でなくてはならない。名を覚えるべき有害な存在になってはいけない。




自分は償うことができるから雑草じゃない、そう思っている輩は少なからずいると思ってる。


そんなお前らに冷静になって考えろ。お前らは自分の罪を償えばそれで終わりだと思っているんじゃないだろうな?


ここにいるほぼ全員は人を殺してここに居るはずだ。


当然死刑や終身刑、懲役十年や二十年はざらにいるのだろう。


だがお前たちは勘違いしている。刑というのはあくまでもやってしまったことに対する罰。


償いなんかじゃない。


人を殺してしまうという忌むべき行為に対する罰。


殺された人間のことに対しての償いじゃない。


その人間が本来稼ぐはずだった社会的資本、育むはずだった幸福な家庭。


全てお前らが壊したんだ。


それらをどうやって修復するつもりだ?


一生かけて償う? どうやって?


自分が稼いだ賃金を全てその遺族にやる?


よろしい、だが問題はそれだけじゃない。


自分の人脈を使って有能な人と合コンでも開く?


すばらしい。それが出来ればやっと半人前だ。


まだ半人前だぞ、なにしろこれはあくまでも一人分。これはお前ら自身の生涯行う社会的奉仕を全て償いに費やした、そういう計算だ。


この後お前たちは最低限の一人分の奉仕をしないといけない。


出来るのか? 人を殺すと短絡的な選択を獲ったお前らが? 人を殺す意味を理解しない無知なお前らが?


出来るわけがない。


むしろさらに被害を増やすだろう。


サインすることのできない法務大臣の良心を盾にのうのうと生き、適当に無意味な時間を過ごし全てが生産し新しい人生を始めようとする、そんな人間がここでは大多数だ。


だから俺は殺すんだ。仕方なくお前たちを殺すんだ。


俺がここに来る前そう思っていた。


だがほんのちょっとだけ、1ミリほどだけ改心しようとする動きを持った人間がいたのを俺は見た。


すごく不思議な気持ちになった。


愚かで何も分かっていない、それでも償いをしようとするそんな人間がいてくれた。


だから俺は生まれて初めてお前たちにお願いをする。


どうしようもない何も生まないお前らにただ一度だけ頭を下げる。


これ以上社会つちの養分を吸わないように

他の大切な草木を枯らさないように

ほんの少しでも肥やしになるように


どうかここで腐り果てて死んでくれ」




 分かりきったことだが拍手なんてものはなく、代わりに白けた空気が周囲を包み込む。


 俺自身も誰かが変わってくれるなんてそんな奇跡が本気で怒るなんて思わない。


 だがほんのちょっとでも可能性を増やしたかっただけ。





 そしてついに夜が来る。


 脱獄の夜だ。


 脱獄組は階段があるフロアに既に集合している。


 そこには俺が把握していない多くの囚人たちがいた。


 その数はぱっと数えただけでも200を超えている。


「あら、まよちゃんじゃない」


 その中にまよちゃんの知り合いがいたらしい。


「げっBBA」


 まよちゃんは小言を漏らした。


「……まあいいわ。用があるのはあなたの方だし」

「…………」


 大人の対応(スルー)をした女は……うん、何時ぞやのバブル期を思い出させる。


 その当時生きてないけどね。つか誰も生きてないけどね。


 だって今は23世紀。限りなく2010年代まで近い文明を取り戻したが完全に同じじゃないんだから。


「レート一位さん。手を組みましょうよ」


 女は手を差し伸べる。


 手を組むのは重要なことだ。


 全ての囚人の鍵穴は対応しているため、お互い2つ見つければ残りは首輪だけになる。


 そうするのが正しい選択肢。


「うっせだまれブス。臭いんだよ。加齢臭。息するな、素で硫化水素の臭いがする。おえ、吐きそう」


 だがそれは俺のやる気に大きく影響する為仕方なく?NG。


「後お前ら俺絶対に手伝わないから。それだけは宣言しておくぞ」


 どんなことがあっても手を貸さない。


 そのことについては既にまよちゃんとも話し合っているのでまよちゃんはなにも文句は言わなかった。



 看守から最後のあいさつ。


 参加するのは123組。登録したのは124組だったが1人お腹の調子が悪いから辞退したとのこと。


 その辞退した組が俺と同じ東棟の人間なのは偶然かどうか俺が知る由はない。


 0時まで残り3分。


 0時になればシャッターは開き5分間看守らは何もしない。


 少しでも前に並ぼうとする輩で小競り合いが起きている。


 俺らは一番後ろで高みの見物。


 残り2分。


 しかし囚人は21時就寝の為しばらくこんな時間まで起きていることが無かった。


 参加していない囚人達も食堂でテレビ中継を眺めているらしい。


 とはいえホント眠いな。


「ふあ~」


 緊張感が無い欠伸が周囲を駆け巡ったところで残り1分。


「ねみー」

「お兄ちゃんしっかりするの。お兄ちゃん寝ちゃったらまよ死んじゃうの」

「へいへい」


 ストレッチをする。


「30」


 誰かの声が響く。


 背伸び。


「「「20」」」


 深呼吸。


「「「10」」」

「「「9」」」

「「「8」」」

「「「7」」」

「「「6」」」


 集中。


「「「5」」」

「「「4」」」

「「「3」」」

「「「2」」」

「「「1」」」


 よし。


「「「0」」」


 シャッターが開く。


二次色の筆レインボードリーム


 0になる瞬間、予てからの計画通りギフトを発動。


 ボーダーラインの黒い部分を刃物に見立て具現化。


 囚人達の心臓を切り裂いた。


 流石に全ての囚人に発動することは今の俺にはできない。


 せいぜい200人程度。


 その中で回避したもの、死ななかったものはこっちを見て


「な、何を……」


 何かを言おうとしたのだが


「ひっぃ」


 俺を見た瞬間


「あ、悪魔!!」


 走って逃げた。


「ひ、ふ、み、よ」


 死んだ人間の数を数える。


「まよちゃんはこっちをお願い」

「りょうかいなの」


 俺らがフリーで動ける時間の半分を費やした。


 まよちゃんには最初に話していた。


『俺はどんなことがあっても囚人を外に出す気はないから、始まったらすぐに他の囚人を殺すし全ての囚人の死体を確認するまで外に出ない』


 快く彼女はそれに応じてくれたのだ。


「100丁度なの」

「サンキュ」


 こっちは112。


 参加は123組。つまり参加人数は246人だから残り17組。



正直この話が100話になるように調整してました。

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