魔王軍の影と「世界コードの暴走」
天才魔導士レオンハルトの「神雷」をキャンセルコード一発で撃沈させてから数時間。
呆然とする評議会を後にしようとしたその時――地響きのような不気味な振動が王都グランゼリア全体を揺らした。
ズズズズズ……!
「な、なんだ!? 地震か!?」
「いや見ろ! 王立魔導院の地下から、黒い光が噴き出しているぞ!」
傍聴席の貴族魔導士たちが悲鳴を上げて逃げ惑う。
魔導院の地下深くに設置されていた巨大な古代遺物――この国の魔力循環を司る『大魔導基幹』が、黒紫色の凶悪なノイズを放ちながら異常加熱を起こしていた。
『緊急警告:世界コードの局所的暴走を検知。感染型マルウェアおよび無秩序なバグデータの肥大化を確認』
蓮の視界を満たしたのは、真っ赤に明滅する危険アラートの群れだった。
さらに、地表を割って湧き出た漆黒の魔力流の中から、不気味な異形――「魔王軍幹部」と名乗る男が姿を現した。
「ハハハ! 愚かな人間どもめ! 我が魔王軍の悲願たる『世界崩壊プログラム』が、ついに起動したのだ!」
男の身体は半ば実体を失い、壊れたノイズのようにバチバチと歪んでいた。
魔王軍の狙いは、最初から旧態依然とした人間たちの魔法システムに潜み、何百年も蓄積されたバグを限界突破させて「世界コードそのものを暴走・破壊すること」だったのだ。
「う、嘘だ……! 我が魔導院が誇る大魔導基幹が、悪魔のバグに侵されているだと……!?」
評議長のバロア大公爵が腰を抜かし、泡を吹いてへたり込む。
彼らが権威として守ってきた古いシステムは、魔王軍によって格好のセキュリティホールとして利用されていたのだ。
「レン様! 王都のあちこちで魔物が実体化し始めています! このままでは……!」
シルフィが細剣を抜き、疾風の如く飛び出してきた魔物の先兵を切り伏せる。
敗北したレオンハルトも茫然自失のまま膝をついていたが、破滅に向かう王都の惨状を目にして歯を食いしばった。
「くっ……! 私は……私はこんなもののために魔導を修めてきたわけではない……!」
蓮は騒然とする現場の真ん中で、冷徹なまでに冷静な瞳で地下のコアを見据えた。
「古いコードを放置したツケが、最悪の形で回ってきたな。……だが、世界のシステム(OS)を丸ごとクラッシュさせられてたまるか」
蓮は脳内の量子サイバーブレインを最高クロックまでオーバークロックし、全領域の処理能力を解放した。
「シルフィ、レオンハルト! 時間を稼いでくれ。僕がこの世界のウイルス(魔王軍のバグ)を駆逐する!」




