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転生したらサイボーグになってた俺がゾンビだらけの世界で無双する  作者: ティ・ンポッポ
第一章 転生した世界はゾンビだらけ
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1話 歩けない戦えない、だれも守れない、自分

「だいじょうぶ、逃げきれるよ」


 背中越しに彼女は言った。


「こわがらないで。優衣がずっと守ってきたじゃない」


 車輪が回る。彼女――優衣は俺を乗せた電動の車いすを手押ししている。


 車いすのバッテリーはとうに切れており、優衣が押してくれなければ、とうに”奴ら”のエサになっているはずだろう。


 世界がこうなってからずっと、いや、もっと前からずっと――だれかに助けられて生かされている。


 自分では、何一つできず、誰一人救えずにいる。


 舗装の悪い道路に引っかかって、時々荒っぽい音が響いた。


 避難場所だった体育館が遠ざかっていく。

 

 体育館のあたりには”奴ら”が溢れかえっている。逃げまどう人たちも。


「勇人だけは――」


 学園の裏口から、ふだん通ることのなかった路地に出る。

 

「ハアッ、ハアッ、ハアッ……」


 ……ちがう。そうじゃない。


 呼吸が荒くなる。恐れのあまり、震えている。手が、小刻みに揺れる。


「勇人だけはどんなことがあっても絶対にわたしが守るから……!」


 彼女に守られるんじゃ、駄目だ。


「だから、おびえないで。これからもきっと、だいじょうぶ、だからっ」


 彼女を助けなければ。


「あっ!」


 コンクリートのアスファルトに大きな凹みがあったことに気づいた時にはもう遅かった。


 車椅子ごと地面に倒れこむ。優衣も――。


「ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"」


 ”奴ら”が迫ってくる。一体、また一体。ゆっくりとだが、確実に。


「あ……ああ……」


 声にならない声が漏れる。だが、”奴ら”の歩みは止まらない。


 横に広がり群れをなして、道路はすり抜ける幅もない。


 反対方向の曲がり角からも、続々と”奴ら”が集まっていた。


「まだ……まだ死なない。死なせない……! 決めたんだから」

 

 優衣はアスファルトの地面に何かを探している。


「まさか……マンホールの蓋に逃げるのか!?」


 力を振りしぼり蓋を開けた優衣は、自分から入らず、真っ先に俺を掴んだ。


「!? 待てよ、優衣は」


「言ったでしょ。勇人だけはどんなことがあっても絶対にわたしが守るから」


「だけどそれじゃ優衣は――」


「心配しないで。今までだってだいじょうぶだったんだから。生きてるよ、絶対にね。


 だから、生きて。強く強く生き抜いて――また会おう、ね?」


 視界が上に上がっていく錯覚。落とされた。落下の衝撃と痛みに耐えながら真上を見ると、そこにあった穴が閉じていく。蓋が閉められたのだ。


 足は動かない。身体を引きずりながら、壁に近づいていく。


 だがどう頑張ったとしても上には登れそうもない。なにより、登ったところで自分はなにも力になれない。


「ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"」

「ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"」


 大量の”奴ら”がすぐ真上に集結しているようだ。


「優衣? 優衣!?」


 すぐに、悲鳴が聞こえた。聞き覚えのある、声で。

 

 マンホールの隙間から、ポタポタと滴る、血。


 一滴一滴、落ちていくそれが、次第に地面に広がっていく。


 にじり寄っていき、落ちてくる血を両手で掬うようにした。


「……」


 手に溜まっていく赤い雫。


「……ちくしょう……」


 赤い雫は指の間からこぼれ落ちながらも、手のひらを満たしていく。


「…………力があれば…………」


 気づけば手のひらから溢れた血とともに、まぶたから熱い雫が滴っていた。


「……………………守れた。守れたはずなんだ……………………」


 助けられるばかりで、何もできなかった。その結末が、これだ。

 もしも強ければ。守れたはずだ。”奴ら”から世界も、学校のみんなも、何より、優衣を……!


「こんなことには、ならなかったんだ!」


 マンホールを見上げながら声を上げるしかなかった。


 行き場のない感情を声にすることしか、できなかった。


 嗚咽が漏れ、天井から滴る血がまぶたに落ちる。


 血が涙となって流れたそのときだった。


 ドクン


心臓が強く波打った。


「な、なんだ……苦し……!」


 ドクン ドクン


「息がっ、はっ……できな、……」


 ドクン ドクン ドクンドクンドクンドクンドクンドクン


 視界がゆがむ。半透明な円状の線が何重にも浮かんでいく。


 その視界を見ていると殴りつけられような頭痛に襲われる。


「が、はっ……」


 耐え切れなくてまぶたを閉じたとたん、何かが”終わった”。


 聴覚も視覚も触覚も何もかも感じられなくなったんだ。


 死んだんだな……。





 薄れゆく意識のなか、そう思っていた。

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