第29話 怪しい女性
水喜のいなくなった高浜家は、最初こそ何もなく平和だった。
両親は、邪魔者がいなくなったと喜び、酒を飲む日々。
女中の中には、辛気臭い女がいなくなったと言う声と、仕事を押し付ける相手がいなくなって嘆いている人がいた。
そんな中、水奈は部屋で一人、ただ祈り続けた。
どうか、水喜が幸せにりますように、と。
そんな日々が続き、一か月が経った頃。
両親は水奈がいるにも関わらず、最近祓い屋としての仕事が減ってきていることを嘆いていた。
最近の若い人達は、心霊やあやかしを信じない。
恐怖心もないため、憑りつかれることも少なく、祓い屋に依頼してくる人が少なくなってきてしまった。
時代が人を変える。
これは、仕方がないと、水奈は思っていた。
逆に、これでよかったとも考えている。
このまま、なにもない生活を送りたい。
でも、それでは生計が立てられないのも、水奈はわかっている。
高浜家は、水奈の祓い屋としての力で高い金を稼いでいた。
だが、元々依頼人がいなければ、水奈の力が強くても意味は無い。
それに頭を悩ませていた両親は、心霊やあやかしの本を漁り始めた。
元々家にあるものから、図書館に置かれているものまで。
祓い屋や陰陽師などと言った、歴史本も読み漁った。
すると、両親は何かを思いつき、家を空けることが増えた。
両親が家を空けている時は、水奈も体の力が抜けゆっくりできた。
でも、力がある者の直感なのか。水奈は、嫌な予感がしてならなかった。
両親が一体、外で何をしているのか。
気になるが、余計な事を聞くわけにはいかない。そう思い、水奈は一切、聞いていない。
そんな日が続いていたある日、またしても依頼が増えてきたことに水奈は気づいた。
今迄、一日一人も来ないことはざらだった。
一人、二人が当たり前の人数だ。
それなのに、今では十人は必ず一日で依頼人として訪れるようになった。
水奈の体力も落ちてきて、休息が必要となっていた。
けれど、両親はそんな水奈を酷使させる。
休んでいる暇があるのなら、依頼の一つでも解決し金を巻き上げろ。
ご飯やお風呂の時間はしっかりと与えるが、依頼人が来たらその人に合わせて生活しろ。
夜には依頼人が来る。
明日は十人の依頼がある。
毎日毎日、依頼依頼。
両親とはその話しかしておらず、水奈は休憩する時間すらない。
水奈は、休む時間がなく働き詰めの毎日。
ストレスからか、食事も喉が通らずに、日に日に痩せていった。
両親に休みたいと言っても怒られ、酷い時は服で隠れるところを殴られる。
けど、清潔感を出し、力を使い祓い屋として稼いでくれないといけないため、食事はしっかりと与えていた。
こんな日々、もう嫌だと思った水奈は、両親が夜にどこに行っているのかを確認することにした。
夜、両親が出るのを見計らい、気づかれないように追いかける。
夜だから助かった部分もあり、町までついて行くことが出来た。
どこまで行くのかわからず追いかけていると、両親がお店の影に入ってしまった。
見失わないように追いかけると、見覚えのない綺麗な女性と話している姿を確認。
瞬間、水奈は恐怖に慄き動けなくなる。
一目見ただけ。それだけなのに、雷が撃たれたかのように体が痺れ、力が抜けそうになる。
けれど、駄目だ。
ここで物音を立てたり、動けなくなってしまうと何をされるかわからない。
自分を奮い立たせ、ひとまずここから逃げようと振り返る。
だが、綺麗な女性が水奈に気づいてしまった。
逃げ出そうとした水奈を、黒い瞳が射抜く。
もう駄目だ、そう思い死ぬことを覚悟した。
だが、その女性は何も言わない、やらない。
両親が水奈に気づかないように誘導までしてくれて、水奈は困惑した。
一人残され、やっと女性の呪縛から解放された水奈はその場に崩れ落ちる。
恐怖で体が震え、顔面蒼白。
でも、涙は出ない。ただただ唖然としているだけ。
何があったかわからないまま、何とか落ち着きを取り戻し屋敷へと戻る。
そして、また仕事の日々。
だけど、もう両親があの危険な女性と関わっている以上、水奈は恐怖の記憶が蘇り体が震え動けなくなる。
どうすればいいかわからない所で、羅刹と水喜が現れた。
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