03-4
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女子ショートプログラム終了。
私の暫定順位は一位。
ま、当然の結果ってところ。
唯一格上の選手である、元世界チャンピオン、ロシアのエカチェリーナ・アニシナが転倒した時点で私の一位は決定したようなものだった。
ショートプログラムはフリーに比べて技の数が少ない。よって、些細な失敗で差がつく。転倒などしようものなら、少なくとも五つは順位を落とすことになる。
彼女は四位に沈んだ。一つ転倒がありながらも四位、そこは貫禄の演技と評価するべきか、それとも実績が考慮されたというべきか。
いずれにしても彼女が優勝から、そしてグランプリファイナル出場から大きく後退したのは間違いない。
まぁ、どうでもいいと言ったら言いすぎだが、今の私にとってそれは些細なことだった。
一番大事なのは────
「ロマノフさん」
私は関係者が行き交う通路に目的の人物を見つけ、声を掛けた。
アレクサンドル=ロマノフ。
今最も売れている振り付け師。いや、今私にとって大事なのは、そこじゃない。
大事なのは、彼が私の父の親友であること<・・・・・・・・・・・>。
「やぁ、裕樹」
相変わらず、さわやかな笑みが印象的。それでいて只者ではない雰囲気も同時にかもし出している。
「実は、ちょっと相談があるんです。だから、試合が終わったら時間を作っていただけませんか?」
今すぐ用件を話さないのは、私なりのけじめ。
まだ試合は終わっていない。内心、わりかしどうでもいいと思っているが、だからといってそれを表に出して良いわけじゃないということがわかる程度には大人なつもりだ。
私の言葉を聞いた、ロマノフさんは顔を緩めて言う。
「ああ、親友の娘が頼ってきてるんだ。もちろん時間を作ろう」
それからロマノフさんと時間の都合を合わせる。
試合の終わった日の夜、いくらか暇な時間があるので、近くでディナーでも取りながら、ということになった。
「じゃぁ、裕樹、明日のフリー楽しみにしてるよ」
「はい、ありがとうございます」
明日に向けて、緊張はまったくなかった。
むしろ本番は夜。
私の未来がかかってる。
一大イベントだ。




