転
シュリー・ピクセル。
子供のように小さい体躯にぱっちりお目目の超絶美少女。
金色の髪は端から見てもサラサラで絹のように美しい。
「こんにちは、伯爵。急に来て申し訳ありません」
おまけに声まで可愛かった。
男が守りたくなるような声音。
そりゃあ、ルーブルも惚れるわけだ。
悔しいが少しだけ納得できてしまった。
「ああ。よく来たね、シュリー」
おどおどと私は答える。
普段ルーブルはこの子に対してどのように振る舞っているのだろう。
「どうしたんだい、今日は?」
「はい。今日は伯爵にご報告がございまして」
「報告?」
何だろう?
ルーブルの弱みでも握れる話だろうか?
「私、結婚することになりました」
ニッコリと満面の笑みでシュリーはそう言った。
「は?」
え、何だって?
今何て言った、この美少女は?
「驚かせてさせてしまいましたね。すみません」
えへへ、とシュリーは照れ臭そうにしている。
「結婚? だ、誰と?」
理解が追い付かない。
ルーブルはこの子とも恋仲だったのではなかったのか?
「こちらのファンブルクさんです」
「こんにちは、伯爵。お初にお目にかかります。ファンブルク・ストローマンです」
「は、はじめまして。ストローマンくん」
シュリーの美少女オーラで気がつかなかったが、シュリーの背後に端正な顔をした青年が立っていた。
「音楽堂で出会って交際していたんです。彼の担当はトロンボーンなんですよ。伯爵もコンサートで聞いていたかと」
「……そうなんだ」
何という衝撃的な展開。
まさかシュリーが結婚するだなんて。
「では、また改めて結婚式のご連絡を差し上げますね」
そして、ごきげんよう~と夫婦仲睦まじく手を振りながらシュリー・ピクセルは電撃的訪問を終えて帰っていった。
「……」
シュリーを見送って部屋に戻ると、案の定ルーブルはがっくりと項垂れていた。
「ねえ、どういうこと? 浮気じゃなくて片想いだったわけ?」
「……はい」
がくり、と頭を縦に振るルーブル。
我ながら項垂れる自分の姿はこの上なく切なく感じた。
「これでも僕は紳士だ。君と交際している以上、他の女性に対して恋仲以上のことはしないよ」
なるほど。
それはちょっと嬉しい。
「でも、残念だったわね。あの子、結婚するってさ」
「……そのようだね」
「で、私との婚約はどうする? 破棄する?」
私の言葉にルーブルは涙目で私を見た。
「……ごめんよ、アンナマリー。酷いことを言ってしまった。許してくれ」
はい。そうなりますよね。
ちょろい。ちょろい。
寂しがり屋なルーブルのことだ。
一人になるとわかれば私の元に戻ってくる。
「はいはい。いいわよ。許してあげる」
この機を逃すつもりはない。
私はそっとルーブルに寄り添うとそのまま優しく抱き締めた。
「あなたは愛しているわ、ルーブル」
「僕もだ。君を愛してる。ありがとう、アンナマリー」
こうして、私たちの婚約は一転して無事成立を果たしたのだった。




