蛇足 山崎タカシの創作発禁物
職場で【金魚鉢】にされたり、仕事中に思いついた小説を投稿したら苦情が入って、創作で逆襲されたりと散々な目に遭った山崎タカシ。
気を取り直すため、書きかけだった【設計図】と併せて短編の続きを執筆した。
挿絵アリの方がPV伸びるだろうと、全3話の【告白を断った相手が、幼馴染だった件】改稿版に物騒メカの図面の挿絵を入れてサイトに投稿しようとした時。
彼の身に悲劇が起きた。
【タイトル:告白を断った相手が、幼馴染だった件 3】
検査室の蛍光灯は相変わらず無駄に白くて、完成したばかりの【弾性駆動型慣性刺突針】が、まるで新品スマホみたいにピカピカと輝いていた。
いや、比べる対象を間違ってる。
これどう見ても凶器だし。
「……ほんとにできちゃったね」
私がぽつりと呟くと、隣で図面を片付けていた篠原蓮は、子供みたいに笑って試作機を手に取った。
「すごいよ、美月。これで正義を貫ける」
「いやいやいや! 正義って何よ!? これのどこに正義マークが刻印されてんのよ!?」
即ツッコミを入れたけど、蓮は全然気にせず真剣な顔になって続けた。
「日本がこんなふうにダメになったのは、生かすべきじゃない人間をずっと見逃してきたからだ。だから俺は、この設計を広めて、世界を正す」
……やばい。完全に「覚醒イベント」入ってる。
「希望を奪った無能政治家! 富を貪る強欲資本家! 声を封じる売国マスコミ! 奴等が民を絶望に沈め、その果てに生まれたのが【無敵の人】だ! 虐げられし勇者よ、奴等も心臓は唯一つ! 一人一殺、その一撃が国を救う! 法により裁かれぬ悪党を消し、なお法の庇護下で裁かれることこそ痛快! 立ち上がれ【無敵の人】! 【弾性駆動型慣性刺突針】が汝の救世の槍! 力こそ全て! 力がすべてを解決する!」
なんでラブコメの王子様ポジションの幼馴染が、急にラスボスムーブ始めてんのよ。しかも演説内容がガチすぎるし。
でもその瞬間、私はハッとした。
力を持ったのは、彼だけじゃない。
この装置を一緒に作った私も、同じ力を持ってしまったんだ。
力こそ全て。力は全てを解決する。力が夢を実現する。
私には、密かに抱いていた【人生の夢】がある。
この力があれば、半ばあきらめていた【人生の夢】を叶えることができる。
そう気づいた途端、心臓が嫌な意味でドキドキし始める。
「……蓮」
「ん?」
私はおそるおそる、いや、むしろわざと芝居がかった動作で【弾性駆動型慣性刺突針】を手に取り、彼の胸に向けた。
「ちょっ……ちょっと待て美月!? なんで俺に向けるんだよ!?」
「うるさい。これは、ちゃんとした選択肢を提示してるだけよ」
「その提示方法、完全にホラーだから!?」
蓮が慌てて手を上げるのを見て、なんだか妙に胸がスッとした。
――やっぱり、幼馴染を利用して犯罪の片棒を担がせる男なんて、脅すぐらいでちょうどいい。
「私、一人娘なの。父はいつも言ってるのよ――工場を継ぐ婿養子が欲しいって」
「……は?」
蓮の目がまん丸になった。
私は、にっこり笑いながら続けた。
「だから、ここで死ぬか……私と一緒になるか。はい、二択」
「いやいやいやいや!? その二択、極端すぎるだろ!」
「どっちも“人生の転機”って意味じゃ似たようなもんでしょ?」
「全然違う! っていうか、ラブコメなら『好きです』とか言うところだろ!? なんで殺意とプロポーズが同居してんだよ!」
「だって、この状況で“好きです”なんて言ったら、普通に殺されそうな女にしか見えないじゃない」
「いまの時点でも十分こわいんだけど!?」
……ふふん。蓮のツッコミが追いつかない。
この幼馴染イケメンを、初めて完全に追い詰めた気がする。
検査室には、機械の冷却ファンの音と、私の心臓のバクバクだけが響いていた。
――さぁ、蓮。
幼馴染に秒で告白を断られたあの日から、まさかこんなシチュエーションになるなんて思ってなかったでしょ?
でも、これが現実。
「選んで。ここで終わるか、私と一緒に生きるか」
私は針の照準を外さず、真っ直ぐに彼を見つめた。
検査室の空気は、もはやラブコメのそれじゃない。
だけど、私は知っている。
――ラブコメって、だいたいギリギリの修羅場から始まるんだ。
♪喪女の人生の夢 ~孫に愛されて死にたい~♪
作詞・作曲:美月@物騒喪女
歌:美月@物騒喪女
窓の外 夕暮れが燃えて
置いていかれる気持ちを知る
でも私は泣き崩れない
恋なんて いらないから
夢を待つだけの少女じゃない
孤独を力に変えていく
悔しさを燃料にして
未来の扉を叩くんだ
孫に愛されて死にたい――
「おばあちゃん」って呼ばれて眠りたい
誰かの愛にすがらなくても
自分の力で勝ち取る明日
弱さも痛みも すべて抱えて
私はここに立ち続ける
制服の背に 影が伸びて
「普通」に届かないと知った
でもそれが私の証だから
恐れず 歩いてゆける
孫に愛されて死にたい――
小さな掌に手を包まれて
「ありがとう」の声に報われたい
恋じゃなく 努力と闘志で
私は未来を掴み取る
涙は燃えて 炎になる
孤独を越えて 夢を抱く
孫に愛されて死にたい――
その祈りが 私の旗になる
作家経験もあり創作趣味に理解のあるタカコは夫の趣味に干渉しない。
しかし、リビングに置き忘れられた【明らかに殺傷力のある何かの機械】の図面は黙認できず【内助の拳】を発動。
夫の山崎タカシを速攻でボッコボコにして投稿を阻止。
【いい歳こいてバ●ッターみたいなマネをするんじゃない】と常識的に説教。
今後は投稿前に【検閲】すると通告。
夫は【表現の自由】を盾に鼻血を噴きながら抗弁したが、妻はバカ●ターのいくつかの事例と末路を理路整然と語り、判決の如何に関わらず世間的に死ぬことと、そういうことすると自立している子供達にも迷惑がかかると説教。夫も渋々同意した。
その後、【検閲】ついでの【添削】により山崎タカシの筆力は飛躍的に上達。
常連の読者もついて、充実した創作趣味を楽しんだとか。
めでたし。めでたし。
※「喪女の人生の夢 ~孫に愛されて死にたい~」をSUNO AIで作曲しました。
歌が聞けます。
コミュ障喪女がぼっちカラオケで鍛えたと思われる歌声をお楽しみください。
↓
https://suno.com/s/eMTRErkohJvCQxEr
※本文と歌の歌詞はChatGPTを利用して作成。プロンプト次第で結構イケる。
カオスでひどい物語をご愛読いただきありがとうございました。





